もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

サイファーかタクサスか?

この5月に2番目の薬剤溶出ステントである
タクサス(パクリタクセル溶出ステント)が
保険適用となり、現場でも使用可能となりました.

したがって、現在、日本国内で私たちが使用できる
薬剤溶出ステントとしては

・Cypher(サイファー);シロリムス溶出ステント
  溶出薬剤として免疫抑制剤であるシロリムスを使用、

  Cypher ホームページ
  ジョンソン博士の優しい医療講座
  http://www.jnj.co.jp/jjmkk/dr/cypher/index.html

サイファーかタクサスか?_a0055913_16533762.jpg


・TAXUS(タクサス);パクリタクセル溶出ステント
  溶出薬剤として抗がん剤であるパクリタクセルを使用

  TAXUS Express2 ホームページ
  タクサスエクスプレス ステントを留置された患者さまへ
  http://www.taxus-stent.jp/index.html

サイファーかタクサスか?_a0055913_1654120.jpg


現在、冠動脈カテーテル治療に用いるステントは
大半がこの薬剤溶出ステントです.

二つの薬剤溶出ステントを使えるわけですが
使用する薬剤やステントの種類が異なり
適切な使い分けが必要になると思います.




薬剤溶出ステントがない時代は
薬剤を使用していない通常のステント、つまり
非薬剤溶出ステント(Bare Metal Stent; BMS)を使用して
治療を行っていました.

一番の問題点は、なんといっても何パーセントかに発症する
再狭窄(再発)でした.

薬剤溶出ステント(DES)の臨床への登場によって
このステント再狭窄の問題は、ほぼ解決されています.

最初に日本国内で使用可能となったサイファーの登場により
あっという間に、90%以上のカテーテル治療に
この薬剤溶出ステントが使用されるようになりました.

カテ室には、緊急対応のために
冠動脈治療用のバルーンや、ステントなどを常時
準備しているわけですが
あっとッという間に、薬剤溶出ステントがカテ室の
重要資材となったわけです.

当院では、サイファーとタクサスを区別することなく
患者背景や病変毎の使い分けを検討しようと考えています.
今は、両方を使えるようにしています.

新しいタクサスステントは、ステントの柔軟性があって
ステントの拡張も良好という印象があります.

病変毎の違い、そして日本での長期成績は、まだこれから結果が
でるところです.

冠動脈カテーテル治療の評価というのは
短期的には、病変への通過(デリバリー)が容易であるとか
拡張しやすいという、いわゆる初期成功率があります.

そればかりでなく長期予後を改善させることが重要です.
つまりサイファーで明らかになっている
薬剤溶出ステントの再狭窄抑制効果を標準として
それと同等の再狭窄抑制があることなどです.

薬剤溶出ステントで問題になっている遅発性ステント血栓症(LST)や
Stent Fructureの問題についても差異があるかどうかも
重要なところだと思います.

さらにサイファーを用いても再狭窄が問題になってくるような
糖尿病患者や透析患者の症例についても
有意な差が出てくるかどうかについても
注目していく必要があります.

日本における薬剤溶出ステントの長期成績、予後は
今後、国内の他施設研究で明らかになっていく予定です.

そして現在、薬剤溶出ステントも新たなタクサスステントが
臨床使用可能となり、状況がまた変わってきています.

病院によっては、全てタキサスステントに切り替えたという話も
耳にします.

最近の循環器のライブ研究会などでは、タクサスステントを用いた
治療がより多くライブ症例として行われています.

実際にカテーテル治療を行う立場としては
二つのステントの違いを良く認識して使用していくことが
重要だと考えています.

つまり溶出薬剤の違いだけでなく
ステントの違いいついても認識する事もあります.
かたや Closed-Cellであり、かたや Open-Cellのステントです.

海外では、さらに新しい薬剤溶出ステントの開発が
進んでいます.

シロリムス系の薬剤とパクリタクセル系の薬剤の両方を
溶出可能としたDural-Drug ステントも研究されているそうです.
両方の薬剤の良さを生かす事ができるでしょうか.
そういう意味では、現在でも一つの病変、一人に患者さんに
サイファーとタクサスの両方のステントを
コンビネーション、クロスオーバーで使用することは
意味があることかもしれません.

さらに実用直前の薬剤溶出ステントとしては
EPC Captureステント があります.
EPCとは、Endotherial Progenitor Celllの略であり
CD34 と呼ばれる細胞表面抗体をコーティングした特別なステントに
ヒト血管内皮前駆細胞を捕捉して作られたステントです.
このステントにコーティングされた内皮前駆細胞が
冠動脈病変において、血管の内皮化、血管修復に
有用に働くと考えられています.

薬剤溶出ステントの研究においては、
研究も臨床治験・経験においても海外の方が豊富な
症例数があります.

日本では、薬剤溶出ステントの臨床使用においては
海外に遅れる感がありますが
逆に海外でのデータを参考にして
血管内エコーを用いた日本のきめ細やかなカテーテル技術で
日本でのよりよいデータを出していきたいと思います.

さらに今後は患者さんの説明にあっては
薬剤溶出ステントの細かい違いや
長期成績などについても、行っていかなければと
思います.

さて表題のサイファーかタクサスか、とう問いですが
現在のところは現場での成績を検討しているところであり
個々の症例毎に考慮して、適切なステントを
選んでいます.
by yangt3 | 2007-08-13 16:54 | カテーテルの話題