もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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桶狭間と病院の品格について

いくつかあるよくある質問ですが
「好きな戦国武将は誰ですか?」
というのがあります.

徳川家康が好きか.
豊臣秀吉がすきか.
織田信長が好きか.

血液型と同じく、好きな戦国武将というのは
いわゆる ベテランの年齢になった男性にとっては
興味深い話題かもしれません.

私の周りを見回してみると
織田信長が好きな人が割と多いようです.

そして 織田信長といえば 桶狭間の戦いで代表されるような
少数をもって多数を討つという
いかにも日本人好みな部分が、魅力となっていると思います.

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困難な状況にあって、人員も援軍も少ないなか
困難を乗り切る勇気を、織田信長と
重ね合わせる人は少なくないようです.

現場の人間が、少数をもって多数を討つという心意気で
仕事をするのは、よいとしても
指導的な立場にある人や、組織の指揮官が
自分の部下にそれを求めるのは
あまりにも過酷というべきか、無理難題、無責任なのではないでしょうか.

現場の状況を知らない人たちにしてみれば
少ない人数で、頑張ったという事は、一見美談であります.

別の見方をすれば、うがった見方をすれば
少数での闘いを余儀なくされる現状を作った
指導者、指揮官の力のなさこそを問題にするべきかもしれません.

困難な戦いや仕事をやり遂げる為には
必要な人員をそろえ、必要な資材をそろえ
周到な準備と計画を行うことが一番の基本であるべきです.

人員が足らない、資材もたらない、機材も時代遅れ
連日連夜のハードワークにさらされながらも
上司や指揮官の殺し文句がささやきます.
「きみしかできない」
「きみしかいない」
「きみ以外には誰にも出来ない」

悪魔のささやきのような、こうした甘言に
惑わされて、無理な仕事に、負けるかもしれない戦いに
身を投じる事になります.

ヤン提督にならって
私も時に歴史の書をひも解く事があります.

有名な 桶狭間の戦いについての書を最近読了しました.

桶狭間の真実
ベスト新書 KKベストセラーズ

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太田 満明 著

有名な桶狭間の戦いの歴史について
再度検討を加えた本です.

 信長の戦歴に燦然と輝く桶狭間の役は実は
 後世作られた伝説ではないのか.
 こうした問い掛けから
 歴史を再検討の試みがなされます.

 この戦役は、兵数の圧倒的不利を迂回奇襲で
 逆転したようなものではない、
 というのが、この書の結論です.

 資料を綿密に再検討、調査した結果によれば
 今川軍2万5千の大軍と織田軍2千の
 少数をもって多数を討つというような
 戦いではなかったということが
 明らかにされます.

 史実と当時の国力、兵力を詳細に検討したところ
 実際には、今川軍1万、織田軍5千が真実だった.

 それでも倍近い兵力差を、織田信長がどのように
 戦略を立てて、相手を兵力分散し
 各個撃破していったか.
 
 今まで、桶狭間の戦いでの奇襲という面ばかりが
 少数をもって多数を討つという、ミラクル的な側面ばかりが
 強調されてきたわけですが
 この書の信長の冷徹な戦略や計画を見て
 なるほどとうなずかれます.

 詳細は、この書を見ていただくとして
 要点だけを記すと
 信長は、いくつかある信長方の砦をおとりとして
 いわば見殺しにすることで
 今川軍の精鋭部隊である松平隊、朝比奈隊を
 足止めし、戦力分散を図ります.

 戦力分散された今川軍に残ったのは
 戦いの経験が少ない今川本体だけ.
 
 こうして正確な情報収集と情報の分析を元に
 戦略として相手の戦力分散を行い
 十分に勝機のタイミングを計った上で
 各個撃破を行ったというのが
 桶狭間の戦いの真実ということになります.

ここで描かれる 新たな織田信長像は
神頼みの奇跡を起こすような鬼神のような存在ではなく
実は、現代の戦闘のように、情報戦を勝ち抜き
冷徹で冷静な判断をもって戦闘に勝利したという
新たな織田信長像です.

戦いに勝つ為に、困難な仕事を成し遂げる為に
十分な人員や、十分な資材を準備することは
組織のトップの当然の責任であります.

こうした準備をすることなく
ただ、少数をもって多数を討てというような
精神論だけの、いわが行き当たりばったり的な
リーダーが、やたらと目に付くのは、
本当に困った事です.

冷静に判断して、明らかに無理な仕事を
精神論だけで部下に突撃を強いるのは
上司の無能さを証明するだけではないでしょうか.

同じ文脈で、なんの戦略もなく
突撃だけをもってよしとするリーダーも
私は認めるものではありません.

今の自分の実力、今の組織の状態、仕事のレベルなどなどから
どう考えても、無理なことがあります.

できないことはできないと
素直に認める事.

撤退するべき時は、負け惜しみをいうことなく
撤退できる勇気をもつこと.

冷静に自分の戦力や状態を把握して
次の戦いや仕事に備えて
周到な準備を怠りなくすること.

これが私の理想のリーダーです.

かの提督のように
本当に負けない戦いの意味を考えていきたいと思います.

そして無理と分かっていても、
困難に立ち向かっていかなければならないのも
同じではあります.

少ない人員で
もし心筋梗塞が続けて2例も搬送されたら.

もし多発外傷が続けて搬送されたら.

もし心肺停止が続けて搬送されたら.
もしくは院内の心肺停止と、救急が重なったら.

こうした困難な状況にあって
最前と思われる方法をとれるように.
常日ごろから全ての人たちの連携を深めていきたいものです.

それこそが、本当の病院の品格に繋がるはずです.
by yangt3 | 2007-11-29 19:40 | 一般