もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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心肺停止で来院した左主幹部病変の1例

以前経験した心肺停止の患者さんについて
お話します.

患者さんは60代の男性の方でした.
高血圧などで外来通院されていました.
自宅で胸痛を訴え、その後意識消失して倒れ
心肺停止状態で救急搬送されました.
来院時に心室細動を認めました.
救急外来でCRP施行.
病歴より、急性心筋梗塞が疑われ、救命の可能性ありと
判断し、救急外来でPCPS(経皮的人工心肺)装着しました.
PCPS 装着後、除細動を行ったところ
自己心拍出現しました.
すぐに緊急CAG行いました.
緊急冠動脈造影にて左主幹部の75%狭窄、
左前下行枝起始部 90%狭窄、左前下行枝#7で
100%完全閉塞を認めました.

心肺停止で来院した左主幹部病変の1例_a0055913_8534078.jpg


右冠動脈、左回旋枝にも病変を認め
左主幹部病変を含む重症3枝病変と診断しました.
PCPS に加えて、IABPも施行し
左主幹部病変に対して、救命のためにカテーテル治療を行いました.
左前下行枝は、通常のワイヤーで通過不可能で
Miracleワイヤーでやっと通過.

心肺停止で来院した左主幹部病変の1例_a0055913_8561193.jpg


その後は、バルーンで十分に前拡張を行い
左前下行枝末梢病変から順次
ステントを植え込み行っています.

心肺停止で来院した左主幹部病変の1例_a0055913_8542429.jpg
心肺停止で来院した左主幹部病変の1例_a0055913_8543489.jpg


最期に左主幹部入口部にステントを植え込み行いました.
左主幹部起始部の病変のためステントの近位ストラットは
少し大動脈内に出す形で植え込みを行いました.

心肺停止で来院した左主幹部病変の1例_a0055913_855623.jpg


この症例のころには薬剤溶出ステントが使用出来なかった時代ですので
通常のステント(BMS)を使用して治療を行いました.
最終の確認造影です.

心肺停止で来院した左主幹部病変の1例_a0055913_855427.jpg


治療後、PCPS、IABPのサポートを続け
集中治療を続けましたが、
心不全、多臓器不全進行し救命を断念しました.

このように重症3枝病変や左主幹部病変で
ひとたび心原性ショックや、心室細動、心停止を来すと
その救命は、非常に困難です.

願わくば、もっとこれらの致死的な症状を来す前に
早めに心臓カテーテル検査で診断をつけることができれば
比較的安全にバイパス手術や症例を選んでカテーテル治療が
行うことができます.

これらの致死的な重症狭心症を
いかに早い時期に診断し適切な治療を受けていただくかが
われわれ循環器医の使命だと考えています.
by yangt3 | 2006-01-27 08:56 | カテーテルの話題