もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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成人BLS の流れ その1

成人 のBLS の流れ Adult BLS Sequence
2005年版 CPR ガイドラインに沿って、成人BLSの説明を行います.
(Circulation 2005 ガイドライン Part 4 Adult BLSの抄訳です)

 
成人BLS の流れ その1_a0055913_16314696.jpg


1)反応を確認する.(Box 1)
周囲の安全を確認(外傷、事故の場合).反応を確認する.
肩をたたき(Tap)、大丈夫ですかと声をかける.反応を確認し
救急コールする.その後、さらに状態を詳しく調べる.

2)救命救急要請(EMS コール)(Box2)
蘇生者が独りの場合、反応のない人を発見した時(動かない、刺激で無反応)
すぐに救急要請を行う.利用できるならAEDを用意する.
すぐに患者のもとに戻り、CPR を開始する.必要があれば
除細動を行う.2人以上の蘇生者がいる場合には、
1人がCPR を開始し、もう1人は救急隊に連絡し、AEDを探す.
病院内などでの心肺停止の場合は、院内の救命システムに連絡.
ヘルスケア従事者(老健施設、介護など)は、心肺停止の最もよく起こり得る
原因について蘇生処置を行えるでしょう.
1人で成人、小児の突然の心肺停止を発見した時には
ほとんどの原因が心臓由来なので、救急要請を行い、AEDを探し
患者の元に戻りCPRを行い、AEDを使用します.
ヘルスケア従事者が1人で、窒息、溺水(お風呂でおぼれる)などの患者に
遭遇した時は、まず5サイクル(2分間)のCPRを行ってから
救急要請を行う.
救急隊に連絡した時には、場所、何が起きたか、患者の状態と人数
どのような処置(助け)が必要かを係員に伝える必要があります.

3)気道確保と呼吸の確認(Box 3)
CPR を開始するために、患者を仰向けにして高い床に横たえます.
反応がなく、うつ伏せになっている患者では、体を回転させて
仰向けにします.入院患者で種々の気道確保がされている場合
(気管内挿管、ラリンゲアルマスク[LMA]、コンビチューブ[ラリンゲアルマスクと
同様のデバイス]、もしくは脊髄手術後のように動かせない場合、
うつ伏せの状態でCPRを開始する.(Class IIb)

#一般の人の気道確保
 一般の人が蘇生を行う場合、
頭部後屈、下顎挙上(head tilt-chin lift maneuver)を
外傷、非外傷患者に行うように指導する.
下顎前方引き出し法は、一般、素人の人には
技術的に困難なので勧められない.

#ヘルスケア従事者の気道確保
 ヘルスケア従事者は、頭部、頚部損傷の所見がなければ
頭部後屈、下顎挙上により気道確保を行う.(Class IIa)
もともと頭部後屈、下顎挙上法は
成人の意識のない麻痺患者で考えられた気道確保であり、
心肺停止での有効性はいままで確認されていなかった.
最近の臨床的、放射線学的研究で
この気道確保の有効性が確認されています.
鈍的外傷の約2%の患者が脊髄損傷を併発していると考えられ、
頭部、顔面外傷がある場合やグラスゴーコーマスケール
(GCS)が8点以下の昏睡であれば、そのリスクは3倍となります.
もし脊髄損傷が疑われる場合は、頭部を動かすことなく
下顎前方引き出し(jaw thrust)のみで気道確保を行います.(Class IIb)
CPRにおいて十分な気道確保が優先されるべきで(Class I)、
もし下顎前方引き出しにて、気道確保が不十分であれば、
頭部後屈、下顎挙上にて気道確保を行う.
もし脊髄損傷が疑われる場合にっは、脊髄固定器具を用いるより
用手的に脊髄を固定する方が有用である(Class IIb).
用手的な脊髄固定の方が安全であり
脊髄固定器具(ネックカラー)などは
CPR中の気道確保に悪影響を与える(邪魔になる)
さらには頭部外傷患者においては、頭蓋内圧の上昇の原因ともなる.
脊髄固定器具は、患者の搬送の際には、必要、有用と思われる.

#呼吸のチェック
しっかりと気道確保を行ったら、胸郭の動きを見て、呼吸音を聞き、
呼吸のチェックを行います.あなたが一般の蘇生者であり
正常な呼吸が確認出来ない場合、
ヘルスケア従事者で十分な呼吸が確認できない場合
まず2回の人工呼吸を行います.もし人工呼吸を行うのが嫌だったり
人工呼吸が困難であれば、心臓マッサージを開始します.(Class IIa)
医療従事者であっても、
意識のない患者で十分な気道確保がされていない状態で
あえぎ呼吸をしているような時に、
呼吸のチェックは困難です.
不十分で間欠的なあえぎ呼吸は、
突然の心臓停止の最初の数分間には見られることがあります.
心臓が停止していても、あえぎ呼吸のために、
十分な呼吸と勘違いされることもあります.
このような不十分なあえぎ呼吸も呼吸をしていないと判断して(Class I)、
人工換気を始めないといけません.
CPRトレーニングにこのような意識のない患者の
あえぎ呼吸を認識して、きちんとCPRを行えるようにすることが重要です.

4)救命のための呼吸を行う(Box 4、Box 5A)
まず2回の人工呼吸を行う.
一回の人工呼吸は1秒以上かけて、胸郭の上昇を確認しながら
十分な空気を肺に送り込む.
マウストゥマウス、バックマスク換気、高度な気道確保下の
換気、酸素のあるなしに関わらず、CPR中の人工呼吸は、1秒以上かけて
胸郭が上がるまで行うがよい.(Class IIa)
CPR中の人工呼吸の目的は、十分な酸素を供給することです.
適切な換気量、呼吸回数、酸素濃度
については、データがありません.一般的には、以下のように推奨されています.
 1.心室細動による心臓突然停止(SCA)の最初の数分間は、
人工呼吸はあまり重要でなく心臓マッサージの方が重要です.
なぜなら心肺停止直後の数分間は、血液中の酸素濃度は
十分に保たれていると考えられるからです.CRP中の血流は適切で
十分な胸部圧迫にて得られます.蘇生者は、中断せずに、
十分で適切な 胸部圧迫、心臓マッサージを行う必要があります.

 2.心室細動による心肺停止で発症から時間が経過した症例では、
血中の酸素濃度も
低下していると考えられ、十分な換気と、心臓マッサージが重要になります.
小児や、溺水患者で心肺停止となった時に低酸素状態となっている
窒息性の心肺停止では、特に、換気と胸部圧迫が重要です.

 3.CPR 施行中は、肺への血流は低下しているため、
十分な換気ー血流比を得る為には(十分な肺胞での酸素化)、
通常よりも少なめの一回換気量、少なめの呼吸回数で
換気をする必要があります.大きな一回換気量や、頻回の呼吸回数による
過換気は避ける必要があります.
過換気は必要ないばかりでなく危険ですらあります.
過換気により胸腔内圧が上昇し、そのために心臓への静脈還流が低下、
右房、右室への血液流入が低下し、心臓拍出量の低下が起こり、
肺への血流がさらに低下し、引いては、生存率の低下に繋がります.

 4.大きな換気や、力任せの換気はさけるべきである.不必要に
大量で力任せの換気は、胃内への空気貯留につながり、
さらなる合併症を引き起こすおそれがあります.

(続きは、また次回に)
by yangt3 | 2006-01-24 16:35 | 2005年CPRガイドライン