もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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WAVE Study

動脈硬化によるアテローム性末梢動脈疾患(PAD)は
高齢化とともに、増加しています.

当院では、開院当初に脳神経外科を中心として
始められた病院であることもあり
脳梗塞、脳出血などの脳卒中患者さんが多いのが
特徴です.

長期通院されている方も多く
パナルジン、バイアスピリンなどの坑血小板薬や
ワーファリンなどの経口抗凝固療法などの治療を
すでに受けられていることも多いです.

脳卒中、心筋梗塞などの疾患の動脈硬化リスクは
末梢動脈疾患と同様であり
坑血小板薬、坑凝固療法などの治療により
そのリスクを減らせると期待されています.

一方で、高齢者へのこうした坑血小板療法や経口抗凝固療法は
出血のリスクや出血性潰瘍などのリスクを
増加させることも懸念されます.

今回、NEJMにWAVE 研究の結果が報告されました.

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The New England Journal of Medicine
経口抗凝固療法,抗血小板療法,および末梢動脈疾患

Oral Anticoagulant and Antiplatelet Therapy and Peripheral Arterial Disease
The WAVE Trial Investigators

N Engl J Med 2007; 357 : 217 - 27 : Original Article.
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/xf2hm.htm

背 景
アテローム性末梢動脈疾患は,心筋梗塞,脳卒中,心血管系の原因による
死亡のリスク増加と関連している.
このリスクは抗血小板薬によって低下するが,
末梢動脈疾患患者の心血管合併症予防における
経口抗凝固薬の役割は明らかにされていない.

方 法
末梢動脈疾患患者を,
抗血小板薬+経口抗凝固薬の併用療法(目標国際標準比 [INR] 2.0〜3.0)と,
抗血小板療法単独のいずれかに割り付けた.
第一の共通主要転帰は,心筋梗塞,脳卒中,心血管系の原因による死亡とし,
第二の共通主要転帰は,心筋梗塞,脳卒中,緊急処置を要する末梢動脈
あるいは冠動脈の重度の虚血,心血管系の原因による死亡とした.

結 果
計 2,161 例の患者を治療に無作為に割り付けた.
平均追跡調査期間は 35 ヵ月であった.
心筋梗塞,脳卒中,心血管系の原因による死亡は,
併用療法群の患者 1,080 例中 132 例(12.2%)と,
抗血小板療法単独群の患者 1,081 例中 144 例(13.3%)に発生した
(相対リスク 0.92,95%信頼区間 [CI] 0.73〜1.16,P=0.48).
心筋梗塞,脳卒中,重度の虚血,心血管系の原因による死亡は,
併用療法群の患者 172 例(15.9%)と,
抗血小板療法単独群の患者 188 例(17.4%)に発生した
(相対リスク 0.91,95% CI 0.74〜1.12,P=0.37).
また,生命にかかわる出血が,併用療法群の患者 43 例(4.0%)と,
抗血小板療法単独群の患者 13 例(1.2%)で生じた
(相対リスク 3.41,95% CI 1.84〜6.35,P<0.001).

結 論
末梢動脈疾患患者に対する経口抗凝固療法+抗血小板療法の併用には,
重大な心血管合併症の予防において抗血小板療法単独にまさる効果はなく,
生命にかかわる出血の増加がみられた.
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この文献の記事にあるように
末梢動脈疾患の患者においては、心臓病、脳卒中などの
心血管イベントのリスクの増加を認めます.

下肢末梢 慢性閉塞性動脈硬化症、いわゆるASOと呼ばれる
病気で病院に通院している患者、もしくは入院となった患者さんたち.

下肢の痛みやしびれ、間欠性跛行などの症状に対しては
もしくは、CT、エコー、MRなどの検査、ABIと呼ばれる検査などを
行い適切な指導が選択されます.
項血小板薬などの内服治療は、ほとんどの患者さんに
施行されますが、可能な限り
閉塞もしくは狭窄した末梢動脈に対して
血腔再検が試みられます.

具体的には、下肢のバイパス手術であったり
カテーテルを用いた、バルーン拡張、ステント植え込みなどを
積極的に行って治療を行います.

首尾よくこうした末梢動脈の治療がうまくいっても
この記事にあるように、心血管イベントの抑制を
今後考えていく必要があるということです.

特に心房細動を持った方においては、
注意が必要です.

この目的のために適切な治療はどのようなものか.
これを検討したのが今回の WAVE 研究です.

WAVE 研究とは
The Warfarin Antiplatelet Vascular Evaluation (WAVE) trial
の頭文字を略したものです.

つまりワーファリンなどの坑凝固療法を行う事が
果たして心血管イベントの抑制につながるかどうかを
調べようとしたのです.

ちなみに、循環器科領域では、
狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患のステント後の治療や
疾患の予防のためには
パナルジン、バイアスピリンなどの坑血小板療法が
主体で行われます.

ワーファリンなどの抗凝固療法は、心房細動が合併している時に
行われます.

今回のWAVE研究の結論でみると
「末梢動脈疾患患者に対する経口抗凝固療法+抗血小板療法の併用には,
 重大な心血管合併症の予防において抗血小板療法単独にまさる効果はなく,
 生命にかかわる出血の増加がみられた.」
となっています.

心房細動を併発しない限りは、やはり
バイアスピリン、パナルジンなどの坑血小板薬を
しっかりと行っていく事が重要であるということだと思います.

実際には、WAVE研究の結果を参考にしつつ
個々の患者さんの状況に応じて
きめ細やかに内服を調整することに成ります.

それにしてもカテーテルなどの最新の技術の研究だけでなく
以前から行われている標準的な治療をも
こうしてきちんと検討していく研究者たちの
姿勢を見習いたいと思います.

ワーファリンに関しては
エーザイの情報ページが参考になります.

エーザイーワーファリン
http://www2.eisai.co.jp/essential/wf/abst/japanese.html

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by yangt3 | 2007-07-24 07:35 | ニュース