もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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看護も医療も手間ひまをかけないと

医学部を卒業して新人研修医として
病院に入職した頃(ずっと昔のことですが).
上司である指導医の先生がまず
私たち研修医にいわれたことがあります.

「君たちは、技術は、まだ未熟なのだから
 患者さんのもとを頻回に訪問して
 じっくりと話を聞くように」

「そのためには、1日3回は
 入院受け持ちの患者さんのもとを
 訪問するようにしなさい」

未熟な新人でも患者さんのために
なにかできることがあると教えられたのです.

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「朝、病院に来たらまず患者さんの
 ところに顔を出す事」
「昼は、検査結果や治療経過などを
 説明に患者さんのところに行く」
「夕方、病院から帰る前に
 もう一度、変わりないかどうか
 患者さんのところに行きなさい」

上司の言われるように
技術も、知識もまだまだ未熟であった
研修医の私たちは、せっせと
患者さんの元を訪れたものです.

研修医を卒業してかなりの年数が経過した今も
この上司の教えが今も耳に残っています.

医療や看護は、省略や能率とは
無縁のことがあると思います.
1分でも1秒でもより多く、より長く
手間ひまをかける必要があると痛感しています.

看護士さんの仕事も同じです.
こんな研究があります.

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-------------American Journal of Nursing 2006;106(9):744-753.
看護師が頻繁に巡回することによってナースコールの使用が減少

この研究の結論としては
「1時間または2時間ごとの巡回プロトコールによって、
患者の満足度も高まり、安全性の指標である転倒回数も減少した」
ということになります

 看護師が規則正しく1時間または2時間ごとに
 巡回することによって、安全性および患者の満足度が
 高まるだけでなく、患者のナースコールの使用を
 減らすのに役立つ可能性があるという知見が明らかになった.

 Alliance for Health Care Research
 (フロリダ州ガルフ・ブリーズ)の常務理事である
 Christine M. Meade, PhDらが行った研究では、
 ナースコールがどのくらいの頻度で使用されているか、
 および1または2時間ごとに看護師が巡回することによって
 ナースコールの使用量が減少するかどうかを
 明らかにすることを試みた.
 研究者らは、患者の満足度および安全性の指標である
 転倒回数に対する、頻繁な看護師の
 巡回の影響についても評価した.

 Meade博士によると、巡回のやり方は病院によって
 大きく異なり、病院の方針に基づいて決定されるという.
 看護師の話によると、
 「巡回は良くても場当たり的に行われる」のが普通であり、
 通常、薬剤の投与のような時間の決まった患者との
 やり取りに合わせて、または患者の要求に応じて行われるという.

 6週間の試験に、全米14病院の27の看護病棟が参加した.
 これらの病棟のうち、15病棟には1または2時間ごとの巡回
 (病院が決定)を導入し、残りの12病棟を対照群とした.

 1時間ごとの巡回では、看護師の巡回を午前6時から
 午後10時の間は1時間に1回、午後10時から午前6時の間は
 2時間に1回実施すると定めた.
 あるいは、24時間を通して2時間ごとに1回という、
 2時間ごとの巡回を病院が選択することも可能であった.
 最初の2週間に「ベースライン」の状態を評価し、
 第2-6週に1または2時間ごとの巡回プロトコールを使用した.

 巡回中、看護スタッフは、12項目の指示一覧表を含む
 予め定められたプロトコールに従った.
 それには、患者の疼痛レベルの確認、排泄介助、電話機、
 TVのリモコン、ゴミ箱、および水などを
 患者の手の届く所に置くこと、1または2時間以内に
 (プロトコールに従って)また戻ってくることが含まれた.

 1時間ごとの巡回でも2時間ごとの巡回でも、
 患者のナースコールの使用が減り、
 看護に対する満足度が高まり、転倒が減少した.

 1時間ごと(P=0.007)および2時間ごとの(P=0.06)
 巡回条件におけるナースコールの使用の有意な減少が、
 3つの期間すべてにわたり、最も主要な理由の
 カテゴリーにおいて観察された.
 例えば、「重大な医学的懸念」によるナースコールは、
 2週間のベースライン期間中には4,527回であったが、
 1時間ごとの巡回を開始した後、
 第3-4週には3,398回、第5-6週には2,986回となった.

