もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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心肺蘇生後の意識障害の転帰の予測

AEDの普及や新しい心肺蘇生法の
普及により心肺停止後に
蘇生される患者さんの増加が
期待されます.

心肺停止からCPRによって蘇生しても
意識障害が遷延し
意識の回復がなければ
良好な予後や社会復帰が
困難となります.

今回、心停止後に心肺蘇生を受けて
蘇生した昏睡患者の回復の予測に
関するガイドラインが発表されました.

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Neurology 2006;67:203-210.
米国神経学会(AAN)

 心停止後に心配蘇生術(CPR)を受けた意識障害患者の
 転帰をより正確に予測するのに有用となる可能性がある
 新ガイドラインを米国神経学会(AAN)が作成した。

 『Neurology』7月25日号に発表された同ガイドラインによれば、
 転帰不良の最良の予測因子は瞳孔対光反応または角膜反射がないか、
 観察3日後に疼痛に対する伸展または運動反応がないこと、
 およびミオクローヌスてんかん重積状態である。

 神経学的検査は、未だに予後不良の最も重要な予測因子である。
 神経特異性エノラーゼ [NSE]および体性感覚誘発電位 [SSEP] などの
 臨床検査は予後の確認に有用となりうるが、こうした検査は
 適時ではなく、利用できない、あるいは標準化されていない
 可能性があるため、いくぶん二次的なものである.

 AANの後援の下、米国、カナダ、スイス、オランダの研究者らが
 参加するチームは、1カ月後の死亡または昏睡、もしくは
 6カ月後の意識障害または重度能力障害の予測因子を研究した、
 1966年1月から2006年1月までの入手可能な全ての研究の
 広範な文献レビューと解析を実施した。

 心停止が確認され、17歳以上であり、グラスゴー昏睡尺度8未満の
 被験者を組み入れた研究を解析対象として適格とした。
 合計391件の適格な可能性のある文献引用文をレビューした。
 転帰不良とは、1カ月後における死亡または持続性意識消失、
 もしくは6カ月後における死亡、持続性意識消失、または
 完全看護を要する重度能力障害と定義した。

 著者らがこれらの転帰尺度を選択したのは、
 「CPR後1カ月間以上にわたり植物状態の患者、
 または6カ月以上経過しても重度能力障害の患者では、
 重度運動能力障害または認知障害なしに生存している可能性は
 ほとんど皆無である」ためである。

 次に、同研究者らは以下のような7項目の変数を評価した:
 ・CPRを取り巻く環境
 ・体重上昇
 ・神経学的検査
 ・電気生理学的試験
 ・生物化学的マーカー
 ・脳機能のモニタリング
 ・神経画像試験

 無酸素症の時間、CPRの期間、および心停止の原因が
 転帰不良に関連するものの、転帰不良となる人と転帰良好となる人とを
 正確に識別することはできない。

 さらに、体温上昇が転帰不良を伴うことを示すエビデンスがいくつかあり、
 1試験では37℃を超える1℃ごとに、6カ月後に死亡または植物状態に
 とどまる可能性が2.26倍高くなることが報告されている。
 しかし、転帰不良の患者を体温のみで特定することはできない.

 転帰不良の予測因子として最も優れていることが明らかになった
 神経学的検査の特徴は、一次性循環停止患者における
 最初の24時間以内のミオクローヌスてんかん重積状態、
 CPR後1-3日以内の瞳孔反応の消失、CPR後1-3日以内の角膜反射の消失、
 3日後の運動反応の消失または伸展位であった。

 研究者らは、どのような電気生理学的試験が転帰の判定に
 有用であるかも研究した。
 これには脳波(EEG)、誘発電位/事象関連電位試験が含まれた。

 EEGの使用または有用性について決定的な結果は得られなかった.
 EEGが臨床現場で転帰の評価に使用されていることは知っているが、
 臨床医になんらかの方向性を示すには十分なデータでは
 ないことがわかった。

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 同研究者らは、SSEPがEEGより正確な転帰の予測因子であることを
 認めた。CPRの1-3日後以降に記録された神経刺激中央値を伴う
 SSEPのN20構成要素の両側性消失が転帰不良を正確に予測する。

 転帰不良を正確に予測する、CPR後1-3日目における
 血清中NSE濃度33μg/L超を除き、他の血清および脳脊髄液の
 生化学的マーカー(血清S100およびクレアチニンキナーゼ脳イソ酵素)の
 予後判定値を支持または拒否するためにはデータが不十分であった。

 さらに、頭蓋内圧および脳酸素過剰のモニタリングの
 予後判定値も決定的ではない。

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突然の心肺停止を迅速な心肺蘇生によって
心拍が再開しても、その後の意識障害に
悩まされる事になります.
蘇生しても意識の回復がなければ
生命予後は不良ということになります.

今回の記事では、最も優れている予後規定因子として
 ・最初の24時間以内のミオクローヌスてんかん重積状態
 ・CPR後1-3日以内の瞳孔反応の消失
 ・CPR後1-3日以内の角膜反射の消失
 ・3日後の運動反応の消失または伸展位
が挙げられています.

あくまで心肺蘇生後の予後を判断するためのものであり
脳死判定とは別のものです.
神経学的予後を判定する為には
今回の研究では、脳波の意義は明らかにはならなかったそうです.

私なりに了解したことは
心肺蘇生後、3日以内に上記に挙げた予後規定因子が
出現しないこと、
つまりは、蘇生後3日以内に意識の回復が見られる事が
患者さんの良好な転機を予測するのに有用ということになります.

蘇生後、少なくとも最初の3日間は
回復のためにあらゆる手を尽くす必要があるということです.

もちろん、今回は意識障害、昏睡からの回復を問題にしているのであって
いわゆる植物状態、意識障害、重度能力障害などの後遺症を
残しても生命維持できる可能性は、また別です.

心肺蘇生後3日を過ぎても
良好な意識の回復がなくて予後不良と考えられる時
その事実を家族にお伝えするのは、本当につらいことです.

理想論としでですが
究極の蘇生とは心拍の再開だけではなくて
生命をあらゆる点で元にもどし回復するものでなくては
ならないと思います.
まだまだ研究するべきことは多いようです.

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by yangt3 | 2006-07-30 00:16 | ニュース