もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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肥満とネットワーク

外来や病棟でいろいろな患者さんと
そのご家族に接する機会が多いです.

本当に親子というのは、良く似ていると思います.
見た目だけでなく、ちょっとしたしぐさや
話しぶりさえ、そっくりであったりします.

家族、血縁の関係だけでなく
尊敬する人に対しては、いつしか一挙一動、話し方に至るまで
知らず知らずのうちにまねをしている事がよくあります.

私の先輩の院長の元で働いている
これまた私の後輩は、最近、話し方や考え方が
院長とそっくりになってきて驚いています.

家族や血縁、環境などが物の考え方、生活習慣、哲学などなど
いろいろなものに影響しているということだと思います.

こうした中で、友人、兄弟姉妹のネットワークの中での
肥満の連鎖についての論文が発表されました.

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-------------------asahi. oom 2007.07.29
友人・兄弟・私…肥満の連鎖 「抵抗感が薄れる」見方
http://www.asahi.com/health/news/TKY200707260508.html

 友人や兄弟姉妹が肥満になると、
 本人も肥満になりやすいという研究結果を
 米ハーバード大の研究チームが米医学誌に発表した。
 研究チームは「肥満が社会的な結びつきの中で
 広がることを示している」とみている。

 チームは、ボストン近郊に住む1万2000人を32年間追跡し、
 体格指数(BMI)が30以上の「肥満者」の人間関係や、
 家族・知り合いらのBMIを調べた。

 その結果、肥満の友人がいる人は、
 肥満の友人がいない人に比べて57%も
 肥満になりやすいことがわかった。
 また兄弟姉妹が肥満だと40%、配偶者が肥満だと37%、
 肥満になりやすかった。

 食生活や生活習慣が似ると考えられる兄弟姉妹や配偶者の影響が、
 友人の影響より小さいことや、
 影響を与える人が必ずしも近くに住んでいなかったことなどから、
 チームは、親しい人が太っていることで肥満への抵抗感が薄れ、
 今回のような傾向が出たとみている。
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こうして記事を読むとなるほどと思うのですが
実際の論文のほうは
次の通りで、論文のタイトルを見ても
難しい書き方がしてあリ、内容まで想像できない感じがします.

---------The New England Journal of Medicne
N Engl J Med 2007; 357 : 370 - 9
大規模な社会的ネットワークにおける 32 年間にわたる肥満の拡大
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/xf2hm.htm

 背 景
 肥満の有病率は過去 30 年間に大幅に上昇している.
 肥満の拡大に寄与する可能性のある因子として,
 人から人への肥満の拡大の特徴および範囲について定量分析を行った.
 方 法
 フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)の一環として,
 1971〜2003 年に,12,067 人から成り緊密に関連し合う
 社会的ネットワークを対象に繰り返し評価を行った.
 全対象者の体格指数(BMI)を入手した.
 経時的統計モデルを用いて,ある人の体重増加が
 その人の友人,兄弟姉妹,配偶者,および隣人の体重増加と
 関連しているかどうかについて調べた.
 結 果
 肥満者(BMI [体重(kg)を身長(m)の二乗で除した値] ≧30)の
 識別可能な集団は,すべての時点でネットワーク内に存在し,
 3 分解度まで拡大した.
 これらの集団は,肥満者同士が社会的つながりを
 選択的に形成することのみに起因するものではないようであった.
 1 人の人が肥満になる可能性は,
 一定期間内に肥満になった友人がいる場合に 57%増加した
 (95%信頼区間 [CI] 6〜123).
 成人の 2 人の兄弟姉妹同士では,1 人が肥満になった場合,
 もう 1 人が肥満になる可能性は 40%増加した
 (95% CI 21〜60).
 配偶者が肥満になった場合,
 他方の配偶者が肥満になる可能性は 37%増加した
 (95% CI 7〜73).
 地理的に近接している隣人同士では,
 このような影響は観察されなかった.異性間に比べて,
 同性間のほうが影響が相対的に大きかった.
 禁煙の拡大は,
 ネットワークにおける肥満の拡大の主な原因とはならなかった.
 結 論
 ネットワーク現象は,
 肥満の生物学的特性および行動学的特性に関連しているとみられ,
 肥満は社会的つながりを通して拡大すると考えられる.
 これらの知見は,臨床的介入および公衆衛生的介入にとって重要なものである.
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アメリカでは肥満による健康被害は深刻であって
例えば 米ジョンズホプキンズ大(メリーランド州)の
研究チームの報告によれば
米国人の肥満傾向がこのまま続けば、
8年後の2015年には成人の4人に3人(75%)が標準体重を上回り、
41%は肥満になるとされています.
(http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070720STXKF006320072007.html)

