もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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救急の危機

全国の救急病院が減少しているそうです.

-------YOMIURI ONLINE 2007.03.29
減少する救急病院
深刻な勤務医不足 実情に沿った診療体制に
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070329ik06.htm

 全国の救急病院(救急告示施設)が
 過去5年間で約1割減少し、
 4644施設になっていることが
 読売新聞の調査で分かった。

 救急病院が1割も減ったという現象は、
 一見ショッキングに見える。しかし、
 数の変化だけにとらわれるべきではない。
 救急病院の内実は患者には見えにくく、
 看板倒れのような病院も放置されてきたからだ。
 今回の調査結果を、患者にも医師にも
 有益な体制づくりを進めるきっかけにすべきだろう。

救急医療は今、まさに危機に瀕しているといえます.

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(記事からの引用の続き)
 どうすればいいのか——。

 「地域の実情にあった救急システムの構築が急務だ。
 医師や機能の集約化は解決策の一つ」と、
 医療提供体制に詳しい東京医科歯科大大学院の
 川渕孝一教授(医療経済学)は指摘する。
 現在は各病院に医師が薄く広く配置されており、
 診療体制に余裕がない病院が多い。
 このため、拠点となる病院の医師数を増やし、
 1人にかかる当直などの負担を軽減するというものだ。

 川渕教授は「その際に不可欠なのが、
 病院勤務を離れた開業医の協力。例えば、
 午後10時までの時間帯を交代で担当するなど
 地域医療の担い手としての自覚を求めたい」と強調する。
 (中略)

 同時に、救急医療の質を向上させることも大切だ。
 そもそも、すべての救急病院が全診療科で
 24時間365日の体制をとってきたわけではない。
 厚生労働省の05年の統計では、救急体制がある
 全国約5450施設のうち、小児科で深夜の救急対応が
 「ほぼ毎日可能」なのはわずか16%、
 内科でも約50%に過ぎない。

 「高熱を出して救急病院に駆け込んだのに、
 当直医はアルバイトの研修医で、
 オロオロするばかりだった」
 「腕を複雑骨折して深夜に救急病院に運ばれたが、
 『ここでは手当てできない』と言われ、別の病院に移された」……。

 患者からの不安の声が根強いのは、
 不十分な救急体制を非常勤の当直医で
 やりくりしてきた結果とも言えよう。
 蘇生(そせい)や外傷を扱うための
 講習を受けたこともない医師が
 救急病院で当直しているような状況も改めるべきだ。

 システムづくりと質の向上は、
 救急医療を改善するための車の両輪。
 その認識を社会全体で共有したい。
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このように現在、救急医療をめぐっては
大きな問題を解決していかなければならないようです.

地域の実情にあった救急システムの構築とうのは
必要ですが、口で言うのは簡単
実現するのは、なかなか大変というところです.

救急業務を開業医の先生方にも分担して行うという方式も
けっこう大変なようです.
実際に開業医の先生方と救急の病診連携を
進めている掛川市と九州の大隅半島の鹿屋市の
記事が掲載されていました.
同じく読売の記事です.

--------------YOMIIURI ONLINE 2007.03.26
(4) 開業医に負担「病診連携」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070327ik09.htm

開業医が病診連携の一環として日曜祝祭日の
総合病院の診療時間外の軽症患者の診療を
対応している掛川市と鹿屋市の現状が報告されています.

たとえば掛川市では救急病院として
地元医師会が運営する掛川医療センターが
2時救急を担当し
軽症患者を開業医の先生方が分担して診療しているそうです.

---急病院が急患すべてに対応するには限界があるとして
 昨年10月、掛川市で掛川市立総合病院と開業医による
 新たな取り組みが始まった。病院と開業医や
 診療所の連携は「病診連携」と呼ばれる。
 勤務医不足で瀬戸際にある救急体制の
 立て直しのカギとされ、市内26医院の開業医が輪番で、
 総合病院の診療時間外に軽症者を診療するようになった。

 開業医側が総合病院に代わって軽症者を診療するのは
 平日夜間と日曜・祝日の昼間。病院はこの時間帯は
 軽症者を受け付けず、「高度な治療が必要」と
 判断された場合に病院が対応することにした。
 (中略)

理論上は、うまいシステムのような気がしますが
実際に動いているのは体力的に限界のある人間です.
この病診連携システムにも限界があることがわかってきたそうです.

