もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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内服困難例にサイバネティック技術を

慢性疾患の治療において
よく頭を悩ませることは
せっかく処方した治療の薬を
さまざまな理由によって服用してくれないことです.

高齢者の方、認知症のある方は当然のこと
身近な介助者の手助けがなければ
きちんと薬を飲むことができず
治療に支障をきたします.

たとえば結核のような伝染性疾患の場合は
抗結核薬のきちんとした内服が必要であり
経口投与が困難な症例でも
様々な工夫をして、結核治療を継続する必要があります.

心臓病においても降圧剤や利尿剤などを
飲みわすれたり、正しい服用ができず飲み過ぎたりすれば
治療に支障を来すばかりか、思わぬ薬の合併症に
苦しむことになります.

歯に仕込まれたサイバネティック装置を使い
自動的に慢性病の患者に薬を飲ませてくれる
研究が行われています.

内服困難例にサイバネティック技術を_a0055913_954508.jpg





ITmedia News 2007.04.20
歯に仕込まれた「サイバーインプラント」、その目的は?
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/20/news045.html

 慢性病の患者に薬を飲ませてくれる
 「サイバー歯」は、薬の服用を覚えているのが
 難しい患者にとって、薬や注射の代わりになるかもしれない。
 欧州連合(EU)が資金拠出している
 Intellidrugプロジェクトでは、
 歯に取り付けて主治医のプログラムに従い薬の服用を管理する
 サイバネティック口腔装置の開発に当たっている。

 「アルツハイマー患者など、薬の服用を覚えていることが
 できない患者にとって初の、非常に重要な装置になるだろう」。
 テルアビブにあるAssuta Medical Centreで開発に携わる
 ベン・Z・ベイスキ氏はこう話す。

 「看護師が患者の所に行って服用を促すのではなく、
 それを装置が自動的にやってくれるようになる」とベイスキ氏。

 喘息の発作を抑える薬を服用している患者、
 特に夜間の発作に苦しんでいる患者にとっても、
 このやり方は理想的だと同氏は言う。

 「このソフトは、自分が望むどんな時間にでも
 薬の服用をプログラムできる」

 薬品の服用時間、患者の年齢、体重、病歴といった情報を、
 医師がリモートコントロールでプログラムすることも可能だ。

 装置は患者の歯に接着またはクラウンとしてかぶせるか、
 インプラントとして口腔内に固定する。

 服用時間になると、装置のパネルが開いて
 プログラムされた量の薬が患者の口の奥に流し込まれ、
 体内に送られる。

 このやり方にはデメリットも幾つかある。
 体内に異物が置かれると感染症を起こしやすくなる。
 また、この装置に対応できない薬品もある。

 この口腔装置は、一部のカプセルや注射と並び、
 副作用を抑えるために化学物質を徐々に投与する
 「徐放型」の薬品投与方式となる。

 薬理学・内服薬システムを専門とするハーバード大学の
 ヨラン・アルシュラー教授は次のように解説する。
 「徐放型方式は優れている。ただ、化学的に
 徐放用のパッケージや調合ができない薬品もある」

 例えばアルコールは1時間足らずで人体に吸収されると同教授。

 ベイスキ氏によると、この装置ではほとんどの薬で
 数週間分の量を入れておくことができ、
 複数の種類の薬を服用させることも可能だという。

 薬がいつ空になり、補充が必要かという情報は、
 別の場所にある受信装置に伝送される。

 ベイスキ氏と歯科医で内服薬の専門家でもある
 同僚のアンディ・ウルフ氏は、欧州の科学者とともに、
 3カ月以内に臨床試験を行う計画だ。3年以内に
 この装置を売り出したい意向だという。

 数カ月前にはブタを使ってこの装置の実験に成功。
 投与された薬品がブタの血液から検出され、
 均等に薬品が行き渡っていたとベイスキ氏。

 同氏によると、患者が誤って装置を飲み込んでしまう
 可能性も考慮されている。

 「薬品そのものを一種の保護的構造の中に収めることにした。
 (この装置を)飲み込んでしまった場合でも、
 薬品が持続的に放出され、患者にとって危険はない」(同氏)

 Assutaは、国外の病院との共同研究も行っている民間病院。
 まだこの製品をどのように販売するかを決める段階には
 至っておらず、臨床実験を待っている段階だ。
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この記事に書かれてあるように
認知症の方、アルツハイマー患者など
たしかに薬の服用を覚えていない人や
飲み過ぎたりする患者さんにとっては、この装置(デバイス)は
有用なように思われます.

高齢化社会を迎える日本もこうした問題に
取り組んでいく必要がありそうです.
理想は、介護のマンパワーを増やすことでしょうが
それがかなわないのであれば、こうした方法で
内服治療の徹底をはかるということでしょうか.

実際に臨床現場に利用できるようになるまでは
まだまだ時間がかかりそうですし
こうした口腔内服装置の費用を
誰が負担するのかという問題もあり
まだまだ先の長い話です.

病院において治療薬の内服指導、内服管理
治療薬の副作用の管理などなど
薬にまつわる仕事は非常に膨大です.

最近では外来患者さんの内服処方は
院外薬局で行う病院も増えていますが
病院の入院患者さんへの服薬管理、内服管理は
常勤の薬剤師さんたちが選任で行っています.

まだまだいろいろな意味で
人の手に頼らなければ成らない部分が多いですし
それが医療現場なのだと思います.

今回の自動的に内服を可能にするサイバー歯の
アイデアが、将来どのように現場に生かされていくか
楽しみに待っていたいと思います.
by yangt3 | 2007-04-22 00:24 | ニュース