アメリカにおいては、肥満はもはや疫病化しているといわれ
それに応じて、肥満外科と呼ばれる分野も発達しているそうです.

具体的には、増えすぎた体重を減らす為に
たとえば腹腔鏡下での
Roux-en-Y 胃バイパス手術が平均的な手術となっています.

それに応じて、肥満による健康被害へのコスト
肥満外科へのコストなどの医療費の増大も招いているそうです.

肥満におけるネットワーク現象は、
たとえば肥満をその他の言葉に置き換える事ができそうです.

肥満の代りに、生活習慣病、メタボリック症候群という言葉を
置き換えても、やはりネットワーク現象がみられるのではないでしょうか.
私の想像ですが.

肥満を含めた生活習慣病においては
個人だけでなく、その周りの配偶者、家族、友人、親しい人との関連においても
指導、治療を進めていかなければならないということだと思います.

さらに考えを勧めれば
生活習慣だけでなく、考え方、嗜好、感情、哲学というような
数字にできないものにおいても
ネットワーク現象があるのではないでしょうか.

日本という国がよい意味においても
悪い意味においても、こうしたネットワーク現象のまっただ中にいるような
気がしています.

悪い生活習慣を、ネットワーク現象で放置せず悪化させることのないように
常に注意する必要がありそうです.

人が3人以上集まれば、かならずグループや派閥ができるといいます.
どんな小さな社会であれ、ネットワーク現象を
無視する事はできないということです.

常に全体を意識する目を持つべきであり
俯瞰的な視点を忘れないということで
(メタ分析的な目をもつということ)
もっと分かりやすく言えば、井の中の蛙にならないように
さまざまな社会やネットワークとの混じり合いが必要ということになりますね.

結論、落とし所は、先に紹介した
「大学病院革命」と同じになりました.
様々な考え、行動、社会、ネットワークと混じるべしという事です.

参考までに日本で肥満外科にと陸で居る
大分大病院の記事が掲載されています.

肥満、最後の手段外科治療
YOMIURI ONLINE 2007.3.23
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20070323ik0b.htm

こちらでは胃内にバルーンを留置する方法や
腹腔鏡によって胃の上部をバンドで狭くする手術を
行っているそうです.
残念ながら保険は使えず、自費診療となり
手術だと約50万程度かかるということだそうです.
(それでも欧米よりずっと安いですが).

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ちなみにこんな記事もありました.

----------CNN.co.jp 2007.07.26
超肥満の米カップル、2人で計263キロの減量に成功
http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200707260028.html

 米テネシー州の超肥満のカップルが、
 数年かけてダイエットに挑戦し、
 2人で合わせて計263キロの減量に成功した。
 見た目も生活もすっかり変わった2人は、
 家族も増え、幸せな人生になったという。

 長い間、超肥満と過食で悩んでいた
 テネシー州フランクリンのアンディ・ソレルズさん(29)と
 妻のマギーさん(32)は、オンラインで出会った数年前、
 体重は合わせて450キロを超えていた。
 しかし今は、それぞれ約100キロと約64キロに落ち着いている。

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つまりは、家族、配偶者のネットワーク現象をうまく使えば
夢のような減量も可能ということでしょうか.

家族の力、愛の力が医学的な限界、壁をも突き破るという事でしょうか.
by yangt3 | 2007-07-31 00:03 | ニュース