もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28

コンスタント先生 講演会の抄録 利尿薬による治療

H18年1月28日(土)に行われたコンスタント先生の
講演会の抄録の続きをお届けします.

a0055913_8405756.jpg


心不全の治療として、前回 お話があったジゴキシン以外に
利尿薬もよく用いられる薬剤です.

利尿剤は、腎臓においてナトリウムの排泄を増加させることによって
尿量を増加させる薬剤です.
高血圧、急性および慢性心不全、浮腫などの使用されます.
コンスタント先生は、心不全において利尿剤を投与する時
浮腫を目安にするのではなく
呼吸困難(つまり肺うっ血の程度とか、左心房圧の上昇を意味する)を
目安にして利尿剤を調整するべきであることを
強調されていました.
心不全の呼吸困難を治療するための薬が利尿剤という考え方です.
患者さんへの説明としても、呼吸困難を改善するために投与するとします.
くわしくは、上昇した左心房圧を下げるため、
うっ血の改善のために利尿剤を投与することになります.

実際に使用されるのは次の3種類です
・ラシックス(フロセミド)ループ利尿薬
・フルイトラン(サイアザイド)
・アルダクトン(スピロノラクトン)
使用に当たって注意すべき点は、K保持性かK喪失性かということ、
腎機能低下症例に使用できるかどうかということです.
ラシックス、フルイトランはK喪失性であり
逆にアルダクトンは、K保持性です.

a0055913_8412843.jpg


1)ラシックス(フロセミド)ループ利尿薬
主に腎臓 腎尿細管のHenle 上行脚に作用し、ナトリウムの再吸収を阻害します.
結果的にナトリウムの排泄が増加し利尿が得られます.
心不全の治療に最も標準的に使用される薬剤です.
急性肺水腫や、急性心筋梗塞の左心不全による肺うっ血に対して
ラシックスは初期治療として有用です.
ラシックス投与により、利尿、尿量の増加が得られる前に
肺うっ血による呼吸困難の改善が得られます.これは、ラシックスの
血管拡張作用や、前負荷の軽減、およびそれによる左心房圧の軽減に
よるものです.
 ラシックスの特長としては、作用が強力であること、
腎機能低下症例でも使えることです.
さらに上記のようにK喪失性です.
 ラシックスの投与によって
カリウム(K)、カルシウム(Ca)、および水溶性ビタミン(Vit B、Vit C)の
喪失が起こりますので、補充が必要になります.
逆にラシックス投与により尿酸が上昇し、高尿酸血症も稀ではありません.

2)フルイトラン(サイアザイド)
 昔は高血圧の第一選択約として使用されていました.
(年配の医師によく処方されています)
作用として、腎臓 ネフロンの 遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収抑制により
ナトリウム排泄の増加を介して、利尿ガ得られます.
ラシックスに比べて、利尿作用が弱く、心不全の治療としては弱い効果です.
ラシックスと同様に使用にて低K血症となります.
フルイトランに特徴的なことは、耐糖能異常があります.
フルイトランの投与により血糖の上昇が見られますので注意が必要となります.
この薬剤では、カルシウムの排泄は阻害されません.逆に高Ca血症に注意が
必要となります.
実際には心不全治療の第一選択として用いられることは少ないです.
日常診療では、
高齢者の軽症高血圧、女性の高血圧などへの使用
(カルシウム排泄が抑制されないため)
軽症心不全の浮腫の軽減のために 使用されることが多いようです.

もちろん、コンスタント先生の講演をお聞きになった方なら、おわかりのように
あくまで利尿薬は、呼吸困難(肺うっ血、上昇した左心房圧)を
改善するために使用する薬剤であるということです.

3)アルダクトン(カリウム保持性利尿薬)
 腎臓 ネフロンの遠位尿細管のおいてアルドステロンに拮抗し
アルドステロン依存性のナトリウム/カリウム交換を抑制する作用です.
この薬剤においては、ラシックス、フルイトランと違い
低カリウム血症は起こりません.逆に高カリウム血症を来すおそれさえあります.
特にラシックスと併用してカリウム製剤を投与している場合には、
アルダクトンの使用により、一気に高カリウム血症に至る恐れがあります.
その他の副作用としては、講義でも触れられていたように
女性化乳房があります.
 コンスタント先生が講義で触れられていた新しいカリウム保持性薬剤では
これらの副作用も軽減されています.
アミロライド(Amiloride)がそのお薬ですが、残念ながら日本では使用できません.
アミロライドは、アルドステロンとは関係なく遠位尿細管で
ナトリウム / カリウム交換を阻害し利尿をはかります.

a0055913_842494.jpg


利尿剤で重要な知見として
SOLVD Study という臨床研究があります.この研究で、心不全において、
カリウム非保持性利尿薬
(ラシックス、フルイトラン)を使用した群では、カリウム保持性利尿薬を
使用した群と比べて不整脈による死亡が多いことが判明しました.
この話には、続きがありカリウム非保持性利尿薬と、
カリウム保持性利尿薬を併用することにより
このような不整脈による突然死のリスクを減少させることができます.
このようにスピロノラクトンの併用が心不全の予後改善に
優れた効果を示す臨床試験の結果が判明しています.

心不全の治療にあっては、ラシックスにアルダクトンを加えた治療が有用です.

カリウム非保持性利尿薬(ラシックス、フルイトラン)の使用にあっては、
電解質チェック、腎機能チェック、不整脈のチェックなどの
合併症に対する注意が必要です.
by yangt3 | 2006-02-04 08:43 | コンスタント先生