もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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薬剤溶出ステント関連の NEJM 論文

The New England Journal of Medicine
(N Engl J Med 2007; 356 : 1020 - 9 : Original Article.)
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/xf2hm.htm

に薬剤溶出ステントに関する論文が
多数掲載されていました.

1)薬剤溶出ステントの無作為化臨床試験におけるステント血栓症

2)シロリムス溶出ステントとベアメタルステントを比較した
 14 件の試験の解析

3)シロリムス溶出冠動脈ステントと
 パクリタキセル溶出冠動脈ステントの安全性と有効性

薬剤溶出ステントが現在の冠動脈カテーテル治療の中心ですが
おりしも薬剤溶出性ステントの遅発性のステント血栓症が議論
となっています.

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目標症例数1万5000症例に対し、2006年11月時点で
1万5216症例を集積しているそうです.

今回の発表は、このうち6816例を対象に解析したものです.
この臨床研究で推奨された抗血小板療法は、
アスピリン (81〜200mg/日) およびチクロピジン (200mg/日) でした.

さて日本人の薬剤溶出ステントの遅発性ステント血栓症に関する
データは以下のとおりです.

1)遅発性ステント血栓症の累積発症率は、
 30日時点が0.27%、1年時点が0.51%、2年時点が0.63%であった.

2)年率で見ると30日から1年目までは0.2%/年であった.

3)ロッテルダム試験では、30日が1.2%、1年目が1.7%、
 2年目が2.3%だったことを考えると、
 日本人の発生率が低いことが明らかであった.

 中川先生によれば、
「日本人の発生率が低いことは、
 日本での診療の質の高さを現しているのではないか」と指摘、
 また、「ベネフィットとリスクを考えるとベネフィットが
 勝っていると言えるだろう」などと考察しておられます.
(以上の記事は、日経メディカルオンラインより引用

 「DES留置後の遅発性ステント血栓症、日本人の発症率は低く」
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2007/200703/502736.html
 記事の閲覧には、登録が必要になります.)

この発表によれば
心配されていたステント植え込み後の血栓症は
日本では、欧米の半分であるということです.

薬剤溶出ステントの植え込みの際に
十分にステントを拡張することが血栓症の予防になることは
広く知られています.
日本では、かなりの施設で血管内超音波(IVUS)を併用した
きめ細やかな治療を行っており
ステントの拡張の具合は、IVUSで確認されています.

こうした事情が日本で血栓の発生率が少ない
原因の一つかもしれません.

実際に薬剤溶出ステントを植え込んだ患者さんで
種々の理由のために
坑血小板薬(バイアスピリン、パナルジン)を
中止しなければならない時
主治医である循環器の医者としては
けっこう緊張していたりします.

心の中では、いつステント血栓症が起きても対応できるようにと
考えていたりします.
幸いに私のつたない経験では、
薬剤の中止によりステント血栓症を起こした症例は
経験がありません.

薬剤溶出ステントの遅発性血栓症を
どうしたら防げるのかは、まだ研究の真っ最中です.

現場を預かる循環器医としては
再狭窄もなく、将来の血栓症もなく
薬剤の中止にても、血栓の心配がない
そんな夢のようなステントができればと思います.

ステント血栓症を予防するためには
ステント植え込み後に、冠動脈血管内皮がステントを
覆う必要がありますが
薬剤溶出ステントでは、この内皮化が遅れることが
知られています.

ステント植え込み手技によって
適度な内皮化(血栓を予防する程度の)を
計ることができれば一番よいわけです.

過度な内膜増殖(平滑筋細胞増殖)は
いわゆる再狭窄に繋がります.

薬剤溶出ステントにおいてもある程度の高圧拡張が
必要なのではないかと考えていますが
まだ結論は出ていません.

冠動脈ステントは、日本中で、世界中で
何百万人もの人たちに治療のために使用されています.

ステントにまつわる様々な合併症、
治療後に服用しなければならない薬剤の合併症などを
少しでも減らせるように
可能であれば予防できるように
まだまだ研究、改善の余地がありそうです.

薬剤溶出ステントについての話題は議論がつきませんが
国内で2番目の薬剤溶出ステントである
Taxus エクスプレスステントが
薬剤・食品衛生審議会で承認されたそうです.
 
【薬食審部会】カプセル内視鏡承認へ‐Taxusステントも
 http://www.yakuji.co.jp/entry2489.html

新しいTaxusステントが増えて
いろいろな臨床的な問題が解決するわけではなく
これからもさらなる努力が必要だと思います.
by yangt3 | 2007-03-24 00:07 | ニュース