もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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直らない傷「慢性創傷」への取り組み

足や指にできた傷が何カ月も治らない
状態を「慢性創傷」と呼びます.

そのままにしていると組織の腐敗が進み、
最悪の場合はその部位の切断に至ることも
多い重要な問題です.

糖尿病や動脈硬化に伴う血行障害、
寝たきり生活での褥瘡(じょくそう)(床ずれ)
などが原因となります.

治療には多面的なケアが必要で、
医師、看護師を含めた様々な専門職の
協力による適切な処置が
必要となります.

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-----------神戸新聞Web 2006.11.10
治らない傷「慢性創傷」 悪化で足切断の恐れ
専門医チーム持つ施設で治療を
http://www.kobe-np.co.jp/kurashi/kaigo430.html

直らない傷「慢性創傷」への取り組み_a0055913_024074.gif


 創傷とはすり傷や切り傷、やけどなどの
 傷一般を指す.
 傷は通常、血小板が出血を止める
 ▽血液を通じて負傷部位に栄養や酸素が送り込まれる
 ▽皮下組織や皮膚が回復する—という過程で
 治癒していく.
 ところが慢性創傷だと血液の流れが悪いことが
 多いので、傷口がなかなかふさがらない上、
 十分な栄養が届かない.
 そのため数カ月たっても治らず、
 進行すると腐敗して潰瘍や壊疽になり、
 最悪の場合は切断に至る.

 血流を悪くする原因には、動脈や静脈の血行障害、
 糖尿病、褥瘡などがある。患者は高齢者が多いが、
 疾患によれば四十、五十代でも
 発生する可能性があるという.

 糖尿病では国が二〇〇二年にまとめた実態調査で、
 治療中の患者の1・6%が「足壊疽の合併症がある」
 と回答.糖尿病を治療中の患者数は約三百七十四万人と
 推計されているから、足壊疽がある糖尿病患者は
 約六万人いる計算になる.
 (中略)
 指や足の切断は患者のQOL(生活の質)を
 大きく損なう.米国では切断を悲観して自殺した人もいる.
 「現在はできる限り保存して治療するという考えが
 世界的な傾向」.
 米国では複数の専門医によるチーム医療が主流となっている.
(後略)

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このように足の創傷も大切な医療上の問題です.
こうした怖い足の慢性創傷の原因として
重要なものが閉塞性動脈硬化症(ASO)と
呼ばれるものです.
糖尿病、高血圧、喫煙などの動脈硬化の危険因子が
同様に、この足の動脈硬化を悪化させる
原因となります.

特に糖尿病の方は、1.5〜11.5%の方が
なんらかの下肢、足の動脈硬化を持つとも
報告されています.
糖尿病を放置すれば、当然
足の動脈硬化も悪化します.
(心臓病、狭心症も同様です)

基本的には、下肢への動脈供給が不足し
酸素供給が低下することが様々な症状を
引き起こします.

何らかの治療をしない限り
動脈硬化による症状は進行し
下肢の潰瘍形成、壊死を引き起こすことになります.

下肢の動脈硬化の最終目標としては
下肢の切断を防ぐということになります.

慢性閉塞性動脈硬化症の患者さんの予後は
放置すれば非常に予後が不良です.

米国での調査によると
5年生存率は70%で、進行大腸ガン並です.
進行乳がんよりも不良な予後です.
死亡の原因としては、心筋梗塞、脳梗塞など
心血管系の合併症がほとんどを占めるそうです.

さらに慢性閉塞性動脈硬化症のために
下肢切断に至った症例でも
手術後の死亡率は、下肢切断(BK)で3〜10%
大腿動脈切断(UK)で20%となっています.

切除後2年生存率は70%であり
再度の下肢切除率は、なんと40%となっています.

結局のところ、症状の軽いうちに
できるだけ早く手術やカテーテル治療などを
行うことが、一番需要であると思います.

不幸にして、下肢切断を余儀なくされた場合でも
その後も、リスクは持続しており
より一層の総合的なケアと
下肢血行再建の可能性を考慮して行く必要があります.

昨今、この慢性閉塞性動脈硬化症の治療への
関心が高まっています.
心臓病のカテーテル治療の技術をもった
循環器科医師達が続々と
この領域への治療に参加しています.

上述のように下肢の動脈硬化も
カテーテルの技術を用いて
心臓と同様に、バルーン拡張、ステント植え込み
などの治療が可能になります.

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さらには、血管外科医師によるバイパス手術の
進歩も著しいものがあります.

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あとはいかに早く専門医の診断をうけ
いかに早く適切な治療を行うかにかかっています.

最近では、全国のいくつかの病院で
創傷ケアセンターが開設されてきています.
専門的なケアセンターが開設されて
創傷ケアプログラムが行われています.

こちらはそんな創傷ケアプログラムを提供している
ミレニアという会社のページです.

 ミレニア
 http://www.millennia-corporation.jp/

こうした創傷ケアセンターを立ち上げた
医療機関を紹介します.
 
 日本赤十字社医療センター 創傷ケアセンター
 http://www.med.jrc.or.jp/hospital/sousyo.html#syorei

東可児病院では、透析患者さんも多く、
また糖尿病の患者さんも数多くおられます.
残念なことに、かなり進んだ慢性閉塞性動脈硬化症の
患者さんも沢山おられます.

循環器科医としての立場として
これからできるだけ積極的に
下肢末梢の動脈硬化の診断、治療を
行って行きたいと考えています.

当院で透析を受けておられる患者さんには
特に積極的に下肢の動脈硬化の
診断、治療を行いたいと思います.
合わせてもちろん心臓、脳血管の
診断、治療も必要です.

症状の軽いうちであれば、
適切なカテーテル治療も可能になります.

看護師さんや、パラメディカルスタッフにも
こうした下肢、足の創傷ケアにぜひ興味を持っていただき
東可児病院でも創傷ケアセンターが
立ち上げられるように
ぜひ一緒に頑張っていただきたいと思います.

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by yangt3 | 2006-11-16 00:05 | カテーテルの話題