-----九州の南端、大隅半島にある鹿児島県鹿屋市は、
 2001年に病診連携をいち早く導入し、
 成功例として全国に知られるようになっていた。
 しかし、開業医が「時間外診療」の予想以上の負担増に
 悲鳴をあげ始めたのだ。

 鹿屋市では開業医側が受け持つ平日の時間帯は
 「夜間」だけでなく「翌朝まで」。
 病院の通常の診療時間外のほぼすべての時間帯で
 軽症患者を担当する。新制度が定着するにつれ、
 当番開業医を深夜に訪れる人が増え、
 1日100人を超す医院も出始めた。

 「当番の日に当たると患者が次々と訪れ、
 仮眠も取れない。徹夜明けで翌朝の診療にも影響が出る」

 当番は月2回ほどだが、輪番から外してほしいと
 訴える開業医の声は切実だった。
 鹿屋市医師会で当番医制度を担当する小浜康彦副会長(50)は、
 「これ以上増えれば初期救急は破たんする」と訴える。
 (後略)
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実はこの大隅半島にあるとある民間総合病院には
私の知人が数人勤めています.
かの地の医療事情は、彼らから時折耳にしています.

地方での救急医療を維持するのは
本当に大変なことだと思います.

いろいろなシステムを考えたとしても
結局はそれをささえるのは、人間でありマンパワーです.

少数精鋭といえば、聞こえはよいわけですが
24時間、ほとんど仮眠もとれず
翌日も通常の診療を行わなければ成らないような
過酷な環境では、長い時間を支えられることは
当然無理だということは、誰が考えても
自明のことです.

全ての地方、ブロックに
24時間救急を行うための必要な人員配置が行われ
適切な施設や診療、治療設備も整備し
かつ病診連携システムも構築し
遠隔医療システムや、遠隔画像配信システムも完備し
かついま議論になっているドクターヘリも
全国を縦断して配備し即応可能なネットワークを
構築し、かつまた
ドクターヘリ同乗のための特別な訓練を受けた
ナースやスタッフやドクターを配備し
24時間、あらゆる分野の専門医が全ての地域、ブロックで
オンコール体制で即応可能にする.

まあ、ざっとみてこのような潤沢な体制を
構築することができれば
救急の問題は一挙に解決すると思います.

現実はそうではないですね.

今の医療現場では、
医師一人当直の病院も多く
たった一人の医師が絶望的な努力をもって
スーパーマンのように
専門外のことを、頑張って診療しているわけです.

医療の専門化、細分化が進み
また脳梗塞や急性心筋梗塞など超早期の
専門医による診療、治療が不可欠な救急疾患も多い中
専門外医師によるプライマリーケア的な対応だけでは
救急医療を支えることは困難だと思います.

現実問題としてあらゆる分野の専門医師を
24時間対応可能な体制を作ることは、
今の現状では、まず無理なようです.

私の周りの医師、看護師、医療スタッフは
本当に頭が下がるほど、懸命に努力し勉強しています.
これで努力が足らないとか、仕事をしていないと
非難されれば、結局燃え尽きてしまって
救急現場から数多くの有能な人材が立ち去ってしまって
救急はどんどん荒廃していくでしょう.

救急を維持するためには
理論よりも、美辞麗句でもなく
結局マンパワーを増やすしかないと思います.

私自身も月に数多くの当直をこなし
当直明けの翌日も夜遅くまで通常業務をこなし
かつまた夜間の緊急や呼び出しにも対応し
祝祭日のオンコールにも対応しています.

医療現場は、まだまだ絶対的に人が足りません.
命を支えるためには
人手と手間がかかると思います.

日本全国の善意と熱意に満ちた救急現場の医師たち、
医療スタッフたちが燃え尽きてしまう前に
なにか打開策が見いだせればと本当に思います.

関連するニュースとしては
1)75歳以上の高齢者医療に対しては
 複数の疾患を総合的に診察、診療できる医師を
 中心にして行う方針を
 社会保障審議会特別部会で原案として
 まとめたそうです.
 (高齢者医療「在宅」を重視
  社保審 地域の医師らチームでケア
  http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/
  kaigo_news/20070330ik02.htm )

2)厚生労働省が医師確保のために専門チームを
 3月9日に発足させたそうです.
 これは、全国を5ブロックにわけて
 ブロックごとに4人のグループを編成し
 各チームリーダーには企画官クラス
 サブリーダーには課長補佐クラスの人が
 任命されたそうです.
 厚生労働省は、この医師確保のプロジェクトのために
 約100億円の予算を確保しているそうです.

これからの展開に注目しておきましょう.
by yangt3 | 2007-04-02 08:48 | ニュース