もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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集中治療室

以前の病院の集中治療室で仕事をともにした
懐かしい人からコメントを頂きました.
あの頃の忙しかったけれど、皆で力を合わせて
頑張っていた時代のことが思い出されます.

それはまだ私の師匠である故 古高先生も
お元気に仕事をされていた時代の話です.

集中治療室は、さまざまな高度医療機器に囲まれた場所であり
連日連夜、きわめて困難な症例の治療に
数多くのスタッフが働いていました.

あの頃の私は、自分でいうのも何ですが
かなり頑張っていたと思います.

医療技術と最先端医療の粋を集めた集中治療室ですが
そこで基本になるのは、やっぱりチーム医療だったりします.

ICUでの仕事は、体力的にも精神的にもつらい日々でしたが
私にとっては貴重な経験となっています.

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集中治療室については、病院がかってに名称をつけているわけではなく
厚生労働省が定めたICUの基準があります.

すなわち厚生労働省認定集中治療室施設基準は以下の通りです.
1)専任の医師が常時、特定集中治療室内に勤務している。

2)看護師が常時患者2人に1人の割合で
  特定集中治療室内に勤務している。

3)特定集中治療室管理を行うにふさわしい
  専用の特定集中治療室を有していて、
  当該特定集中治療室の広さは1床当たり15平方メートル以上である。
  ただし新生児用の特定集中治療室にあっては、
  1床当たり9平方メートル以上である。

4)当該管理を行うために必要な次に掲げる装置および
  器具を特定集中治療室内に常時備えている。
(1)救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸装置等)
(2)除細動器
(3)ペースメーカー
(4)心電計、
(5)ポータブルエックス線撮影装置

(6)呼吸循環監視装置
5)新看護または基準看護を行っていて、
  かつ自家発電装置を有している病院であり、
  かつ当該病院において電解質定量検査、
  血液ガス分析を含む必要な検査が常時実施できる。

6)原則として、治療室はバイオクリーンルームである。

7)当該治療室勤務の医師および看護師は
  治療室以外での当直勤務を併せて行わないものとする。

この厚生労働省が定めた集中治療室(ICU)の施設基準を
24時間体制できちんと酌めている病院は、かなり数少ないように思います.

多くの大学病院、公立病院、総合病院、地域基幹病院では
この集中治療部選任医師に麻酔科の先生が兼任しているようです.

現実的には、24時間常時、集中治療室にフリーのドクターが
必ず常駐しているという条件で、ICU を稼働している病院が
多いと思います.

この厚生労働省の集中治療室の施設基準を満たした施設、集中治療室においてのみ
特定集中治療室管理料が算定できるということになっています.

この集中治療室管理料とは具体的にどれくらいかというと
2006年の時点で(1点10円)
7日以内 1日あたり  8760点
8日以上 一日あたり  7330点
となっています.

さらに具体的にいえば
ーICU在室期間が14日以内だった患者では1人110万円、
 1日当たり20万円。15日以上だった場合は、1人660万円、
 1日当たりでは22万円でした。
 そのうち、ICUに15日以上入院して結局亡くなった人でみると、
 1人平均1030万円かかっていました。
(YOMIURI ONLINE 2006.09.15 より引用
 延命措置 いくらかかるの?
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/nedan/20060915ik0b.htm

まとめると1日20万超かかるという計算になります.

さらにはこれと似た概念で
救命救急入院料というものがあります.
 ・しろぽんネット
  救命救急入院料
  http://shirobon.net/16/ika_1_2/i_k_1_2_3_a300.htm

その他に脳卒中ケアユニット入院医療管理料というものも定められています.
http://www.yoshitomi.jp/medical/sh/pdf/manual_50.pdf

さらにこれに準じるものとして
ハイケアユニット(HCU)なるものも定められています.
 ・ハイケアユニット
  http://www.nursing-policy.jp/kango_1/haikea_7_nyuin.aspx

さまざまな集中治療、救命救急治療において
さまざまな基準が定められていますが、その要点としては
まず、選任の看護師がさだめられていること
 ICUで患者さん2人に対して看護師1名
 救命救急では、患者さん3人に対して看護師1名
 ハイケアユニットでは、患者さん4人に対して看護師1名 以上
 これを24時間、看護師配置を確保すること
 ということが定められています.

さらに医師においても医師の常時配備が規定されています.

このように厚生労働省の定めた様々な施設基準は、
理想的なものであります.

病院として、治療室、病室の整備および
施設基準に必要とされているさまざまな医療機器、集中治療に必要なインフラの
整備は、費用さえ惜しむ事がなければ、すぐにでも可能なことです.

問題は、入れ物を作ったとしても
そこで治療を行う医師や看護師の確保が、非常に困難であるということです.

多くの病院では、医師も看護師も掛け持ち、兼任を余儀なくされているのが現状です.

