もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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外患と内憂

同僚の内科医、MEの力を借りて
治療頑張っています.
MEさんたちも、CHDF等の管理のため交代で
泊まり込んでくれています.

先日紹介した asahi.com 関西の救急存亡の
続編が出ていました.

asahi.com 2008.02.13
(2)「外患」 暴力・訴訟 しぼむ熱意
http://www.asahi.com/kansai/news/kyuukyuu/OSK200802130011.html

(3)「内憂」 「志」くじく低い地位
http://www.asahi.com/kansai/news/kyuukyuu/OSK200802130015.html

これまでも救急を扱った様々な記事やニュース
そして書籍などでも書かれていたことですが
現代の救急に携わる医療スタッフは、病気との闘いだけでなく
さらに外患、内憂のふたつの敵を加えた
3つの敵との戦いになるようです.

これに自分自身の体力の限界、心身の限界を加えれば
まさしく 四面楚歌 というところでしょうか.

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今、救急に関わる人、救急に関心がある人のみならず
今回の救急存亡シリーズの記事は、沢山の人に
目を通して欲しいと思います.

もちろんわが病院の多くの人にも、指導者層の人にも.

asahi.com 2008.02.13
(2)「外患」 暴力・訴訟 しぼむ熱意
http://www.asahi.com/kansai/news/kyuukyuu/OSK200802130011.html

研修医の頃は、全科当直ということで
内科志望といえども、外科、整形外科など
いわゆる専門外の患者も見る必要がありました.

教科書や、先輩の指導を受けつつ
慣れない骨折の整復やギブス固定を行ったり
外科、整形外科の手術の介助に入ったりもしました.

1990年の作品で、薬師丸ひろこ主演の映画で
「病院に行こう」というのがありました.

 薬師丸ひろ子が研修医役、真田博之が患者役でした.
 なれない整形外科手術の介助に入った薬師丸ひろ子扮する
 研修医が、四苦八苦するかたわらで
 痛みと不安におののく患者役の真田博之がうたう
 サザエさんの テーマソングがやけにシュールな映画でした.

この映画も古き良き時代のものでした.

先の記事に紹介されているように
現代では、命を救おうと好意で専門外の救急を受けても
その後に待つのは、訴訟社会なわけです.

ー 「頑張れば頑張るほど訴訟リスクが高くなるなら、
 続けたくても続けられない。救急制度はすでに破綻(はたん)している」
 救急医なら知らぬ人がいない判例がある。

 大阪高裁が03年10月、奈良県立五條病院に対し、
 救急患者の遺族に約4900万円の支払いを命じた判決。
 事故で運ばれた患者は腹部出血などで亡くなり、
 病院側は「当直の脳外科医が専門外でも最善を尽くした」と主張したが、
 裁判所の判断は「救急に従事する医師は、
 専門科目によって注意義務の内容、程度は異ならない」だった。

 訴訟になれば医師はさらに重い荷物を背負う。
 裁判所に提出する診療記録を分析し、1カ所ずつ日本語訳の注釈をつけていく。
 治療の合間に、膨大な作業が待っている。ー

この判例に従えば、私の専門は循環器で心臓病の治療ですが
救急で脳外科疾患をみた場合には、
脳外科専門医と同様の治療を行わなければならないのです.

逆に、整形外科医も、脳外科医も心臓病の救急を受ければ
心臓病専門医と同様の治療を行う注意義務があるということになります.

現実には、それは到底困難です.

初期治療が一分一秒でも早ければ救える命も
こうした判例で医療が萎縮してしまえば
せっかくのプレホスピタルケアも崩壊するしかないでしょう.

これが現実なのでしょうか.

そしてもう一つの現実...

asahi.com 2008.02.13
(3)「内憂」 「志」くじく低い地位
http://www.asahi.com/kansai/news/kyuukyuu/OSK200802130015.html

先に書いた記事とも関連しますが
病院の中で重症患者のケアや集中治療を継続するということは
担当医師が泊まり込んで治療を続けるだけでは
すまないのです.

軽症や慢性患者さんと違い
重症患者さんの場合には、看護スタッフが尽きっきりとなることもあります.
看護スタッフだけでなく、その他の職種も
重症ケアに時間を取られる事になります.

重症患者のケアは先が見えず、朝も夜も関係なく
急変があれば即時対応が必要となり
医療スタッフのストレスは過大です.

とりわけ夜間の病棟の少ないメンバーでの対応は
それこそ想像を絶するものがあります.

一方で重症や緊急に人手をとられるため
余剰人員を確保していなければ
通常業務の人手がとられる事になります.
それで影響をうける部署もたしかにあります.

ある意味、救急や重症患者は
効率とは無縁の世界です.
マンパワーも資材も薬剤も、治療手段も
採算を度外視してでも投入しなければ救命できないこともあります.

この記事に描かれた 40代ベテラン救急医の苦悩は
私も多いに同感するものです.

さらに記事には、こんなことも紹介されています.

ー 救急が、病院経営の悪化をもたらす例もある。

 千葉県館山市周辺の救急を担う安房医師会病院。
 00年に新病院を建てた際、地元自治体の求めで救急を始めると、
 予想を上回る月千人近くの患者が押し寄せた。

 当直医は一睡もできず、疲れ切って医師4人が退職。
 当直体制が組めずに救急部門を休止したが、
 入院患者にも手が回らない。病棟を閉鎖した結果、
 04年から赤字に転落。危機を乗り切るため、
 経営移譲先の選定が本格化している。

 昨春、24時間救急を掲げていた岐阜県内の病院がクリニックに転換した。
 非常勤医に頼っていたが、新臨床研修制度が始まった04年ごろから、
 当直アルバイト代が一晩2万円から数倍に高騰。救急の負担が増した。

 院長(69)は自分の月給を30万円下げ、自ら週2回当直したが、
 赤字は月600万円に達した。
 「地道にやっている医療や福祉に金が回ってこないことに、問題がある」

 地域医療がやせ細り、住民の「安心」にも黄信号がともる。ー

救急を一生懸命にやる医師、スタッフがどんどん壊れていき
さらには救急を続ける病院さえもが経営が悪化し倒産することもあるという
これが今の現実なのでしょうか.

いずれにせよ、個人で支えるには
あまりにも問題が大きすぎます.

最近、関東地方のとある大物循環器ドクターが
北の大地に急遽、移られたというニュースを聞き
驚愕しました.

自分のやりたい事、やるべき事、
そして自分ができること、病院での仕事、病院で可能なこと
地域のニーズ、患者さんのニーズ
これら全てが一致すれば本当によいのですが
なかなか難しいです.

私にも選択の時が迫っているのかもしれませんね.

 青年は荒野をめざす フォーククルセーダーズ
 YouTube
 http://www.youtube.com/watch?v=8rGrImqb8eI

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気持ちだけは青年です、いまでも.
by yangt3 | 2008-02-14 18:03 | 一般