徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療
2006年 02月 09日
治療が行われました.
症例は、完全房室ブロックによる徐脈性不整脈の方です.
頻脈性不整脈には、坑不整脈薬剤によって
内科的治療が可能です.
脈が遅くなる徐脈性不整脈については、薬物療法は
有効なものがなく(一時的に硫アトが用いられるが)
基本的にはペースメーカーの植え込みが必要になります.
徐脈性不整脈を起こす原因としては、
・SSS (洞不全症候群)
・完全房室ブロック
などがあります.
心電図では、このようになります.
この症例は、完全房室ブロックとなった症例です.
ペースメーカーは通常、右心房、右心室に
2本電極(リードと呼ばれる)が挿入されます.
ペースメーカーの種類としては
DDD、VVI等という風に略されます.
この3つの文字がペースメーカーの機能を表しています.
最初の文字は、ぺーシングが入っている部位
2番目の文字は電位を検出している部位
3番目の文字は、応答様式となっています.
だからDDDというのは、右心房、右心室の両方をぺーシングし
右心房、右心室の両方の電位を検出し、
右心房、右心室の両方で応答するということになります.
心房波がある場合には、DDDが入れられ、右心房の機能を
生かすことになります.
その他によく用いられるモードとしては、VVIがあります.
これは右心室に1本のリードを入れて、心室のみで電位を検出、刺激
するモードです.心房との協調性がないため、心房昨日が良好であれば
DDDが有利です.
慢性的に経過した房室ブロック、洞不全症候群は
房室結節、洞結節と呼ばれる心臓の刺激伝導系システムの
加齢現象によるものです.
従って、放置しても軽快することはまれであり
ペースメーカー植え込みが必要になります.
救急領域で注意するべきは、急性心筋梗塞に徐脈が合併する例があることです.
右冠動脈の閉塞で房室ブロックなどの徐脈性不整脈が
出現することがあります.
閉塞した右冠動脈の病変を治療し、血流を再開すれば
徐脈性不整脈は改善します.
一時的に 一時ぺーシングと呼ばれる治療が必要になることもあります.
左冠動脈(特に左前下行枝)の病変でブロック、徐脈を来した場合には
血行動態の変化を伴うことも多く、
つまりショックを来しやすく
しばしば、一時ぺーシング治療以外に
IABP(まれにPCPS)などの心臓サポートの治療が必要になることがあります.
もちろん先日の症例のように
急性心筋梗塞に心室細動などの致死的不整脈も合併しやすいので
迅速な対応が必要となります.
心臓カテーテル室には、一時的に心臓のぺーシングを行うことのできる
一時ぺーシングキット(体外ぺーシングとも呼ばれる)が
常備しています.
いずれにせよ、急性心筋梗塞に合併した徐脈性不整脈については
閉塞した冠動脈の治療が優先します.
稀に急性心筋梗塞で閉塞した冠動脈の治療を行っても
徐脈性不整脈が改善しない場合があります.
その場合には、永久ペースメーカーの植え込みとなります.