人員不足、スタッフ不足に悩む多くの病院では
医師が、外来、検査、救急、病棟、集中治療室と
一日中駆けずり回っているのが原条ではないでしょうか.

平日の日中であれば、まだしも院内の医師も協力も仰げて
なんとか急場はしのげるかもしれません.

しかしながら週末、祝祭日、深夜の時間帯においては
数少ないスタッフと医師で現場をやりくりしているのです.

かくして入れ物、ハコ物は作っても
中身の核となる医師も看護師も不足して
救急受け入れ困難という事態も起ります.

a)---------asahi.com 2008.02.16
3割は「名ばかり救急」 日本医大などのチームが分析
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802150091.html

 全国の救急医療機関の少なくとも3割近くが、
 救急車の受け入れ台数が1日あたり1台未満で、
 事実上機能していない「名ばかり救急」となっていることが、
 日本医科大などの救急医チームの分析でわかった。
 医師不足や救急部門の不採算化が背景にあるとみられ、
 病院が交代制で地域の救急を担う輪番制度でも、
 4府県は参加施設の4分の3以上が名前だけの救急だった。
 専門家からは救急患者の受け入れ不能が常態化している一因、
 との指摘も出ている。
(中略)
 分析した日本医大高度救命救急センターの近藤久禎医師は
「輪番不参加の施設でも1日1台以下のところは多いと考えられるので、
 看板だけの救急施設の割合はさらに高くなる可能性がある。
 救急対応ができるところに診療報酬や人的資源を集めた方が効果的だ」と話す。

b)-------asahi.com 2008.02.16
医師不足、患者は大病院志向で輪番崩壊 救急医療
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802150090.html

 救急施設の3割は「看板」だけ――。
 救急医チームの搬送実態調査から明らかになったのは、
 多くの地域での「輪番崩壊」だった。救急医不足や不採算に加え、
 患者の大病院志向も要因に挙げられる。
(中略)
 杉本壽(ひさし)・大阪大大学院教授(救急医学)は
 「月に何度かの当番で設備や人的態勢を整えるのは経営的にも厳しい。
 訴訟のリスクもある中で、日中の診療でぎりぎりの医師たちの力を
 さらに使うのは無理がある。輪番を含め、地域の実情に合うように
 救急医療体制を見直さなければ、崩壊は避けられない」と指摘する。
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地方の民間病院で循環器医師として
地域の循環器救急を前線でささえる立場の私としては
これらの記事には、本当に身につまされるものがあります.

現状の状態を、長らく続ける事は、精神的、体力的に厳しいのもたしかです.

桶狭間の戦いの前に
松平に率いられた今川軍に落とされてしまった
信長方の丸根砦、鷲津砦の武将の気分です.

まさに前線の砦は、陥落してしまいそうです.

民間病院が救急病院として維持していくこと、闘う体制を
作り上げ維持していくためには、やはり経済的な基盤が必要になります.
個人の超人的な頑張りを続けても
補給がなければいずれは滅び去るだけです.

先日、当院に運び込まれた急性心筋梗塞、心原性ショックの患者さんは
治療の甲斐あって、なんとか窮地を脱しつつあります.
1人の患者さんを助ける為に、多くの人手と様々な医療機器の力が
必要となります.

キャパシティーの限られている民間病院では
本当に、真剣に救急医療を行おうとすれば
ある一定の人数以上の患者を受け入れる事は事実上不可能です.
人手不足、スタッフ不足では、十分なケアができないからです.

とはいえ例えば当院に運び込まれた患者さんが救急室で
心肺停止となってしまった場合
当院でとにかく救命処置を行って心拍再開を果たさなければ
次はもうないのです.

前線基地とはいっても、自分たちに手渡された命のバトンを
精いっぱいつなぐように頑張らなければだめなのです.

うちじゃ無理だから、とか専門医がいないからと
処置らしい処置もせず、医師も同行せずに
他の病院にただ送り付けるとしたら、
私にいわせれば、それこそが たらい回しだと思います.

こと急性心筋梗塞などの循環器救急においては1秒1分を惜しまずに
救命のための努力をしなければなりません.

多くのスタッフのいる病院、地域の基幹病院に
次のバトンを手渡すまで、なんとか命の絆をつなぎ止めること
そんな所に私たちのような民間病院の前線基地の存在理由が
あると信じて、これからの仕事を続けるつもりです.

困難な状況の中で、粘り強くいつも私の仕事を支えてくれる
わが4階内科病棟の看護スタッフの皆と
カテ室スタッフ、連日の泊まり込みも厭わないME I君にF君には
本当に言葉では言い表せないくらい
ありがたいと思っています.

さらには、どんな時でも快く後方支援を引き受けてくれる
地域基幹病院の諸先生方には
病院を代表して感謝の言葉を述べさせていただきます.

とりあえず
これからもよろしくお願いします.

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by yangt3 | 2008-02-18 07:42 | 一般