もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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高脂血症の治療は生涯続けると有利

狭心症、心筋梗塞などの心臓病や
脳卒中などの動脈硬化疾患、血管疾患は
コレステロール(特にLDLコレステロール)を
下げると、こうした病気の頻度が
減少することがわかっています.

急性期の治療はもちろんのこと
将来の動脈硬化疾患、血管疾患の予防のために
スタチンを投与してコレステロールを
下げる必要があります.

さらには、スタチンを生涯継続使用することにより
生涯の血管リスクが減少し
生涯にわたり有用な結果が得られると
されています.

心臓病で循環器に通院されている方は
できるだけスタチンを飲んで
コレステロールを下げることが
とても大切なことだと思います.




今回こうした生涯にわたる
スタチン投与の有用性を実証し分析した
研究成果が発表されました.
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「Lifetime cost effectiveness of simvastatin
in a range of risk groups and age groups
derived from a randomised trial of 20 536 people」
スタチンの生涯投与の費用対効果分析

British Medical Journal(BMJ) 2006.12.2

 英オクスフォード大学などが参加した
 心疾患予防共同研究グループ
(Heart Protection Study Collaborative Group)の
 研究者たちは今回、Heart Protection Studyの
 5年間の結果を利用して、血管系疾患リスクと
 年齢がそれぞれ異なる様々な患者が40mg/日の
 シンバスタチンを生涯使用した場合の、
 獲得生存年当たりの医療費(1年余命獲得費用)を
 推定するマルコフモデルを作成した。

 基になった研究は英国内69病院で行われた。
 対象は、総コレステロール値が
 3.5mmol/L(135mg/dL)以上で、
 冠疾患、脳血管疾患その他の閉塞性動脈疾患、
 糖尿病の既往があるか、または高血圧治療を受けている
 男女2万539人(40〜80歳)。
 平均5年間、40mg/日のシンバスタチン
 または偽薬が投与された。

 費用計算に用いたのは、
 2005年4月時のシンバスタチンの
 ジェネリック品の価格(28日分で4.87ポンド)と、
 以下のイベントによる入院治療の費用。
 血管疾患による死(冠疾患、脳卒中、その他による)、
 非致死的だが重大な血管イベント
 (非致死的な心筋梗塞と脳卒中、動脈の血行再建術)、
 非致死的で重大ではない血管イベント
 (狭心症、心不全その他の血管疾患による入院)、
 血管疾患以外による死とした。
 今回は病院の外来と一般開業医の診察を受けた
 場合の費用は計算に入れなかった。入院費用と
 比べるとこれらは低額で、結論を変えるとは
 思えなかったため、と著者らは説明している。
 費用対効果は1年余命獲得費用で表した。

 ベースラインにおける重大な血管イベント
 (非致死的心筋梗塞または冠疾患死亡、
 あらゆる脳卒中、血行再建術)の5年リスクを算出した。
 リスクレベルを基に患者を並べて5等分したところ、
 それぞれのグループの5年リスクの平均は
 12%、18%、22%、28%、42%
 (リスク幅の12〜42%は、非致死的心筋梗塞
 または冠疾患死のリスクにすると4〜12%に相当)となった。
 5群の患者をさらにベースラインの年齢で分類
 (40〜49、50〜59、60〜69、70歳以上)、
 計20グループに分けた。

 これら20グループのそれぞれについて、
 服薬遵守が完全だと仮定として
 40mgシンバスタチンの服用を生涯継続することによる
 獲得生存年を求めた。
 最も短かったのは70歳以上(最も高齢のグループ)で
 5年リスク12%(リスクは最小)の患者。
 獲得生存年は0.64(95%信頼区間0.31-0.98)。
 最も長かったのは40-49歳(最も若いグループ)で
 5年リスク42%(リスク最大)の患者で、
 2.49年(0.55-3.36)。
 また、40-49歳(最も若いグループ)で
 5年リスクが12%(リスクは最小)の場合は
 1.67年(0.84-2.47)で、
 獲得生存年は年齢の上昇、5年リスクの低下と共に減少した。

 次に年3.5%の割引率で生涯医療費を計算したところ、
 すべてのグループで血管イベント減少に基づく
 入院費用の減少が認められた。
 ジェネリック品の価格を用いてスタチン生涯投与の
 1年余命獲得費用を求めたところ、19グループで、
 1年余命獲得費用はマイナスの値(-70から-1010ポンド)、
 すなわち、費用を削減できることが示された。
 例外は、70歳以上で5年リスクが12%の群で、
 1年余命獲得費用が80ポンドとプラスの値になった。

 より血管リスクが低い
 (5年リスクが5%、これは非致死的心筋梗塞または
 冠疾患死のリスクが1%に相当)、より若い(35歳)、
 または高齢(85歳)のグループにも結果を外挿したところ、
 こうした患者にも費用削減効果は見られた。
 また、1年余命獲得費用が最も高額になった、
 85歳で5年リスク5%の患者でも、
 その金額は2500ポンド弱で、広範な患者に対し、
 生涯にわたるスタチン投与の費用対効果が
 良好であることが示された。

 英国では現在、重大な血管イベントの10年リスクが
 20%以上の患者に対するスタチン投与が推奨されている。
 今回の結果は、既存のジェネリック品を使用した場合、
 現行のガイドラインよりさらに広い範囲の集団への
 投与を考慮すべきであることを示唆した。
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高脂血症、高コレステロール血症の治療薬である
スタチンについては、現在
さまざまなデータが次々と出されています.

こと循環器の領域においては
アスピリン、バイアスピリンと並んで
非常に有用かつ必要な薬になっています.

通常、狭心症や心筋梗塞などで病院で
ステント植えこみのカテーテル治療を行った
患者さんにおいては、
パナルジン、バイアスピリンと並んで
高脂血症の治療薬であるスタチンも
同時に処方されることが多いです.

今回のこうしたデータをみれば
心臓病の患者さんにおいては
可能な限りスタチンは一生涯継続して
服用することが大切だということです.

コストの安い今話題の
安価なジェネリック品でも
同様に動脈硬化疾患、血管疾患のリスクを下げることが
わかっています.

ただしスタチンにも様々な種類があり
第一世代のスタチンから今は様々な改良型
作用を強くしたものなどが出ています.
ジェネリックかどうかが問題ではなく
薬理学的に薬剤的に
どのような薬効(薬の強さ)であるかが
生涯にわたる効果に、関係してくると思います.

やみくもにジェネリックにこだわるのではなく
やはり薬の効果について
担当医や薬剤師によく話を聞いていただくことが
大切です.

心臓病のリスクがある方においては
スタチンの投与を器本的に行っていますが
血圧も正常、高脂血症もなく
心臓病の症状のない、いわゆる健康な方々に
スタチンを投与することが意義があるかどうか.
こうした場合の予防効果がどうなのか
このあたりについては、まだ結論が出ていません.

スタチンの投与は積極的に行う必要がありますが
投与の判断は、やはり受け持ちの先生に
まかせることになります.
by yangt3 | 2007-01-17 00:34 | ニュース