もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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ファイヤーファイター

先の2001年9月11日の
同時多発テロで標的となった
ニューヨークの世界貿易センタービル.

崩壊しタビルに生き埋めになった2名の
警官が奇跡的な生還を果たしました.

その実話に基づいて制作された映画が
「ワールド・トレード・センター」です.

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この時には、多くの方々が犠牲になり
救護活動中の消防士も被害にあっています.

Wikipedia によれば確認できた数として
ニューヨーク市消防局消防士 343人
ニューヨーク市警察 23人
入ヨーク港湾管理委員会職員37人
とされており
圧倒的に消防士の被害が多かったことが伺われます.

日本でも米国でもかように
消防士(ファイアーファイター;Firefighter)の業務は
過酷であり、その身体的な影響も大きいのです.




米国の消防士の方々が
勤務時間中の心臓病のリスクが非常に高いという
論文があります.

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The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

米国の消防士における緊急業務と心疾患による死亡
Emergency Duties and Deaths from Heart Disease
among U.S. Firefighters

背 景
 米国の消防士において,勤務時間中に発生する
 死亡の 45%は心疾患によるものである.
 1994〜2004 年の勤務時間中の消防士における
 冠動脈性心疾患による死亡リスクを,
 業務別に調査した.

方 法
 1994〜2004 年における勤務時間中の全消防士の
 死亡例に関して,米国連邦危機管理庁
 (Federal Emergency Management Agency)から
 提供された概要を再検討した.2001 年 9 月 11 日の
 テロ攻撃に関連した死亡は除外した.
 市立の消防署 1 ヵ所,大都市圏の消防署 17 ヵ所,
 国のデータベースから,消防士がさまざまな業務を
 遂行するために費やした時間の推定比率を
 年ごとに算出した.各業務遂行中の冠動脈性心疾患による
 死亡のオッズ比と 95%信頼区間を,
 予測オッズに対する観察オッズの比から算出した.
 緊急以外の業務は基準カテゴリーとして算出した.

結 果
 冠動脈性心疾患による死亡は,消火活動
 (これらの死亡全体の 32.1%),出動警報への対応(13.4%),
 出動からの帰還(17.4%),身体的訓練への参加(12.5%),
 火災以外の緊急事態への対応(9.4%),
 緊急以外の業務の遂行(15.4%)と関連した.
 緊急以外の業務遂行中における冠動脈性心疾患による
 死亡のオッズと比較して,各業務のオッズ比は,
 消火活動中で 12.1〜136 倍,出動警報への対応中で
  2.8〜14.1 倍,出動からの帰還中で 2.2〜10.5 倍,
 身体的訓練中で 2.9〜6.6 倍であった.
 これらのオッズは,消防士が業務に費やした時間の
  3 つの推定比率を基準とした.

結 論
 緊急の消防業務の中には冠動脈性心疾患による
 死亡リスクと関連するものがあり,
 そのリスクは緊急以外の業務に関連するリスクに比べ
 顕著に高かった.リスクは消火活動に関連して
 もっとも高くなり,緊急以外の業務に関連する
 リスクの約 10〜100 倍であった.

こちらで原著(英語のほう)を
ネットで閲覧することができます↓↓
http://content.nejm.org/cgi/content/short/356/12/1207

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強いストレスが
心臓病や突然死のリスクになることは
うなずけることです.

今回の研究では、米国の研究ではありますが
日々ストレスやリスクにさらされている消防士の方々が
仕事のみならず、心臓病の発症のリスクに
さらされていることも明らかになりました.

おそらく日本でも同様なのではないでしょうか.

今回の研究は、消防士の方を中心にしたわけですが
救急救命士、警察官、自衛官など
同様に強いストレスにさらされる恐れのある
職業において
心臓病のリスクに気をつける必要があると思います.

現場での緊急事態によるストレスも大変です.
たとえば救急救命士の方々においては
病院外の心肺停止に対しプレホスピタルケアとして
AEDによる除細動、蘇生処置を
行わなければならず
そうした救命処置の中でさらに
搬送先の病院を探すというストレスもあります.

残念ながら今の日本の現状では
心肺停止、心筋梗塞、脳卒中、重症外傷など
3次救急の症例において
スムーズにシームレスにすぐに搬送できるという
ことのほうがまれかもしれません.

救急対応を中止する病院もニュースに上がっている状況で
心肺蘇生をしながら長い距離を搬送する場合もあります.

私も緊急の心臓外科手術を必要とする患者さんを
3次心臓外科施設に救急車に同乗して
搬送したことが何度もあります.

外科手術でしか患者を救命できない状況では
医師といえども、救急車内での搬送中は
非常に不安が強く強いストレスです.

このような救急搬送業務を続けている隊員の方の
苦労は本当に大変だろうと思います.

医療関係者の心臓病を含めたさまざまな
疾患の有病率はあまり調べられていません.
おそらくほとんどの医療関係者、医師、看護士が
燃え尽きるまで懸命に働くような
仕事熱心で、まじめな人たちばかりだからかもしれません.

自分も含めて
私たちの大切な仲間が心も心臓も
リスクにさらされているということを
再度認識する必要があります.

大切な命を守る人は
同じように自分たちの命も大切にしなければ
ならないということだと思います.

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by yangt3 | 2007-03-27 00:08 | ニュース