もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

新生児の延命

延命治療は難しい問題であり
とことんまで議論をするべきです.
とはいえ、すぐに結論をだすこともできません.

厚生省のガイドラインにのっとった手続きであれば
法的には問題ないのですが
医療の側からも、家族の側からもまだまだ
議論は尽くされていないようです.

小さな命であっても苦痛の除去も
必要なことです.

今回、いくつかの小児専門の病院における
赤ちゃんの延命治療の記事が発表されました.

a0055913_054641.gif





----------沖縄タイムス 2006年7月31日
新生児の医療を考える糧に
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20060731.html

 この記事では大阪市の淀川キリスト教病院で
 1999年から2005年の間に、病気で死期が迫った赤ちゃん
 8人について両親の希望を受けて、人工呼吸器を含めた
 すべての延命治療を中止していたことが分かった。
 と報じられています.
  重い脳室内出血を起こした末期の超低出生体重児などで、
 いずれも新生児集中治療室(NICU)で治療を受けたものの
 複数の医師が回復不可能と判断し、
 「あと一、二時間以内(で死亡する)」
 とされた赤ちゃんへの対処だったという。

-----------iZa(産経新聞社) 2006年7月30日
赤ちゃん延命中止 死期迫り7年で8人
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/life/children/12795/

 この記事でも同じく 淀川キリスト教病院の事例が紹介されています.

------------iZa(産経新聞社) 2006年7月30日
近大病院も新生児6人の延命治療中止 担当医師が論文
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/12903/

 近畿大病院(大阪府)が、治る見込みがないと判断した
 重い病気の赤ちゃん6人について
 「人工呼吸器を含むすべての延命治療を中止した」とする論文を、
 同病院に在籍していた医師が平成11年に新生児医療の専門誌に
 発表していたことが分かった。心拍数の低下などから
 確実に死期が迫ったと判断した赤ちゃんのほか、1人は持続的な
 昏睡(こんすい)状態だったとされる。
 論文は昏睡状態での呼吸器取り外しも
 「将来自立した活動ができるよう回復するとは考えられない場合で、
 家族もみとりを希望すれば倫理的に許容される」としており、
 異論も出そうだ。
 (中略) 平成8~9年度の2年間に同病院のNICUで死亡した
 赤ちゃん9人のうち、治療を尽くしたものの死が避けられないなどと
 判断した6人について、呼吸器を最後には取り外したとし、
 うち3人の症例を詳述。
 1人は低酸素性虚血性脳症で、生後3カ月を過ぎても自発呼吸や
 自発運動がまったく見られない重度の昏睡が続き、
 進行性の脳萎縮もあることから
 「回復は不可能」との判断を伝えた。
 両親は治療中止を望み、呼吸器を取り外した。
 ほかの2人は染色体異常と脳室内出血の赤ちゃんのケースだった。
--------------------------------------------------------
a0055913_064058.gif


淀川キリスト教病院は、末期ガン患者の終末期ケアを行う
ホスピスを国内で先駆的に導入した病院として有名です.

私は循環器の医者であり
小児科は専門外です.
昨今の厳しい小児科医療を取り巻く状況の中で
日々頑張っておられる現場の小児科の先生たちには
本当に頭が下がる思いです.

私の知り合いの小児外科の先生は
病気をもった子供たちの悲惨な状態に
心が耐えきれず、小児外科の現場からリタイアされてしまいました.

そんなわけで、どちらかといえば、医師としての立場より
同じく小さな子供の親として、患者側に偏った
気持ちでこの記事を読んでいました.

医療技術の進歩で、以前には救命できなかった赤ちゃんも
救命できるようになっています.
それでも医療の限界に直面することは避けられないのです.

死が避けられない新生児にどこまで治療を施すか、
深刻な問題に直面います.

日本全国の医師、医療スタッフ、そして家族が
毎日、日々、この答えのない問題への
現実的対応に直面し、苦慮していると思います.

議論の焦点としては
・何よりも治療の差し控えや中止が「生命の切り捨て」に
 つながってはならない
・成人では回復が見込めない症状でも、新生児なら
 回復の可能性がある
・親が子に変わって延命、尊厳死などの意思決定をすることの
 妥当性がどうなのか
・重度の障害を持った子供の生きる力を尊重しているか
こうした議論が続けられて
明確な結論は出ていません.

積極的な治療を続けるにせよ、延命治療の中止を決めるにせよ
こうした大切な命の問題を
家族だけに押し付けてよいものかどうか
医師、医療スタッフがとことん十分に話し合って
それでも出口が見えないかも知れません.

刑法的な立場からは 上に紹介した記事の中出
 甲斐克則・早稲田大大学院教授(刑法、医事法)の話として
 紹介されています
 「植物状態など重い障害がある赤ちゃんへの対応は欧米でも
 議論が続いており、出口が見えない非常に重い問題だ。
 生存権の保障を大前提にしつつも、赤ちゃんにとって延命治療が
 『人間の尊厳』を損なうほど過酷なものとなり、本人の
 『最善の利益』にかなわないケースとはどのような状態なのか、
 日本でも個別具体的な議論を積み重ねていく必要がある。
 ぎりぎりの選択として治療中止が許される余地はあると思うが、
 倫理委員会などの機能が不十分で、
 医師個人が判断せざるを得ないような状況では問題だ」

記事で取り上げられた淀川キリスト教病院では
治療中止に至る両親の話し合いにおいて、看護師やソーシャルワーカー
なども立ち会い、医療チームを組織して何度も
議論を重ねたそうです.

赤ちゃんと両親にとって最善の対応はなにか
結論は出ない問題です.

治療だけでなく、子供と両親、家族との触れ合いや
ぬくもりを最後まで大切にしながら
一緒にとことん悩み、議論を重ねていくしかないと思います.

a0055913_071228.gif

by yangt3 | 2006-08-04 00:07 | ニュース