もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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経皮的気管切開の手順 パート2

1)患者の頚部を、肩に枕等を使って伸展させ、体位をとります.

2)穿刺ポイント
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_12172894.jpg

穿刺部は、第1、第2気管軟骨間 または 第2、第3気管軟骨間の
靭帯を目標とします.
局部を消毒し、再度患者さんのランドマークを確認しマーキングします.
(甲状軟骨、輪状軟骨、第1、第2、第3気管軟骨)
人工呼吸器の設定を FiO2 100% に設定.
心電図モニタ、SpO2モニタなどをベッドサイドに配置します.
あらかじめ挿管されている場合が多いのですが
気管切開の前に気管挿管チューブを
手技の邪魔にならないように、チューブのカフが
声門の真上になるまで、気管チューブを引き抜きます.
この位置で再度カフを膨らませ、介助者が保持します.
できれば喉頭鏡を用いて確認しながらの
位置決めが確実です.
気管切開が終了するまで必ずスタッフが、
患者さんの頭側にたち、気道チューブを保持している必要があります.
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_12201036.jpg


3)輪状軟骨、甲状軟骨などのランドマークを確認し
穿刺予定部の皮膚を十分に局所麻酔を施行します.
そのまま局麻穿刺針で気管穿刺を施行し、本番の穿刺ラインを確認します.
穿刺ラインを確認後、皮膚切開を加えます.
通常の外科的気管切開のような大きな切開は必要なく
むしろ止血効果を高める為に、気管切開チューブが留置できるほどの
切開で十分です.

3)再度パイロット針で試験穿刺を行った後
キットの専用の留置針で、マークした穿刺予定部位を穿刺します.
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_1221196.jpg

生食水3〜5cc入れたシリンジを装着し
気管内に入った確認はエアの逆流で行います.
針先が気管内にあることを確認後、内筒を抜き取り、
尾側に向けて留置カニューラ(外筒)を導入します.
この留置針による気管の穿刺が重要なポイントです.
私的なコツとしては、皮膚切開を行った後で
今一度、輪状軟骨を確認します.この輪状軟骨の下縁から
1〜2mmのポイントから穿刺すると、ほとんど問題なく穿刺できます.
いままで数多くの経皮的気管切開を行ってきましたが
この穿刺手技で、甲状腺などを穿刺して出血に難渋した経験は
今のところありません.
ワンポイントで穿刺し、以後はセルジンガー法で
その穿刺部位を拡張するため
穿刺さえよい位置に決まれば、以後の処置で出血に困ることも
あまりありません.

4)気管内に挿入したカニューラよりガイドワイヤーを挿入します.
ガイドワイヤーイントロデューサーによって、
ガイドワイヤー先端のJチップをまっすぐにして挿入します.

5)ガイドワイヤーを気管内に挿入します.10cm程度までは挿入.
挿入したガイドワイヤーが自由に動き、抵抗がないことを確認します.
問題なければ、カニューレを抜去します.
このガイドワイヤー挿入が一番重要です.
前述の気管チューブの引き抜きが不十分であると
ガイドワイヤーが気管チューブにあたり、強い抵抗を感じて
ガイドワイヤーが挿入困難となります.
挿入したガイドワイヤーが自由に動かない場合は、
ガイドワイヤーがうまく気管内に入っていない可能性もあり
再度、穿刺からやり直す必要があります.
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_12215844.jpg


6)ガイドワイヤーが気管内にあることをしっかり確認後
セルジンガー法に従って穿刺部位を拡張していきます.
まず付属のプラスティック・ダイレーターをガイドワイヤーに沿って
挿入し、皮下組織部と気管壁を拡張していきます.
十分に拡張したらプラスティック・ダイレーターを抜去します.
それほど出血はみられないはずです.
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_12225072.jpg


