もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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狭心症、心筋梗塞とメタボリックシンドロームに 積極的に スタチンを

最近、メタボリックシンドロームへの
関心が高まっています.

メタボリックシンドロームのある患者さんは
狭心症、心筋梗塞などの循環器系の疾患の
リスクが高くなる事も知られています.

こうした状況に、積極的なスタチン治療で
コレステロールを低下させると
心臓のリスクを減少させることが
わかってきました.

日本では、まだまだ不十分な高脂血症や
メタボリックシンドロームの治療を
もっと進めて行く必要があります.

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-------------Lancet 2006.09.05.
Lancet. Published online September 5, 2006.

ー高用量スタチンは冠動脈性心疾患と
 メタボリックシンドロームがある患者に有益ー

カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部
Prakash Deedwania, MD

 TNT試験(Treating to New Targets)は
 リピドール 80 mg の高容量を使用して
 積極的なLDLコレステロール降下療法の効果を
 みる試験です.
 (通常、リピドールは1日10mgの使用)

 1)バックグラウンド;冠動脈性心疾患(CHD)と
  メタボリックシンドロームがある患者は
  CHDのみの患者に比べて、主要循環器系イベントの
  リスクが高いが、そのリスクは集中的脂質降下療法により
  標準的スタチン療法よりも有意に大きく減少することを
  明らかにしようとした試験です.
 
 2)目的;この試験は特にメタボリックシンドローム患者に注目し
  この患者群はリスクが高いかどうか、そのリスクは
  メタボリックシンドロームを持たないTNT被験者群に比べ
  実際に大きいのかどうかを判定することが目的です.
 
  次に、これらメタボリックシンドローム患者に
  積極的低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール降下療法を行うと、
  LDL値をおよそ100 mg/dLに下げるだけの治療に比べて、
  得られるベネフィットが同等ないしはそれ以上であるかどうか.

 3)方法;TNT試験は14カ国からの患者10,001例を対象にした
  平行群試験であり、患者をランダム化して高用量または
  低用量のアトルバスタチンによる治療を二重盲検下で行った.
  患者は、年齢が35歳から75歳で、
  臨床的に明らかなCHDがある男女である.
  心筋梗塞の既往がある、明白な動脈硬化性CHDを伴う
  狭心症が過去にまたは現在ある、
  冠動脈血行再建術を受けたことがある、
  のいずれかがあればCHDだと判定した.
  今回の解析の対象になったのは、
  TNTコホートのうち、特にメタボリックシンドロームがある者で、
  コホート全体の55%以上にあたる5584例が対象であった.

 4)結果;中央値4.9年の追跡において、
  メタボリックシンドロームがある患者のなかで
  主要エンドポイントが現われたのは、
  80 mgのアトルバスタチンで治療した群では262例(9.5%)、
  10 mgのアトルバスタチンで治療した群では
  367例(13%)であった.
  このデータは、集中スタチン療法で治療した患者は
  主要循環器系イベントのリスクが29%減少すると解釈できる.
  二次エンドポイントも高用量アトルバスタチンのほうが
  有利であり、集団全体で一貫していたが、
  全死亡に関しては
  二つの治療法に有意差はなかった.
  スクリーニング時に糖尿病にはなっていなかった
  メタボリックシンドローム患者では、
  80 mgのアトルバスタチン治療によって
  主要循環器系リスクが30%減少した.
 
 10 mgのアトルバスタチンで治療した患者群全体を
 解析すると、メタボリックシンドロームの要素が
 ひとつ増えるごとに主要循環器系リスクが増大したが、
 80 mgのアトルバスタチンで治療した群は、
 そのリスクの増え方が鈍かった.

 メタボリックシンドロームの要素を3つ以上持つ患者は、
 集中的LDL降下療法によるリスクの減り方が、
 メタボリックシンドロームを持たない患者や
 保有する要素の数が3未満である患者よりも大きかった.

 メタボリックシンドロームの要素は相加的であり、
 要素の集積は相加的であるということだ.
 リスク因子が多ければ死亡率が高くなると言ってよい.
 
 すなわち、安定CHD患者のうち
 メタボリックシンドロームまたは糖尿病がある患者に
 積極的治療を集中すれば、治療に必要な回数を
 顕著に減少させられる.
 それによって高用量スタチンの費用効果が顕著に改善される.

 TNT試験の結果は、脂質の値を
 現行のガイドラインで示されている値よりも低くすることの
 根拠となるものである.
 糖尿病またはメタボリックシンドロームなど
 リスクが高まっている患者においては、
 高容量のスタチン(80 mg リピトール)を用いた
 積極的な治療が必要だということです.

----------------------------------------------------------------------- 
 メタボリックシンドロームが
 循環器疾患のリスクを高めることは、よく知られています.

 冠動脈疾患を持たない患者においても
 もし患者にメタボリックシンドロームがあるならば、
 心臓イベントのリスクは有意に大きくなります.

 メタボリックシンドロームの個々のデータについていえば
 ・高比重リポ蛋白質(HDL)値が低い
 ・高血圧を合併
 ・トリグリセリド値が150 mg/dL超
 ・空腹時血糖値が100 mg/dL以上
 ・肥満指数が28 kg/m2以上
 のいずれかが当てはまる患者は
 主要な循環器系リスクが有意に増大します..

実際の臨床の場において、このような基準を満たす方は
けっこう沢山いらっしゃいます.

今回のデータを参考にすれば、
高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドロームに対して
かなり早期からの治療介入が必要であり
かつ有用であることは明らかです.

循環器を担当する医師はメタボリックシンドロームを
必ずチェックいたします.

チェックすることで心臓病の高リスク集団を
特定することができます.
日本の現状では、この試験のように
80mg もの高容量のリピトールを投与することは
保険診療の面から困難な状況です.

しかし、冠動脈疾患、虚血性心疾患などの
リスクのある方、
メタボリックシンドロームのある患者においては
早期にスタチンを用いた薬剤投与を行う事により
リスクを低下させることが可能になると思われます.

狭心症、心筋梗塞などで
ステント植え込み、カテーテル治療を
受けられた患者さんの方については、
やはり積極的にスタチンを用いた
高脂血症の治療、コレステロール、LDLの低下を
行う必要があります.
具体的には、パナルジン、アスピリンの治療に合わせて
今回の試験のように、リピトールなどの薬剤を
内服することで、リスクを減少させることができます.

日本での薬剤投与は、保険診療の関係で
欧米の大規模試験の通りにはいかないのですが
できるかぎりの範囲で
こうした臨床試験の結果を
実地臨床に取り入れていって
患者の皆さんの役に立つように心がけたいと思います.

高脂血症治療に関する情報提供サイトができました
こちらです↓↓

LIPID NET
http://www.lipid.ne.jp/lipidnet/index2.html

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by yangt3 | 2006-09-29 12:09 | ニュース