もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3

いわゆる「満床」とベッドコントロール

近隣でも有名な循環器病センターが
医師不足のために休床するというニュースがありました.

-------------CHUNICHI Web 2008.01.17
一宮の循環器病センターが休床へ 医師不足で経営改善にも影
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20080117/CK2008011702079985.html

  県病院事業庁は、県立循環器呼吸器病センター(一宮市)が
 医師不足による患者数の減少で、50床ある1病棟を4月から当分の間、
 休床することを明らかにした。医師不足が原因で県立病院が休床するのは
 初めて。心臓手術などで高い実績のある県の中核病院。
 県立5病院全体の収支を改善させる経営改善計画への影響も避けられず、
 医師不足の深刻さがまた、浮き彫りになった。

循環器、心臓外科ともに近隣でも有名な循環器病センターであり
このような施設でさえも、医師不足が深刻であるということに
改めて驚いてしまします.

どこの病院においても医師、スタッフが過剰ということはなく
似たような状態にあると思います.

まるで日本沈没のようです.

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例えば立派な病院を建てても、立派な救急センター、循環器センターを作り上げても
そこで働くスタッフが不足すれば、砂上の楼閣となってしまいます.

医療という仕事は、大量生産とか、画一的なものには向いていません.
患者さん個々の、状況や病状、症状に合わせて
きめ細やかな対応をするためには、数多くのスタッフの力が必要です.

忙しい医療スタッフの都合に合わせてしまえば
3時間待ちの3分間診療、とか
ケアの質を損なうことにもなりかねません.

現場の医療スタッフたちは、医療の質を落とさないように
増え続ける仕事を、なんとか少ない人数で
やりくりしているのが現状です.

現在、医療の仕事についている人たちは、
おしなべて皆さん、医療への熱意も高く
一部にあるような一方的な精神論には、くみする事はできません.

日本的な精神論、根性論というのは、結局のところ
本質を見失わせ、システムの修正や改良につなげる事ができないからです.

私が今、勤めている病院でも
慢性的なスタッフ不足に悩んでいます.
結果として、それぞれがさまざまな余分な仕事を抱える事になり
石川啄木のように
働けど 働けど ...ということになります.

さらに現場スタッフの閉塞感に拍車をかけているのは
病院の慢性的なベッド不足です.

病棟のベッド不足については2種類あり
本当に物理的に入院させる部屋がないという場合と
病室はあっても、医師や看護師などのスタッフの数が不足して
十分なケアが見込めず、入院させられないという場合があります.

こうした看護師や医師の不足によって入院させられないベッドに
無理やり患者さんを入院させたとしても
十分なケアができない可能性があり
現場のスタッフが精一杯頑張ったととしても
それで、他の患者さんのケアの質が低下してしまったら
全く何をやっているかわかりません.

医療の質を保つためには、医師数、看護指数ともに
最低限確保していなければならない人数があります.

急性疾患や救急、多発外傷、心臓病の救急、心肺停止などにおいては
たった一人の治療のために、本当に沢山のスタッフが必要になります.
こうした救急の対応に最低限、これだけのスタッフ数がいればいいと
単純には、線引きはできないはずで
スタッフの人数は多ければ多いほど
よい治療やケアができるに決まっています.

少ない人数でもぞれぞれの病院や、それぞれの現場が頑張っているのは
本当に、個人個人の頑張りのおかげです.

慢性的に病棟の満床状態が続き、毎日毎日
入院させるために四苦八苦しています.

入院されている高齢者の方においては、入院期間も長期となりやすく
一度病院で寝込んでしまうと、退院の許可が出たとしても
歩行や、日常生活動作、食事など、細かな生活の面で
ADLの低下があり、退院までこぎ着ける為に
リハビリやケアマネさんの活躍などが必要になってきます.

最近では、高齢者の一人暮らしや高齢者だけの世帯も増えて
身近な援助者も、いない事もあり
高齢者医療は、大きな問題となります.

また良く知られているように、超早期の脳梗塞の場合は、
TPAによる血栓様か医療法によって、本当にほとんど
後遺症を残さずに完治する例が見られます.

しかし、まだ脳梗塞で入院すると、特に高齢者の場合は、
麻痺やさまざまな後遺症を残し
脳梗塞の急性期を乗り切ったとしても
その後、自宅に退院するまでに長い長いリハビリを
続けなくてはなりません.

一部に、慢性期、リハビリ入院されいる方を
社会的入院として、批判する向きもありますが
高齢化を迎える今の日本の社会では、
自宅での介護や通院での療養の環境が十分でないこともあると思います.

最近、マスコミを中心に
再び「救急のたらい回し」という言葉がよく聞かれるようになりました.
そして、ある病院が救急を断ったといっては
救急拒否と断罪する論調が見られます.

このような 犯人探し的な議論で
現状が良くなるとは全く思えません.
こうした犯人探し的なマスコミの論調に引きずられて
医療スタッフ、救急スタッフと地域の皆さんとが
お互いに疑心暗鬼になるようなことがあってはならないと思います.

現状改善には、スタッフ増員、システム改善しかありません.

私達の病院でも、現在、病棟の入院ベッドの確保に
毎日悩んでいます.

病院に長らく通院されている患者さんや
当院で手術を受けられた方、当院でカテーテル治療を受けられた方
そんな方々がまた調子が悪くなった時に
いつでも入院ができるようにと
そういう気持ちで、スタッフ一同頑張っています.

今日も、すでに病棟は入院満床でしたが
内科、循環器の緊急入院をなんとか受け入れしました.

どの病院でも、どの現場でも、皆、現状を何とかしたいと
思っています.
救急を1台でも多く受け入れられるように.
入院の必要な人をいつでも受け入れられるように
現場スタッフがちゃんとプライドを持てるように.

本当に頑張っても、どうしようもない時もあります.
医師不足、スタッフ不足、ベッド不足、医療機器の不足などなど.

自分が診ている患者さんが具合が悪くなった時に
自分の病院で入院できないこと
悪くなった時に、他の病院に紹介しなければならないこと
こうしたことは、医師にとってもスタッフにとっても、
本当につらいことです.
by yangt3 | 2008-01-18 20:48 | ニュース