もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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黒い春

山田 宗樹氏の 黒い春
(幻冬舎文庫)を読了しました.
山田 宗樹氏といえば、「直線の死角」で
第18回横溝正史賞を受賞し、20003年には
「嫌われ松子の一生」が大ベストセラーになった作家です.

この「黒い春」は、突然発症した
未知の感染症に対して人類が闘いを挑む姿を
描いた物語です.

前回紹介した 「チーム・バチスタ」と同様に
心に残る作品です.

黒い春_a0055913_01449.gif





ここからは、作品紹介となります.
まだお読みになっていない方は、飛ばしてくださいm(__)m

おおまかなストーリーは

覚醒剤中毒死を疑われ監察医務院に運び込まれた遺体から
未知の黒色胞子が発見された。
そして翌年の五月、口から黒い粉を撤き散らしながら
絶命する黒手病の犠牲者が全国各地で続出。
対応策を発見できない厚生省だったが、
一人の歴史研究家に辿り着き解決の端緒を掴む。
そして人類の命運を賭けた闘いが始まった—。

物語の発端は、東京都監察医務院で行政解剖された
17歳の少女でした.覚せい剤中毒と診断されたが
監察医の飯守俊樹は、肺の一部に1センチほどの黒い病変を発見.
顕微鏡で、黒い巨大な胞子が確認された.
衛生研の岩倉和正は、新種の真菌症の疑いとのことで調べるも
分離培養できず.その正体不明の黒い胞子に
国立感染症センターの三和島篤郎も興味をもつ.

その1年後には、この黒い胞子が原因の感染症が流行し
多くの犠牲を出す.
3人が必死にこの感染症の究明に取り組むが
犠牲者はどんどん増えて行く...

そして、この伝染病である感染症は
人を選ばない.
もし愛する人、大事な人が致命的な病を得た時に、
そして愛する人との別れが確実に迫ってくる時に、
人はどう生きて行くべきなのか.

ー愛するものを亡くす者、愛する者を残して逝かなければならない者.
いったいどんな気持ちであることかー

われわれ医療に携わる人間にとっても
家族があり、大切なひと、大事なひと、愛する人がいるのは
皆さんと同じです.
そしてみなさんと同じように
病に倒れる事もあります.

病気や死というものに対して、いくつかの武器はありますが
自分が病にかかった時や
自分の大事な人が病を得た時の気持ちは、まったく皆さんと同じなのです.

この「黒い春」は
医療者も結局は、無力な人間であること、死からは、逃れる事ができないこと.
だからこそかけがいのない愛する人は、生命の喜び、きらめきを
大事に守って行かなければならないという
メッセージが込められているように思います.

ぜひ皆さんにも読んでいただきたい一冊です.
by yangt3 | 2006-05-07 00:02 | 皆さんに紹介したい本