もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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無理に頑張らなくていい

急性心不全は、急性心筋梗塞、狭心症、弁膜症などによって
引き起こされます.急速に心臓のポンプ機能が低下し
肺うっ血、低血圧、臓器還流不全、ショックをきたし
適切な治療が行われなければ死に至ることもあります.
急性心不全には、いわゆる強心剤が用いられます.
カテコラミンと呼ばれる薬剤で
ドーパミン、ドブタミンなどが良く使用されます.
これらの薬剤は、αレセプター、βレセプターを介して
心臓の収縮力を高めたり、末梢血管を収縮させて血圧を上昇させます.
急性期の短期間の危機的状況には、これらの強心剤は有用です.
問題点としては、これらの強心剤の使用により、さらに心臓の虚血が
促進されること、末梢血管の過度の収縮作用により臓器の還流、血流が
低下する可能性があること、不整脈や頻脈をきたす可能性があること
です.
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さらにこれらの強心剤の長期使用により
βレセプターのダウンレギュレーションが起こり
心臓のβレセプターが減少し、強心剤の作用が減少します.
さらには強心剤の長期使用により、心筋細胞の虚血の促進、
心筋細胞の壊死の促進、ひいては心不全の悪化が起こります.

このように急性心不全などの短期の強心剤の使用は有用ですが
慢性心不全などにおいては、強心剤の使用は、有害ですらあります.
前回のコンスタント先生の講義でも触れられていましたが
長期の心不全の治療にあっては、逆にβ阻害剤が用いられます.
急性心不全で用いられる強心剤とは、全く反対の作用です.
心臓を刺激するのではなく、逆に静める治療です.

過度に心臓、内蔵を刺激し続けることは有害です.

その他の病気でも同じようなことが言えます.

有名な話ですが、うつ病、うつ状態の方に
不用意に「がんばれ」「早く元気になってね」と
励ますことは、禁忌であり、よくありません.
かえって、本人の自席の念が強まり
うつの病状が悪化するばかりか、最悪の場合
自殺企図に至る場合さえあり、危険です.
うつの場合、がんばってはだめなのです.
「無理にがんばらなくていい」
「よく我慢したね」
このように頑張らせず、刺激せず、安静が重要となります.

糖尿病でも同じです.
インスリン分泌がなくなってしまう I 型糖尿病については
絶え間ないインスリンの投与が必要です.
糖尿病の大半をしめる2型糖尿病については
インスリン分泌は、保持されています.
従来の糖尿病の治療では、すい臓の細胞を刺激し
インスリン分泌を促進する薬剤が主流となって使われています.
刺激してだめなら、インスリン治療を行うという方法です.
心臓と同じように、過度のインスリンの刺激分泌は
すい臓を疲労させることに繋がります.
最近、登場した新しい薬剤では
すい臓のインスリン分泌を刺激することなく
各臓器でのインスリンの作用を高める作用があります.
(インスリン抵抗性を減少させる)
アクトスという薬剤です.発想は、非常に素晴らしいのですが
残念なことに中等度以上の糖尿病には、効果が不十分であり
上記のインスリン刺激の薬剤を併用しているのが現状です.
低炭水化物療法と呼ばれる新しい食事療法があります.
お米、でんぷんなど食事から炭水化物をできる限り
取り除きます.その他の食事は制限ありません.
炭水化物の摂取が高血糖の最も大きな原因となります.
炭水化物の摂取を制限するだけで、血糖が急速に是正されます.
ひいては、すい臓、インスリン分泌細胞を休めることになります.

このように、最新の医学の進歩では、
強心剤、インスリン分泌促進剤のように刺激する治療だけでなく
逆に内蔵、体を休める治療が主流になってきています.
無理にがんばらなくていいんです.
体を休めることで 本来 体の持っている働きが
また復活していくのだということです.

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人と人との関係、医師と患者さんとの関係も
このようにありたいものです.

つまり人から 何かしてもらうのを期待するのではなく
自分から奉仕の気持ちになろうということかもしれません.
病気に苦しむ人を、まず あるがままに受け入れること
そこから出発したいと思っています.
by yangt3 | 2006-02-10 12:39 | 一般