もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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医学の勉強は難しい...知識を知恵にするために

最近の医療の進歩はすごいもので
ちょっと専門を離れると、細かいことまで
わからなくなります.

自分の専門分野だけでも毎日、膨大な量の
参考文献がだされ、それをカバーするだけで
精一杯です.

医学のあらゆる事を網羅するのは実際のところ
難しいですね.

仕事に役に立つ 臨床現場に行かす事のできる
勉強法というのがあれば、本当に助かります.

医学の勉強は難しい...知識を知恵にするために_a0055913_024764.gif





北杜夫先生の どくとるマンボウ青春記のなかに
胸鎖乳突筋という筋肉の話があります.

ムスクルスステルノクライドマストイデウス
というのですが
高校生出会った私は、この本を読んでいるうちに
この筋肉の名前を覚えてしまいました.

その後、学生の解剖学で
いろいろな筋肉の名前をラテン語や英語で
覚えたのですが
いつも、北さんの本で覚えたこの言葉が
まるで呪文のように口からでてきます.

どくとるマンボウ風にいえば
かように学問というのは、難しいものなのである.
というところですね.

北杜夫先生の本も、私が医学部をめざす前に
読みふけったものです.
(この話は、また別の機会に)

医学の勉強は難しい...知識を知恵にするために_a0055913_032175.gif


学生時代には、もっぱら教科書を読んでの
勉強が主でした.
余談ですが医学の教科書というのが
またこれがすごく高価で、1万円台のものがざらでした.
定期的に改訂され、新しい内容が追加されたりするため
先輩の古い教科書では、役に立たないことも多く
自分で新しい教科書を購入することになります.
書籍代だけでも、ばかになりませんでした.

一番記憶に残っているのは
有名な解剖学の教科書である、グレイ解剖学(Gray's Anatomy)
この本がやたらと大きく、分厚く、字も細かくて
どうしようもない代物でした.しかも高価!
分厚くて、毎日講義にもっていくのも大変でした.

医学の勉強は難しい...知識を知恵にするために_a0055913_041765.gif


本当にこの洋書を読んで、勉強している学友もいましたが
私を含めて普通の人は、日本語の教科書を追加して
購入して勉強していました.

今でも、この分厚いグレイの教科書は、夢にでてくるほどです(笑)

余談ですが、このグレイの解剖学の教科書は、順調に改訂をかさね
いまでは、E-edithion版がでていて、CD-ROMが2枚付属して
マルチメディア対応でネット対応もしているそうです.
時代はかわりました.今の教科書なら、もう少し
解剖学の勉強をしたかもしれません(笑)

医学部の同級生100人のなかには
凄くできる人が何人かはいて
講義は、全て一番前でしっかりと聴き
講義ノートもしっかり取っていました.
(試験の時にはお世話になりました(笑))

教科書も、日本語だけでなく英語で書かれた
有名な教科書も読破していたりしていました.
たとえば内科であればハリソン内科学書
外科であればシュワルツの外科学など、分厚い洋書とか
読んでいて、凡人たる私なんかは
ただただ恐れ入ってしまったものです.

小難しい教科書を最初から最後まで読みこなすなんて
自分の性格にはあわないし
ましてや、洋書となると大変ですから.

そういうごく普通の医学生だったので
もっぱら皆が使っている普通の医学書で
勉強しました.

ごく普通に医学部で勉強した私ですが
卒業して、こうして医療の現場で
曲がりなりにも仕事を続けています.

頭の性能もごく普通のCPUですし
それほど努力家というわけでもないのですが
なんとかやって来ました.

研修医となって、いきなり救急や、病棟の現場に
放り込まれて、とにかくなにか処置をしたり
なにか指示をだしたり、とにかくなにか
反応しなければならない、そんな状況に追い込まれました.
そんな実際の仕事に直面すると
教科書で読んだことは、全て吹っ飛んでしまいます.

例えていえば、大事な人に会う前に
あれこれいろいろ会話を考えていても
いざその人の前に立つと、頭が真っ白になって
自分でなにをいっているかわからない
そんな感じでしょうか.

教科書や、テストにでるような項目が
すらすらと口に出せても
実際の目の前の患者さんに、適切な指示を出すというのは
また別の知識というか度胸が必要でした.

幸いに、教科書を始めから終わりまで隅々まで
読破して覚えるというような
几帳面で緻密な頭脳を私は持ち合わせていませんでした.

現場の仕事に役に立つ知識をどうやって私が
手に入れたかというと
「わかっている人に聞く」ということでした.

つまり現場に必要な知識は、大学や学校で
先生になるための知識ではなくて
臨床の現場で、患者のケアや治療に役に立つ
知恵なんです.

教科書に書いてある知識が
先輩や上司の頭の中で沢山の経験によって味付けされて
熟成されたものが、この知恵なのです.

教科書読むより、よっぽど先輩や上司に聞いたほうが
早いし、ためになったわけです.

教科書は、取れたての若いぶどう酒のようなもの.
先輩や上司の知恵は、何年もの長い間
しっかりと熟成された芳醇なワインのようなもの.

よい職場、よい病院というものは、
こうしたスタッフの中に、しっかりと知恵が根づいて
熟成されていることではないでしょうか.

いまさらながら
研修医の時に、上司から口をすっぱくして
言われた言葉を思いだします.
「患者さんが教科書なんだ」
「本を読んでいる暇があったら、患者さんのところに
いってこい!」

いまなら、さしずめ
「こんなブログ書いている暇があったら
患者さんのところにいってこい!」って
上司に怒られてしまうかもしれません(笑)

病院のスタッフとして、現場に立った以上は
それぞれが、医療のプロとしての自覚を
持たなければいけません.

そして仕事中は、できるだけ、患者さんの側に立ち
書類やカルテ、教科書に向かう時間は
へらすべきです.

現場の仕事は、学生のころのように
テストで良い点を取るとか、資格をとるとか
研究のためとかではありません.
あくまで第一の目標は、患者さんに良くなってもらうことです.

まだまだ私も修業がたらなくて
底の浅い知識ばっかりですが
少しでも知恵を増やせるように微力を尽くしたいと
考えています.

患者さんのために働くことが
一番の勉強法になるなんて
医療の仕事って素晴らしいと思いませんか?

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by yangt3 | 2006-09-12 00:05