もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

大気汚染と心筋梗塞

以前に住んでいたところは
交通の便はかなりよく、大きなショッピングセンターも
近くにあって比較的便利な場所でした.

そのかわり、交通量の多い道路、近くを走る高速道路などのためか
外に干していた洗濯物が排気ガスで黒っぽくなってしまうとか
サッシの網戸がススですぐに汚れてしまうとか
そんなことで大気汚染を実感していました.

この可児の地に数年前に越してきて
車の走行距離は、かなり延びてしまいましたが
住む環境は格段によくなりました.
緑も多く、空気も美味しいし
夜ともなれば、夜空の星も以前よりよく見えるようになりました.

当たり前のことですが、健康の維持には
やはり環境が大切であり
とりわけ心臓病の方々にとっては十分に考えなければ
ならない問題だと思います.

a0055913_011744.gif





その昔、研修医時代には、大阪の地で何年かを過ごしました.
生駒山から大阪の街に車を走らせていると
大阪の街が、なんだかどんよりとした空気に
覆われているような感じがしました.

研修医時代は、大阪の街で下宿して過ごしました.
場所は、駅のすぐ近くで
朝早くから夜遅くまで電車の音がけっこう大きな声で
部屋に響いていました.
週末の夜ともなれば、ほろ酔い加減の勤め人たちが
あふれて、いかにも大阪らしいにぎやかさでしたが
静かに勉強するという環境ではなかったのでした.

高速道路も近くにあって、さすが大阪ですので
交通量も半端じゃなく、
都会の大気汚染を肌身で感じた最初の経験です.

そういえば大阪の研修医時代は
夜間の救急に気管支喘息の患者が数多く来院していましたし
重症度も半端じゃありませんでした.

喘息で心肺停止となって運ばれる症例も多く経験して
もちろん今と昔では、治療の進歩の違いはありますが
やはり大気汚染が喘息の病態の増悪の
原因になっていたと思います.

大気汚染が喘息などの呼吸器疾患だけでなく
心臓病にも有害であるという研究が発表されました.

-------The New England Journal of Medicine
N Engl J Med 2007; 357 : 1075 - 82
希釈ディーゼル排気の吸入が冠動脈性心疾患の男性における
虚血および血栓の発生に及ぼす影響

Ischemic and Thrombotic Effects of
Dilute Diesel-Exhaust Inhalation in Men
with Coronary Heart Disease

N.L. Mills and others
http://content.nejm.org/cgi/content/short/357/11/1075

 背 景
 交通による大気汚染への曝露は有害な心血管イベントと
 関連しているが,
 その機序は明らかにされていない.
 大気汚染が安定冠動脈性心疾患患者の心筋,血管,
 および線溶能に対して
 直接及ぼす影響を評価するため,
 コントロール下で希釈ディーゼル排気への曝露を実施した.

 方 法
 心筋梗塞の既往のある男性 20 例を対象に,
 間隔を空けた 2 回の試験期間に,コントロール下の
 曝露施設において,
 休息時および中等度の運動時に
 1 時間希釈ディーゼル排気(300 μg/m3)
 または濾過空気に曝露する無作為化二重盲検クロスオーバー試験を
 行った.
 曝露時には 12 誘導心電図を継続的に取り,
 ST 部を分析して心筋虚血を定量した.
 曝露の 6 時間後,作動薬の動脈内注入により
 血管運動機能と線溶能を評価した.

 結 果
 2 回の曝露期間中,心拍数は運動に伴って増加したが
 (P<0.001),
 増加はディーゼル排気曝露時と濾過空気曝露時で同等であった
 (P=0.67).
 運動に誘発される ST 低下は全例で認められたが,
 ディーゼル排気への曝露時では虚血負荷の増加がより大きかった
 (−22±4 mV 秒 対 −8±6 mV 秒,P<0.001).
 ディーゼル排気への曝露により,既存の血管運動機能不全は
 悪化しなかったが,
 血管内皮の組織プラスミノーゲンアクチベーターの
 急激な放出が減少した
 (P=0.009,曲線下面積における 35%の減少).

 結 論
 希釈ディーゼル排気への短時間の曝露は,
 安定冠動脈性心疾患の男性において心筋虚血を促進し,
 内因性線溶能を阻害する.われわれの知見は,
 燃焼による大気汚染への曝露が有害な心血管イベントと
 関連するという報告を
 一部説明する可能性のある,虚血および
 血栓の発生機序を示唆するものである.
-------------------------------------------------------------------

a0055913_0114163.gif


大気汚染とディーゼル自動車の排気ガスに関しては
東京都が排気ガス規制を行ったことは記憶に新しいところです.

ディーゼル社から排出される粒子状物質とは
ほとんどが粒径1ミクロン(0.001mm)以下の
微小なものであり
その成分のほとんどは燃料の燃え残りのカーボン
(すす=SOOT)と、
炭化水素(有機溶剤可溶分=SOF)です.
そのほかは微量ですが、燃料中の硫黄分由来の硫酸塩
(サルフェート)と、
潤滑油由来の灰分(ash)があるそうです.
粒子状物質のうち、空気中に長期間浮遊している、
直径が10㎛(マイクロメートル)以下のものを、
「浮遊粒子状物質(SPM)」と呼び
この浮遊粒子状物質について、
我が国では環境基準を定められています.

ディーゼル車としては、トラック、バスなどがあり
大都市圏や交通量の多い地域では
やはりディーゼル排棄の健康への影響が無視できないと
考えられます.

今回の研究は、交通による大気汚染が
心臓病の悪化に関わっており
心筋虚血を促進する可能性を示したものです.

心臓病を持った方が、特に狭心症や心筋梗塞の既往のある方は
居住環境にも注意が必要だということです.

空気の美味しいところでの療養も
医学的に意味があるということになりますね.

a0055913_0121690.gif

by yangt3 | 2007-09-16 00:12 | ニュース