もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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悲惨な日々...

昔勤めていた病院で、内科医師が転勤や留学
その他の理由で退職となり
総合病院にもかかわらず常勤内科医師が3名となったことがあります.

時を同じくして、研修医の数も減っていた頃で
たった3人で総合病院の内科入院患者のケアを行い
外来、専門外来を行い、合間に検査やカテーテル治療、カメラを行い
3人で当直を回していました.

内科以外の他科の医師が内科当直を応援してくれたから
まだましだったものの
3~5日に一回の当直をたった3人でこなしていました.
多い時には月に8回もの当直だったこともあります.

当直明けといっても、内科医師が少ない以上
翌日の入院患者のケア、外来業務、そして内科系救急対応など
一時も休む時間はとれないのでした.

ちょうど2000年を境にして医師不足がマスコミで
話題になる以前の出来事です.

その過酷な職場環境は1年ほど続きました.
それを支えていたのは、私に、同僚の敬愛する内科医師、
そしてわが師匠である故 古高先生でした.

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その後、他の病院から当直の応援、外来応援など
焼け石に水的な応援を経て
内科医が増えて、ようやく一息をつくことになります.

その頃の激務が、いまから思えば
故 古高先生の体力に少なからず影響を与えただろうと思うと
本当に忸怩たる思いです.

時は流れて、今は地方の民間病院で働いています.
地方の中小病院はどこも同じ状況であると思いますが
わが病院も医師不足です.

大学外科からの医師派遣も、新臨床研修制度のあおりをうけて
派遣の停止となり、その後再開のめどは立っていません.

この春に、大学からの派遣を期待はしたものの
現実は厳しく、相も変わらず
少ないメンバーで現場の仕事をやりくりしています.

昨年春に、病院に新病棟がオープンし
その後、患者数も増加の一途をたどっています.

昨年末には、内科系医師が一名、増えましたが
病床数と現場の仕事からみれば
まだまだ人手不足であり、
月の当直回数は、多い時であれば6回ということもあります.

先日、開業されている先輩の内科医師とのミーティングの中で
医師不足、医療崩壊について話が及びました.

これから病院が倒産せずに生き残っていくために
なにが必要なのかということです.

やはり重要なことは、人材の確保であって
若い力や現役の労働力を常に補充をしなければ
病院を維持することは難しいと思います.

最近のニュースで、近隣の有名な公立病院も
看護師不足に悩み、看護師確保のために
就職支度金貸付を行うことが報じられていました.
(岐阜新聞;08.01.12
看護師確保へ県が就職支度金貸付制度 
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20080112/
200801120825_3791.shtml  )

医師や看護師の新人たちの若い力は
病院にとっても組織の活性化に繋がり
病院の体力を維持する為には、本当に必要なことです.

研修医や新人看護師の入ってこない病院では
現役、ベテランと呼ばれるスタッフが身を粉にして働き続ける
ことになります.

人間には、寿命というものがあり
脂が乗りきって働けるのはせいぜい50代まででしょう.

ましてや救急業務や、難しい手術、細かいカテーテル治療
連日連夜の泊まり込みの集中治療など
歳をとっては、とても体力が持たないわけで
それこそスタッフも命をかけての仕事になってしまいます.

地方の民間病院に若手医師や、看護師などを集めるには
どうしたらよいか.

一番簡単なのは、高い給料を保証することでしょう.
しかし先に紹介したニュースにあるように
公立病院が本腰を挙げて価格競争をしたら
民間としては太刀打ちできないかもしれません.

そして給料、待遇などの価格競争に差がないとすると
あとは専門職としての教育が充実していることでしょう.

特に医師については、自分の専門性を維持する事は
大切な問題です.

若い世代は、少しでも自分の技術や知識を高めたいと望んでいるわけで
そのためには、豊富な専門スタッフ、少しでも教育環境が優れている
手術症例が多い、カテーテルの件数が多いなども
大切なポイントになります.

いくら頑張っていても、医学の進歩は著しく
少しでも勉強をさぼればすぐに、進歩から取り残されてしまうのではと
そんな不安が医師にはあります.

スタッフの少ない地方の民間病院では
学会への参加もままなりません.
ほとんど毎日のように外来、回診、当直などのいわば義務業務があり
学会で数日病院を開ける為に
誰かに頭を下げなければならないからです.

