もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療

先日、東可児病院循環器科でペースメーカー植え込みの
治療が行われました.
症例は、完全房室ブロックによる徐脈性不整脈の方です.

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療_a0055913_8522641.jpg


頻脈性不整脈には、坑不整脈薬剤によって
内科的治療が可能です.
脈が遅くなる徐脈性不整脈については、薬物療法は
有効なものがなく(一時的に硫アトが用いられるが)
基本的にはペースメーカーの植え込みが必要になります.
徐脈性不整脈を起こす原因としては、
・SSS (洞不全症候群)
・完全房室ブロック
などがあります.

心電図では、このようになります.

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療_a0055913_8503432.jpg


この症例は、完全房室ブロックとなった症例です.

ペースメーカーは通常、右心房、右心室に
2本電極(リードと呼ばれる)が挿入されます.

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療_a0055913_8512728.jpg


ペースメーカーの種類としては
DDD、VVI等という風に略されます.
この3つの文字がペースメーカーの機能を表しています.
最初の文字は、ぺーシングが入っている部位
2番目の文字は電位を検出している部位
3番目の文字は、応答様式となっています.
だからDDDというのは、右心房、右心室の両方をぺーシングし
右心房、右心室の両方の電位を検出し、
右心房、右心室の両方で応答するということになります.

心房波がある場合には、DDDが入れられ、右心房の機能を
生かすことになります.



その他によく用いられるモードとしては、VVIがあります.
これは右心室に1本のリードを入れて、心室のみで電位を検出、刺激
するモードです.心房との協調性がないため、心房昨日が良好であれば
DDDが有利です.

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療_a0055913_8515633.jpg


慢性的に経過した房室ブロック、洞不全症候群は
房室結節、洞結節と呼ばれる心臓の刺激伝導系システムの
加齢現象によるものです.
従って、放置しても軽快することはまれであり
ペースメーカー植え込みが必要になります.

救急領域で注意するべきは、急性心筋梗塞に徐脈が合併する例があることです.
右冠動脈の閉塞で房室ブロックなどの徐脈性不整脈が
出現することがあります.
閉塞した右冠動脈の病変を治療し、血流を再開すれば
徐脈性不整脈は改善します.
一時的に 一時ぺーシングと呼ばれる治療が必要になることもあります.
左冠動脈(特に左前下行枝)の病変でブロック、徐脈を来した場合には
血行動態の変化を伴うことも多く、
つまりショックを来しやすく
しばしば、一時ぺーシング治療以外に
IABP(まれにPCPS)などの心臓サポートの治療が必要になることがあります.
もちろん先日の症例のように
急性心筋梗塞に心室細動などの致死的不整脈も合併しやすいので
迅速な対応が必要となります.
心臓カテーテル室には、一時的に心臓のぺーシングを行うことのできる
一時ぺーシングキット(体外ぺーシングとも呼ばれる)が
常備しています.

いずれにせよ、急性心筋梗塞に合併した徐脈性不整脈については
閉塞した冠動脈の治療が優先します.

稀に急性心筋梗塞で閉塞した冠動脈の治療を行っても
徐脈性不整脈が改善しない場合があります.
その場合には、永久ペースメーカーの植え込みとなります.

徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療_a0055913_8542596.jpg

by yangt3 | 2006-02-09 08:54 | カテーテルの話題