もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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ガンと心臓病の関係

循環器に通われる患者さんも
最近のステントやカテーテル治療の
進歩に伴い、以前に比べると
症状の再発も少なくなり
頻回のカテーテル検査も少なくなりました.

以前であれば、カテーテル治療のあとも
ステントの再狭窄によって
頻回カテーテル治療を余儀なくされ
あげくのはて症状が進んだ後にバイパス手術となる
狭心症の患者さんも少なくはありませんでした.

現在では、薬剤溶出ステントや治療の進歩により
かなり成績は良くなっています.

長期予後が改善した分、循環器科に通う
患者さんの次なる心配は、心臓以外で
やはりガンの発生です.
心臓病とガンの関係はどうなっているのでしょうか.

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--------------YOMIURI ONLINE 2007.03.05
がん抑制の「善玉」遺伝子、心不全では「悪玉」演じる
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070305i308.htm

 心不全の発症に、がんの発生や増殖を抑える遺伝子が
 深くかかわっていることが、千葉大医学部循環器内科の
 小室一成教授らの研究でわかった。

 がんを抑える「善玉」の遺伝子が、心臓では意外にも
 「悪玉」を演じていた形で、新たな治療法や予防薬の開発に
 つながりそうな研究成果だ。
 英科学誌ネイチャー電子版に5日掲載された。

 重症の高血圧や心臓弁膜症、心筋梗塞などを起こした患者の
 心臓は、全身に血液を送り出すポンプ機能が低下する。
 心臓は十分な機能を果たそうと肥大化し、最後は心不全を起こす。

 問題の遺伝子は「p53」。
 低酸素状態などで心臓の細胞の遺伝子が傷つくと、
 修復のため働き始める。

 研究チームは、マウスの大動脈を縛って血流を減らし、
 心臓の負担を増して心肥大を起こさせ、遺伝子の働きを調べた。

 肥大してもマウスの心臓は機能を維持していたが、
 2週間を過ぎ、心臓の細胞でp53が働き始めると、
 不十分な心機能を補うため増えていた微小血管の数が減少。
 ひどい低酸素状態に陥り、心不全になった。

 一方、遺伝子操作でp53を除去したマウスは、
 血管が増え続け、心機能は落ちなかった。

 p53は、損傷した遺伝子の修復のため、
 細胞分裂を停止させる役割を担う。
 心臓では、血管を作る働きを邪魔することを確認した。
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以前にも紹介したことがあると思いますが
コレステロールを内服治療で極端に下げすぎると
ガンが増えるのではないかという
報告があります.
大規模試験ではなく、小規模の報告で
その後の確認試験もないのですが
循環器科医師としても、ガンの問題は
今後考えていかなければならないと思います.

循環器に通われる患者さんについて
心臓の状態が安定していても
年齢とともに、がんの出現も予想され
年齢に応じた癌検診は当然必要です、

循環器という専門外来といえども
もし他の科にかからず、循環器だけに通っている
患者さんであれば、ガンを見逃したとあれば
非常につらいのです.

こうした理由から、循環器に通われている患者さんには
循環器以外の癌検診も
積極的に行うべく
外来などでお話させていただいています.

今回の記事は、ガンと心臓の不思議な関係の
一部を解き明かしたものです.

p53遺伝子は
ガンの抑制遺伝子として注目を浴びています.
ガンの抑制のみならず老化、や細胞寿命にも
関わっていることが示唆されています.

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p53遺伝子の機能として報告されているのは
・損傷を受けたDNAの修復蛋白質の活性化
・細胞周期の制御
・DNAが修復不可能な損傷を受けた場合に、
 細胞の自殺であるアポトーシスを誘導
などです.
このp53遺伝子を癌細胞に導入することで
ガンの遺伝子治療が可能ではないかと期待され研究されています.

今回の研究で、ガンや老化のみならず
このp53遺伝子が、心臓や循環器の疾患に密接な
関係があることがわかりました.

ガンを専門に扱う医師と、循環器医師とは
普段あまり交流もなく
お互いの知識を交換する機会もないのですが
実は、細胞レベル、遺伝子レベルでは、こうして
p53という遺伝子が両方の病態に密接に関わっているというのは
とても興味深いことです.

今後の方向としては、心不全を予防しつつ
ガンの発生を抑えるようなp53の適切なコントロールが
可能なのかどうかということだと思います.

今後の研究に多いに期待したいものです.

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by yangt3 | 2007-03-07 16:43 | ニュース