仮に重症患者を抱えていたとしたら
病院を空けるわけにいきません.
専門を同じくする同僚がいれば、留守を頼めるにしても
ほとんどの地方中小病院では、一人部長というか零細企業というか
本当に自転車操業です.

また医療機器の面でも、地方の民間病院の場合は悲惨です.
CTやMR、カテ装置などの医療機器の進歩に
追いついて診療レベルを下げずにやっていくためには
定期的に、これらの高額な医療機器をリニューアルしなければ
なりません.

実際には、さまざまな経営的な事情から
新規の高額な医療機器の導入は、なかなか進まないのが現状です.

こうした人手不足、古くさい医療機器というのは
本当に現場の医師にとっては、やる気をそぐ原因です.
少しでも都会にいけば最新の医療機器を備えた病院がいくつもあり
地方の民間病院で働き続ける事の辛さが身にしみます.

地方の病院の重要な役割として救急医療がありますが
もし本当に真剣に救急に取り組むのであれば
それなりの覚悟とインフラ整備、人員確保が絶対必要です.
少なくとも私の理想とする救急とはそういうものです.
以前の病院でやっていた救急のイメージが
体に染みついており
それよりレベルを下げるのが本当に心苦しいからです.

救急部として最低限の人員確保、ベッドの確保.
各科医師が片手間でやるのではなく
選任医師、看護師、スタッフをそろえること
救急室スペースの整備の医療機器の整備などなど
私の目からみて足らないものが沢山ありすぎます.

しかし理想の救急を行おうと思っていても
地方の民間病院においては経営の問題があり
なかなかうまくいきません.

時間的に余裕があって初期治療を行った後に
専門医に紹介すればよいような疾患に関しては
地域の他の専門病院にまかせることもよいと思います.

一分一秒を争う救急に対して
できるだけ自分の施設で対応したいというのが
循環器を専門にする私の願いです.

それすらもままならないのであれば
これ以上、医師の仕事を続ける事の意味に思い悩んでしまいそうです.

まだまだ先が見えず
環境整備もままならず、これからのことに
思い悩んでいるのは事実です.

基本は、自分の理想を貫きたいということです.

貧乏人は医者にかかるな!
 医師不足が招く医療崩壊
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永田 宏 著

集英社文庫

最近、医療崩壊に関する書籍は、ほとんど読むようにしています.
もはや医師不足は、議論の余地がないところだと思います.

さてこの書の学ぶべき点は
日本が取り得る医師不足対策を具体的に提言しているところです.

つまり
1.医学部の定員を増やす
2.国外からの医師を輸入する
3.患者を国外に輸出する

ということです.
著者によれば、日本においては、これらのどの方法も
効果的とはならず、結局のところ
出口の見えない医師不足時代、医療崩壊時代に突入するだろうという
悲観的な観測を述べています.

地方の民間病院で循環器と救急をやっている私としては
なんとかしなくては、といつも毎日思い悩む毎日です.

地方の民間の中小病院がこれから生き残っていくために
大学や看護学校からの人材を集める事は
なかなか難しいでしょう.

地方の病院としては、高齢者で長期入院を要する患者さんが増えて
救急のために使用できるベッド数が目減りしていることも
問題です.

人が集まりにくいのであれば
有能なスタッフが集まるような病院にすればよいのですが
言うは易く行うは難し、です.

私が希望することは
・できるだけ医療機器を時代に合わせてきちんと整備、リニューアルを
 続けていく
・院内の教育体制を整備する
・地域のニーズにも応える為に、救急体制を整える
ことです.
これは私自身がしっかりした救急病院で働き続けたいと思っているからです.
私の周りに何人か同士はいるものと思います.

病院の今後に、医療の今後に
本当に注目しています.

まだまだ体に無理がきくうちに
理想の環境を得て働きたいと思うのですが
医療崩壊が進む時代にあっては、なかなか難しい事なのかもしれません.

一個人、一病院、一地域のみの頑張りだけでは
もうどうしようもないと思います.

皆の力を結集しなければ.

追記;
勤務医中心の医師会設立に向けて活動している方々がいます.
私の友人もその中にあって活動しています.
--------asahi.com 2008.01.14
勤務医中心の医師会設立へ 過重労働などで問題提起
http://www.asahi.com/health/news/TKY200801130140.html

こちらが全国医師連盟 設立準備委員会のページです.

全国医師連盟設立委員会
http://www.doctor2007.com/index.htm

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by yangt3 | 2008-01-15 08:43 | 一般