 さらに、1時間ごとおよび2時間ごとの両方の
 巡回群において、100ポイントスケールで測定した
 患者の満足度のスコアが有意に上昇し、
 1時間ごとの巡回群のみで有意差が認められたが
 患者の転倒回数が有意に減少した(P=0.01).

 報告によると、看護師らは当初、
 より集中的な巡回を誰が行うのかと懸念していた.
 しかし試験終了時には、看護師らは、
 患者の看護をしたり、その他の仕事をするために
 より多くの時間を費やしたことについて、
 より大きな満足感を抱いていた.

 これらの結果の説明として、
 患者は、入院中に十分なチェックを受けているとは
 思っていない.1時間ごとの巡回では、
 患者がスタッフと定期的に接触することができるため、
 患者の必要が満たされるからだと考えられます.

 しかし、巡回プロトコールを作成し、
 コンプライアンスを高め、巡回を成し遂げるのに
 必要なチームワークを強化するには、
 強力な看護マネージャを要したことも明らかになった.
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たとえば、患者がトイレを使用する必要があり
そこまで行くのに介助を要する場合、
多くの患者は自分一人でやろうとし、
結果として転倒する可能性が高くなります.

看護士さんが巡回の頻度を高めることによって
こうした患者さんの自己転倒などの自己を
未然に防ぐことも可能になります.

患者さんが自己転倒したり、点滴自己抜去、
挿管チューブの自己抜去など医療事故に繋がりかねない
行動も巡回の頻度を高めることで
未然に防ぐ事ができます.

最悪の場合、医療事故に繋がりかねない
さまざまな患者さんのイベントも
物事が起こる前に看護という手を加える事によって
患者さんの満足も得られるばかりか
看護士さんのプロとしてのプライドも
保つ事ができると思います.

集中治療室のような非常に濃厚な看護や医療が
必要とされる空間では、少数の受け持ち患者さんに
ある程度まで時間と手間ひまをかけて
看護を行う事ができます.
またそういう勤務体制やチームを病院や
看護のトップが組まなければなりません.

集中治療室以外の、実際の普通の病院の病棟では
特に夜勤の看護士さんの業務量は膨大なものです.
日勤でさえ、押し寄せる業務に
ゆっくりとカルテに記録する暇さえ無いほどです.
ましてや夜勤ともなれば
少ない看護スタッフで多くの患者さんのケアを
行わなければなりません.

現場の看護師さんの気持ちとしては、
この研究にあるように
もっともっと一人ひとりの患者さんに
時間と手間ひまをかけて看護したいと
そう思っているはずです.

患者さん一人ひとりのニーズも様々なものがあり
頻回にナースコールを慣らす人.
不安から誰かにずっとそばにいて欲しいという人.
夜間になると不穏行動や徘徊となる人.
急変する可能性のある人.
などなど様々なレベルのケアを必要とする
患者さんたちを、少ない看護スタッフの人数で
事故がないように、患者さんの安全と健康を
守る為に、努力しないといけないのです.

さらには、一晩の夜勤を共にするスタッフも
同じ医療レベルに習熟しているとは限りません.
もしかしたら新兵もいるかもしれません.
いろいろな理由から、動かなければならない時に
必要な業務をこなせないスタッフもいます.
場合によっては、いわゆる「できる」看護師さんが
一人で責任と業務を背負う事さえあります.

医師の当直業務以上に
看護師さんの夜勤業務は、本当に
すさまじく大変です.

とにかく医療と看護は人手を惜しまず
手間ひまをかけることが本当に大事なことです.

病院のスタッフ一人ひとりが
自分の技術やコミュニケーション能力などを
高めて行く努力ももちろん必要です.
ただ個人個人の努力も、やはり限界があります.

この研究にも触れられているように
患者ケアをうまく進める為には
看護ケアをマネージする人(つまり現場の看護師長)が
現場指揮官としての役割を
きちんと果たしてもらうことが大切です.

医師の世界も同様です.
一人ひとりの医師の努力には限界があります.
病院として、組織としての機能を最大限に果し
患者さんのケアをより良いものにするために
現場の人間と、病院のリーダーが
自分のやるべき事を、きちんと行うことが必要だと思います.

前回の記事で組織を阻害する空気について
紹介しました.

ぜひ皆さんの力で病院を良くする空気を
そして良好な対人関係、部下ー上司関係
医師ー看護師関係、医療スタッフー患者関係を
築いて行きたいと思います.

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by yangt3 | 2006-09-11 00:06 | 一般