もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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手紙 ー N.K さんを悼んで ー

話題の映画 「手紙」を
やっとDVDで観る事ができました.

手紙

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東野 圭吾 原作
山田 孝之、玉山 鉄二、江尻エリカ、吹石 一恵 出演.

ー弟の大学の学費のために盗みに入った邸宅で、
 誤って女性を殺してしまった兄の剛志.
 千葉の刑務所に服役中の彼の唯一の支えが
 弟の直貴から来る手紙であった.

 しかし、兄が受刑者というだけで、差別され、
 仕事も転々とし、恋人にもふられ、
 夢さえ打ち砕かれてきた弟の直貴.
 兄を思いながらも、その存在の大きさ、
 罪の大きさに彼は押しつぶされそうになる.
 そんな彼が所帯を持った.
 守らなければならない妻、子どものために、
 弟の直貴はある決心をしたー

続きはぜひ実際の作品を見ていただきたいと思います.
私のお気に入りの曲の一つである
小田和正の「言葉にできない」がBGMに流れて
心に染み入りました.




携帯やメールが主となった今でも
やはり昔ながらの手書きの手紙を
もらったりすると、本当にうれしいものです.

私自身もこれまでにたくさんの手紙を書き
そしてたくさんの手紙をもらいました.

子供の頃は、友達との年賀状のやりとり.
ずっと友達でいようね、なんてたわいもないけれど
大切な手紙とか.

中学、高校の頃は、
決して投函されることのなかった恋文とか.

医学部への大学受験で勉強に明け暮れた
高三時代でしたが、それでも卒業の際には
卒業を惜しむ下級生からのささやかな手紙を
もらったりしました.

文集も、ちょっと違うかも知れませんが
未来への自分たちへの手紙といえるかもしれません.

これまでの長い時間を、いつも支えた家族、そして母.
改めて思えば、一番大切な家族には
あまり手紙を書いた事はありませんね.

あまりにも身近すぎて、いつも満ちあふれているために
それがいかに、かけがいのないものであるか
無くなってしまうなんてことが
想像さえできずに.(想像もしたくないというべきか).

映画「手紙」で流れた小田和正の手紙のように
本当に大切でかけがいのない人たちとは
言葉にできない大事な思いがあります.

本当に大切なことは
言葉にするとこぼれ落ちてしまいそうです.

それでも言葉にしなければ伝わらない事もあるし
うつろいゆく、かけがいのない
なにものかを、手紙という形で
永遠にすることができるのかもしれません.

長く医療の仕事を続けていると
うれしい手紙、悲しい手紙
様々な形で患者さん、そして家族の方々から
様々な手紙を頂きます.

研修医の時に受け持った急性心筋梗塞の患者さんからは
いまでも変わらずに、毎年近況を伝える
年賀状を頂いています.

治療に関わった患者さんたちの元気な便りを聞くのは
本当にうれしいものです.

治療の甲斐なく、心ならず亡くなられた患者さんたち.
大切な人を亡くした家族の方々の
その後の暮らしも気掛かりだったりします.

たとえばご夫婦で通院されていた患者さんたち.
連れ合いに突然先立たれて
途方にくれながら、自分の病気のために
通院を続けるおじいちゃんやおばあちゃんたち.

もしくは一人息子を失って
気力を無くしてしまったおばあちゃん.

私たち医療者が病院の中にとどまって
こうした悲しみにくれた患者さんを
ひたすら待っているだけのスタンスでは
定期的に訪れる 悲しみにくれた人たちを
ただ慰める事くらい位しかできません.

もっとさらにできることはないのかと
思ってみたりします.

私が10年来、外来、入院を含めて
ずっと診療していたKさんが
長い闘病生活の末に、先日亡くなられました.

様々な病魔をこつこつと療養に取り組んできて
入院、通院を続けながら
元気に過ごされていた方です.

今回、病気の進行とともに、体調をくずし
長い入院生活となりました.

懸命の治療にも関わらず
今度だけは、病気を乗り越える事ができませんでした.
本当に残念です.

早すぎる死、予想しない突然の死に直面して
ただ途方にくれるばかりです.

我が師の突然の訃報にもしばらくなにも手に付かない
毎日が続きました.

思い出だけを残して
手紙も残さずに旅立っていた人たち.

せめて私たちのいろいろな思いを
若くして、惜しまれて亡くなられた人たちに
手紙として、文字として残していきたいのです.

亡くなられた我が師に対しては
師の思いを現世に残すためのDVDを作り上げました.

そんな折り、亡くなられたKさんの奥様が
先日わざわざ病院にまで来られて
手紙を届けていただきました.

その手紙は、奥様のご主人に対する
深い深い愛情と悲しみに満ちていました.

なにかもっとしてあげる事ができなかったのか
という悔恨ににた気持ちは、私も共有するところです.

その中でKさんのお子さんが
悲しみにくれるお母さんを慰める言葉が
本当に素晴らしいのです.

「私はお父さんとお母さんを選らんで
この家に生まれてきたのだから」

「この世でよい行いをした人は
もう充分だと早く天に召されるんだよ」

こんな大切な家族を残して
旅立っていかなければならない Kさんの
無念さを思うと、本当に胸が詰まりそうです.

「あなたに会えて 本当によかった.
 うれしくて うれしくて
 言葉にできない」

言葉にすれば陳腐かもしれませんが
本当の悲しみを体験した人にしか
わからない真実もあるのだと思います.

私は、まだなんとしても現世にとどまって
これまで見送ってきた数多くの方々のことを
忘れずにこの身体に刻みつけ
私自身の為すべき天命を
これからも果たしていきたいと思います.

そして私も人の親として
我が子供たちに、誇りに思ってもらえるような
父親でありたいと
N.Kさんを思い出しながら
そう強く思っています.

改めて N.Kさんに
心からご冥福をお祈り申し上げます.

(記事の一部に貴重な
 お手紙の一部を引用させていただきました
 N.Kさんの大好きだった
 飛行機の写真を贈りたいと思います)

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by yangt3 | 2007-06-04 00:02 | 一般