もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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生物と無生物のあいだ

苦労して勉強してやっと医学部にはいって
やる気で満ちあふれた医学部学生を
満ち受けているのはいわゆる教養と呼ばれる講義です.

一般の大学生と同様に、語学があり、さまざまな
医学の専門以外の講義があり
今から思うと、ずいぶん大らかな2年間の教育機関でした.

そんな私たちを迎えたのは
分子生物学;Molecular Biologyでした.

解剖学、組織学も、病理学も従来のマクロの肉眼的、
顕微鏡的な観察に留まらず
電子顕微鏡をもとにした新しい知見や分子生物学的な話が
これから医学を学ぼうとする私たちの心に
ヒットしたのです.

生物と無生物のあいだ_a0055913_834193.jpg





まだまだスライドや教科書での講義など
いわゆる階段教室での座学が主であったので
まるでミステリを読み解くような
最新の分子生物学は、本当に面白かったのです.

医学部入学後3年目(いわゆる専門1年目)となると
医学部学生として、もう後戻りはできないんだという
決定的な印を残す解剖学実習が待っており
専門課程となってからは、臨床医としての
勉強が否応なく主体となっていくのでした.

医学部1〜2年目は、教養課程といわれて
医学専門課程の勉強もあまりなく
医学部といっても、ほとんど医学的な知識も技術もなく
ちょうどあの「ヒポクラテスたち」の有名な冒頭のシーンのように
救急車が来ても、そっと逃げ出すような感じでした.

解剖学実習という「儀式」を済ませる前は
一般学生と同じ感覚でした.

DNAもRNAもセントラルドグマも
分子生物学もCellも
非常に興味深い勉強対象でした.

医学部の最初の2年はそういうわけで
大学の図書室などにでかけて
いろいろ本を読みあさりました.

とはいえ、その頃でも医学部に入学した学生の大半は
医学部卒業後に臨床医として社会に出ていました.
基礎医学つまりはこうした分子生物学などの
基礎医学教室の分野に進む学生は
本当に少なかったのです.
学生にとっては、臨床医になる前に
基礎医学を学ぶということが
モラトリウムだったのかもしれません.

生物と無生物のあいだ(講談社現代新書)
福岡 伸一 著

生物と無生物のあいだ_a0055913_834548.gif


昔だったらブルーバックスとかで良く出ていたような
内容です.
こうした科学ミステリーを久しぶりに
読んだ気がします.

中身は、最近の分子生物学の進歩をもとに
生命科学の歴史をわかりやすく解説した内容になっています.
学生時代に有名なワトソンの「二重らせん」を読んで
なんとなく研究の面白さや、研究者として名を成す事の
大変さを感じていました.

久しぶりに学生時代の頃に戻った気分で
一学生として、楽しく生命科学のレビューができました.

体験学習というか、現場主義というか
目の前に実際に見たり聞いたり体験したことに
人間というものは興味を抱くものです.

教養学生時代は、こうした基礎医学や生命科学の
基本的な研究者たちの現場に触れて
よい経験だったと思います.

臨床実習が始まって、現場に出てからは
やっぱり臨床一筋だったわけですが
この本を読んで、医学基礎研究の話に
今でも興味があるということに今さらながら気付きました.

忙しい仕事にかまけて
ついすぐに仕事に役に立つような本というように
ちょっと短絡的な読書が多い今日この頃ですが
全然畑違いの、読み物を読む事は
けっこう楽しめると思います.

大学1年のころは
高木貞二の 解析概論だとか
西田幾多郎の 善の研究だとか
とりあえず手当たり次第に、いろいろな書物をあさっていたものです.

また学生時代を思い出して
少しずつ読書の幅を拡げてみたいと思います.

面白い本があったら
ぜひ皆さん教えてください!
分野は問いません.

生物と無生物のあいだ_a0055913_8353885.gif

by yangt3 | 2007-07-25 08:35 | 皆さんに紹介したい本