もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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抗生物質で神経機能回復

ミノサイクリン(ミノマイシン)という薬があります.
抗生物質であり、細菌性感染症の治療に用いられます.

この抗生物質ミノサイクリンに、
脳の神経細胞を回復させる効果があるという
研究が発表されました.

抗生剤としての働き以外に
こうした作用があるとは
ミノサイクリンって本当に不思議な薬です.




覚せい剤で損傷の神経回復 抗生物質ミノサイクリン
共同通信 2006.5.31

抗生物質ミノサイクリンに、覚せい剤の使用で損なわれた
脳の神経細胞のドーパミン調節機能を回復させる効果があるとする
実験結果を、橋本謙二千葉大教授(神経科学)と
浜松ホトニクス(静岡県浜松市)のチームが30日までに、
米医学誌に発表した.(Biological Psychiatry)

ミノサイクリンは最近、パーキンソン病などの神経変性疾患で
改善効果が報告されている.
覚せい剤中毒状態のサルは調節機能が平均約40%まで落ち込んだが、
ミノサイクリン投与のサルでは同78%まで回復した.

6月から米エール大と共同で、米国の中毒患者らを対象に
臨床試験を行う予定とのことです.
人間で同様の効果や安全性が確認できれば、
患者の症状改善や社会復帰を助ける治療につながると期待される.

覚せい剤は神経伝達物質ドーパミンを過剰放出させて
快感を生じさせる一方、神経細胞を損傷し、
薬物依存や異常行動などを引き起こす.
損傷を元に戻す薬はなく、幻覚を一時的に抑えるなどの
対症療法しか手がない.

チームはPET(陽電子放射断層撮影)装置を使い、
覚せい剤メタンフェタミンを投与し中毒状態にしたサルで、
神経細胞が脳内のドーパミン量を調節する機能を調べた.

覚せい剤投与直後からミノサイクリンを毎日投与したサルでは、
調節機能は2日後に平均約65%に落ち込んだが、
8日後には同78%まで回復した.
ミノサイクリンを投与しないサルでは、8日後は同40%しかなかった.

また、覚せい剤の前にミノサイクリンを与えると、
ある程度、機能損傷を抑えられたという.
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抗生物質であるミノサイクリンがどのような機序で
神経機能の回復を起こすのかは、
まだよくわかっていないようです.

医学の世界では、このように本来予想された効能とは違う
新たな効能が見つかる事があります.

ある意味、当たり前と思われた事でも
再度、新たな目で見直す事で、なにかが見つかるかも知れません.
既成事実にとらわれずに
そういう柔軟な目と心を持ちたいものです.
by yangt3 | 2006-06-03 12:27 | ニュース