7)続いて専用鉗子を用いてさらに内腔を拡張していきます.
この鉗子は特別な工夫がしてあり、鉗子を閉じた状態で
ガイドワイヤーを通すルーメンが付けてあります.
ガイドワイヤーを通じてこの専用鉗子を気管まで、はずれることなく
進めることができます.(まさにセルジンガー法ですね).
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_12233626.jpg


8)ガイドワイヤーに沿って気管まで進めたあと
鉗子を開いて、皮下組織ブを十分に拡張します.
拡張操作後に、鉗子を開いた状態で鉗子を引き抜きます.
この際に、切開部から、喀痰や分泌物、血液などが核出されることがあり
術者、助手、介助者に飛沫がかからないように細心の注意が必要です.
気管の切開部を拡げることにより、換気効率が落ちますので
拡張の操作は、しっかりと確実に素早く行う必要があります.
あわてて手技を行うと、鉗子の先でガイドワイヤーを曲げてしまい
以後の操作が困難になることもあり、あくまで慎重に行います.

9)引き続き拡張操作を繰り返します.
再度ガイドワイヤーに沿って専用鉗子を挿入します.
気管壁まで進めて、鉗子の抵抗消失で鉗子が気管壁を通過したことを
確認します.通常はそれほど強い抵抗もなくスムーズに気管内まで
鉗子が到達します.

10)専用鉗子の拡張操作を行う前に、ガイドワイヤーが自由に動くことを
確認します.手技を進める際に少しでも抵抗があった場合には
ガイドワイヤーが自由に動くことを頻回に確認する必要があります.
ガイドワイヤーが抵抗があり自由に動かない場合は
手技の途中でガイドワイヤーが折れ曲がり
皮下組織部に誤った挿入ロが形成されている可能性があります.
鉗子を引き抜き、ガイドワイヤーが曲がっていないかどうか
ガイドワイヤーが自由に動くかどうか確認します.
もしガイドワイヤーが曲がっていた場合には、
曲がっていない傷んでいないガイドワイヤーの部分で手技を続行します.

11)専用鉗子がきちんと気管内にあることを確認した後
鉗子のハンドルを持ち上げると、鉗子の先端が気管内に完全に挿入されます.

12)鉗子が気管内に確実に挿入されている位置で
両手で鉗子をしっかりと開き、気管切開チューブが挿入できるまで気管壁の拡張を
行います.鉗子が開いた状態で引き抜きます.
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_1225322.jpg

この専用鉗子による気管支壁の拡張は数回行います.
高齢者の方、透析を受けておられる方などでは
気管壁が固くなっていることが多く、かなりしっかりと拡張操作を行う必要が
あります.
もしこの拡張操作が不十分であった場合、
気管切開チューブの挿入が困難となるばかりか
チューブ挿入の際にガイドワイヤーを痛めたり、曲げたりすることもあり、
また手技時間も長くなりますので
拡張をしっかり行うことが重要です.
この数回の拡張の際にも、頻回にガイドワイヤーが自由に動くことを
確認します.あわててガイドワイヤーが抜けないようにします.

13)十分に気管壁を拡張行った後、ガイドワイヤーを介して
キシロカインゼリーで潤滑にした、気管切開チューブを挿入します.
経皮的気管切開の手順 パート2_a0055913_122668.jpg

これまでの手順を十分に行っていれば、それほど抵抗もなく
気管内にチューブを進めることができるはずです.
気管内に気管切開チューブが挿入されたあと
ガイドワイヤーとオブチュレーターを抜去、カフを膨らませます.
経口の気管挿管チューブを抜去し、
気管切開チューブより換気を続行します.人工呼吸を行っている場合には
人工呼吸器を接続します.
私は気管切開チューブの人為的な抜去を防ぐために
1〜2針皮膚に固定を行っています.
初期のマニュアルでは、気管切開を行った後
気管支ファイバーでチューブが気管にあることを確認することと
なっていましたが、ガイドワイヤーが自由に動くことを
常に確認し、それぞれの手順を確実に行えばそれほど問題なく
安全な手技です.
by yangt3 | 2006-03-11 12:28