もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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家族が納得する医療

大学病院や大きな病院では
最先端医療が行われています.

ガンや重症の病気に対しても
現時点で可能な様々な治療法が行われます.

延命治療の問題が大きく議論される中で
特に治癒が臨めない終末期の患者さんに対して
どのように医療を行って行くか
いつも頭を悩ましています.

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------------------YOMIURI ONLINE 2006.9.26
家族の納得医師の務め
(以下記事より引用)

 新潟・長岡市街から車で約1時間、田んぼの中に立つ
 小国(おぐに)診療所。2人いる常勤医の1人、
 山本高史さん(58)が赴任してきたのは、
 2002年7月だった。

 東京女子医大病院や米国の大学病院で、
 最先端の心臓カテーテル治療をしてきた山本さんは、
 お年寄りたちの「死(し)に様(ざま)」に衝撃を受けた。

 2004年8月、「足が痛い」と息子に連れられてきた
 米岡チヨさん(93)は、足の動脈が詰まり、
 壊死(えし)しかけていた。設備の整った病院に入院し、
 足の切断などの治療を受けるよう勧めたが、
 チヨさんは「家に帰る」と譲らない。

 「入院しないと、すぐ死んじゃうぞ」。
 息子がそう諭しても、「それなら、なおありがたい」と
 平然としたものなのだ。

 往診すると、壊死が進んで、ひざ下が黒ずみ、
 衰弱してもいた。だが、家族に囲まれたチヨさんには
 笑顔があった。足の処置をしての帰り際、
 拝むように手を合わせ、丁寧にお礼を言われる。
 最後は高熱が続き、痛みなど苦痛を取る処置をした。
 チヨさんは半月後、静かに息を引き取った。

 小国では、治癒が望めない終末期の患者を診る時は、
 家族に「治療を望まれますか」と聞くのが流儀だ。
 入院患者でも回復が難しいことが分かると、
 家族と“あうんの呼吸”で栄養補給を打ち切っていく。

 大学や東京の病院で当然のようにしてきた延命治療は、
 逆に死の苦しみを長くしているのではないか。
 山本さんは思い悩んだ。
 (中略)
 「よく生きたもんね」と、最期を迎えようとしている人の
 人生をたたえ、静かに、自然に、家族全員が
 納得できるよう努めることが小国の医師の仕事。
 「不安なら、夜でも日曜日でも駆けつけるよ」と言っても、
 実際に家族から深夜に電話がかかることは少ない。

 週1日、東京の病院に出張勤務する山本さん。
 都会と小国を往復しながら「国民が小国の人たちのような
 死を迎えるには、手厚い介護支援や、24時間体制で往診、
 訪問看護する環境整備が必要だ。
 国は、病院から在宅医療への転換を進めているが、
 単に医療費を削減する目的ではうまくいかない」と言う。
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私が循環器科医師として東可児の地で
診療を初めて、この記事の山本先生と
同様の体験があります.

高齢者で重症の狭心症があり、カテーテル検査や治療が
必要と判断.しかし本人は、検査を希望されず
とりあえず薬だけくださいと、入院も拒否された方.
幸いにこの方は、なんとか内服治療のみで
症状がコントロールされています.

さらには、洞不全症候群や房室ブロックなどで
高度の徐脈が出現し、できるだけ早く
ペースメーカーの植え込みが必要な高齢者の方々.
何人か、検査でこうした徐脈と診断し
はやくペースメーカーを入れないと
大変なことになるとというと
みんなに迷惑はかけられんからなあと入院を拒否.
あげくには、先生、なんとか薬で直してくれと
無理なお願いをして来ました.
家族に同席してもらって説得しても
ペースメーカーは入れなくてよいの一点張りです.

アロテックと呼ばれるβ刺激剤を投与し
外来通院されている高齢者の方がいます.

循環器を専門とするものにとって
カテーテルをせず、ペースメーカーをいれずに
こうした患者さんを診ていくのは
ある意味おおきなカルチャーショックでもあります.

どんなに医療が進歩しても
死というもの、老衰死というものを消す事はできません.
地域の中で年老いていくのと同じように
死というものを当たり前に捉えているお年寄の方々に
逆に自分の未熟さを感じさせられています.

医療の仕事は、病気を直すことはもちろんですが
いわゆる不治の病や老衰で迎える死に対しては
家族や本人が納得することをして行かないとだめなのです.

入院を制限して医療費を削減するための在宅医療では
本末転倒かもしれません.

病で残り少なくなった現世での時間を
本人、家族が納得する形をつくるために
介護スタッフ、在宅スタッフ、訪問看護、病院スタッフ
いろいろな専門職の智慧を
いまこそ集める時だと思います.

私自身にも年老いた母が遠く離れた土地で
一人暮らしをしています.
医療者であり、家族でもある普通の人間として
これからも悩んで行くと思います.

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by yangt3 | 2006-09-28 00:12 | 一般