もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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心筋梗塞のミクロのダメージ

心筋梗塞は、心臓に栄養や酸素を送る
冠動脈が閉塞して発症する疾患です.

冠動脈の血流の途絶から心臓、心筋細胞への
血流が途絶える結果
心臓の細胞(心筋細胞)が酸欠状態で
壊れてしまいます(壊死と呼ぶ).

こうした心臓、心筋細胞の壊死が
心不全やショックを起こしたり
さまざまな致死的な不整脈の原因になったりします.

今回、心筋梗塞で実際に心筋細胞の壊死する様子を
動物実験で撮影した研究成果が発表されました.

a0055913_13544931.gif





-----------asahi.com. 2006.09.27
心筋細胞の壊死はまだら模様 ラットで撮影 京大助手
http://www.asahi.com/science/news/OSK200609270043.html

 心筋梗塞のように血流が途絶えたa0055913_13553750.gif
 ラットの心臓の細胞が壊死する様子の
 画像撮影に京都大の赤尾昌治助手
 (循環器内科学)らが成功した。
 細胞の死は一斉ではなく、
 ばらばらで画像はまだら模様だった。
 不整脈のメカニズム解明や
 心筋保護薬開発などに
 役立てたいという。
 米医学誌「サーキュレーション」
 電子版に発表した。

 赤尾さんらは、細胞を壊さず
 組織の奥深くまで届く
 赤外線領域のレーザー光をあてる
 特殊な顕微鏡を使い、心筋細胞の
 エネルギーを作り出している
 細胞内小器官のミトコンドリアを
 色素で光らせ、細胞が
 ダメージを受ける様子を撮影した。

 生きた心臓をラットから取り出し、
 血流を止めた場合、30分間の停止後に
 血流を再開した場合など
 条件を変えて1時間観察した。

 その結果、血流を止めた心臓では 
  一部の細胞が歯が欠けるように
 死に始めたが、死は隣接する細胞まで
 広がらなかった。
 まだら模様に細胞死を起こした
 心筋細胞間の連絡のばらつきが、
 心筋梗塞時の不整脈の原因となっている
 可能性を示すという。
 また、血流を再開した場合も
 血流停止時と同様の細胞死が急速に進み、
 心臓発作後などの血流再開が
 心筋にダメージを与えるとの指摘を裏付けた。
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心筋梗塞で壊死に陥った心筋細胞の量を判断するのは
臨床的には、血液検査で心筋逸脱酵素というものを
調べます
CPK、GOT、LDHなどという項目についてです.
おおまかには、これらの血液検査が心筋梗塞後に
上昇すればするほどに、心筋壊死の程度が
大きいということになります.
ただし定量的ではありません.

心筋梗塞で壊死に陥った心筋細胞の分布を知るには、
まず冠動脈造影で閉塞した冠動脈の位置を
知ることにより、ある程度
壊死の危険がある心筋細胞の位置がわかります.

たとえば、左前下行枝という血管のどの部位で
閉塞していたか.冠動脈の根元に近いほど
血液潅流が阻害、途絶する領域は広大となり
心筋壊死もひどくなります.
左冠動脈の根元(左主幹部)では
ショック、突然死など致死的な梗塞を来します.

急性期には、心臓エコー検査で左室の壁運動を
見る事で、心筋壊死の状態をある程度、判断します.
カテーテル治療やステント植え込みにて
早期に冠動脈の閉塞を治療すれば、
壁運動の低下が進行せず、つまり心筋細胞の壊死を
防いだということになります.

今回のこの研究では、生体内で、細胞を壊さずに
細胞内活動の基本的な構造であるミトコンドリアを
直接色素で可視化して観察したことが活気的です.

血流が途絶し、酸素不足状態になり
ミトコンドリアが障害を受けると、細胞死
心筋壊死、心筋梗塞となるわけです.

ミトコンドリアの活動をみるのは理にかなっています.

マクロの画像で予想される心筋梗塞とは違い
実際の生体観察実験では、心筋細胞の壊死は
まだら模様になっているというのが
興味深いと思います.

記事にもあるように、こうした心筋細胞間の
Gap構造が阻害されることが不整脈の原因になるかもしれないことは
多いにうなずけることです.

また冠動脈の血流を再開した場合も血流停止時と
同様に心筋細胞死が急速に進むというもの
今回の知見で注目するべき点です.

脳梗塞などの場合は、発症から時間がたった場合
血栓溶解療法を行う事によって
急速な脳血流の再開によって破綻した脳血管から
出血をまねき、出血性脳梗塞を起こす事が知られています.
脳梗塞に出血を合併した場合、しばしば致死的な
状況になることがあります.
従って、脳血管領域においては、脳血管の血栓を溶かす治療に
ついては、厳密な基準が儲けられています.

心筋梗塞については、できるだけ
閉塞した冠動脈は、カテーテル治療やステント植え込みにて
開くというのが基本です.

今回のこの動物実験によって
冠動脈血流の再開がかえって心臓にダメージを与える期間が
より明らかにあるとよいと思います.

こういう研究の成果をみると
フリーラジカルスカベンジャーとして
脳梗塞に使用されているラジカットという薬剤も
心臓でも同様に、虚血による障害を防ぐ為に
有効な気がしています.

実際、日本では、保険適応にはなっておりませんが
同じく脳梗塞の治療薬剤であるノバスタン
(合成トロンビン阻害剤)という薬剤も
欧米では、心筋梗塞の治療に用いられています.

まだまだ心筋梗塞については、こうした
基礎的分野でも、研究するべきことが沢山あり興味深いです.

a0055913_1358840.gif

by yangt3 | 2006-10-02 13:56 | ニュース