もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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スタチンの生物学的効果

高脂血症の治療薬であるスタチンにより
冠動脈疾患のリスクの軽減、予防効果が
すでにいろいろな研究で
明らかにされています.

狭心症、心筋梗塞で治療を受けた方は、
特にこのスタチンを服用することにより
多くの恩恵を受けることになります.

現在、このスタチンで注目されているのは
不安定プラークの安定化作用です.
近々、頚動脈の不安定プラークへの
強力なスタチン投与の研究の結果が
明らかになる予定です.

このようにスタチンは、さまざまな面で
循環器にとって重要な薬です.

その新たな生物学的効果が明らかになりました.

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-----------Lancet, Jan. 13, 2007; vol 369: pp 107-114.
Telomere length predicts heart disease risk
「白血球遺伝子のテロメアの長さが冠動脈疾患の
 予測因子となる」

 染色体末端にあるDNA配列(テロメア)は、
 体細胞が複製されるたびに短くなります.
 テロメアが短くなり過ぎたとき、その細胞は
 死滅することになります.

 細胞生物学の知識ですが
 テロメアは、染色体DNAの最端末にあり
 「TTAGGG」という塩基配列の
 タンデムの繰り返しが基本です.
 
 テロメアの機能的な意義については
 研究中ですが、細胞分裂とともに
 このテロメアの短縮が起こるとされています.

 いわば寿命の遺伝子ということになります.
 
 現在の科学では、この過程が加齢に
 直接関係していると考えられているが、
 テロメアが短縮する速さは人によって異なる。
 つまり、これは人の暦年齢(誕生後の経年数)と
 生物学的年齢(テロメアの短縮から計測した年齢)とが
 異なることを意味しています.   

 今回の研究では、高脂血症の治療薬である
 スタチンが、この遺伝子のテロメア構造の
 安定化に関わっているということが
 示唆されました.   

 スタチン系の脂質低下薬Pravacholは、
 テロメアが短い人の心疾患リスクを
 劇的に低下させる効果を認めました.

 しかし、最もテロメアが長い人の
 心疾患リスクに対してはほとんど効果が
 みられませんでした.
----------------------------------------------------------------
臨床で幅広く使われているスタチンという薬は
従来のコレステロール低下作用だけでなく
さまざまな生物学的作用が
報告されています.

今期待されているのは
不安定プラークを安定化させる作用です.

つまり放置しておけば
急性心筋梗塞や急性冠動脈症候群を引き起こす可能性のある
冠動脈の病変のプラークの治療.
もしくは、脳梗塞の原因となる頚動脈の不安定なプラークの
治療などに、坑血小板薬と合わせて
スタチンを投与することによって
プラークが安定化し、プラーク破綻をおこす
リスクを軽減させるということです.

スタチンの長期投薬により
今回紹介した遺伝子テロメア構造への作用によって
寿命がのびる可能性もありますね.

逆にいえば、スタチンという道具(ツール)を
用いることで、これまでわかっていなかった
多くのことや、心臓、血管、血栓などの
様々なメカニズムがまた
解明されていくことになると思います.
                      
スタチンを含めて、様々な薬剤で
細胞制御による治療が進んでい区でしょう.

この細胞寿命を司るテロメアを
制御することで
長寿の薬、不老不死の薬といったものが
開発される糸口になるかもしれません.

人類にとって不老不死というものが
どういった意味をもつかは、また別の問題ですが.
SF的ですらありますね.                                        

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by yangt3 | 2007-01-22 02:28 | ニュース