もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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スレンダークラブジャパン第5回ミーティングー2回目はちょっと真面目に考えるー

スレンダークラブジャパン第5回ミーティングに参加して
ちょっと真面目に考えたことなどを
書いてみたいと思います.

医療崩壊の流れは、地方の病院の勤務医にとっては深刻です.
少ない人数で、それほど若くもない循環器医が
365日24時間オンコールの体制を余儀なくされています.

もともと少ないマンパワーですので
すべての緊急をこなすわけにはいかず、近隣の循環器の先生がたと
協力して、そしてある時は無理をお願いして
なんとかやっているのが現状です.

最近では、64列CT、高性能CTによる心臓CTも
全国の病院に導入されつつあり
こうした高額な医療器械をすぐに導入できる体力のない病院
そしてスタッフの補充にもたついている病院にとっては
本当に苦しい時代です.

かたや循環器の学会やライブに出かけてみると
慢性完全閉塞(CTO)のカテーテル治療についての議論が盛んです.
高度な技術や設備、スタッフが必要な
こうした最新の治療には、なかなか地方病院のレベルで
治療可能な体制をつくるのは、難しいです.
スレンダークラブジャパン第5回ミーティングー2回目はちょっと真面目に考えるー_a0055913_0354092.gif




学会雑誌の巻頭言で
岐阜市民病院の上野先生がこう書かれていました.
ー今こそ、分散化から集約化への転換期であるー

上野先生は現在の状況を
循環器のカテーテル領域で働くいしたちの
エンドレスな消耗戦と、述べられています.

病院の中で緊急カテーテルのためのチームを作るために
必要なスタッフは、最低、循環器医3名.
24時間365日すべてオンコールに対応するためには
体力勝負のため若くなくては勤まらない.
しかし若くては、経験がない、とも書かれています.

ここ数年、医師不足から
こうした緊急循環器チームが、どんどん消滅しているそうです.
3人のチームで一人抜ければもう無理.(当たり前)
循環器救急は一人では無理であると、上野先生は述べられています.

さらには様々に専門分化して技術の議論の分裂が
起こっていることついても危惧を述べられいます.

こうした循環器救急システムの崩壊をふせぐため
学会や病院をよりよいものにするために
必要なことが分散化から集約化というキーワードです.

日々第一線でがんばっておられる上野先生の
お人柄を感じる巻頭言で、参考になりました.

集約化したシステムが稼働する将来を
楽しみに待ちたいと思いますが、それまでのつなぎとして
今、目の前に来られた患者さんに対して地方の病院の医者として
どう対応していくかを考えていかなければなりません.

難しいCTO(慢性完全閉塞)の治療を
すべてカテーテル治療で完遂させようというトップレベルの医師たちの
日々の努力と熱意には、本当に頭が下がります.

しかし設備もスタッフも乏しい地方の病院では
さらには院内に心臓外科チームがいない病院とあっては
また戦略も違ってきます.

地方の病院の循環器の医師がまず一番に考えることは
その治療が安全であること、確実であること、患者さんの負担が少ないこと
こうした条件を満たした上で
治療法を選択することになります.

難しいCTO(慢性完全閉塞)の治療には、あまり手を出せない
地方の病院だからこそ
もう少し公平に、つまりは内科的治療にこだわることなく
患者さんの状況を公平に考えて
年齢、合併症、透析患者である等を勘案して
外科手術、バイパス手術も、選択するということがあります.

将来的には、あらゆる循環器疾患が内科医の手によって
すべて治療されれば素晴らしいことですが
自分の現在の力量と、トップレベルでの技術の進歩をみて
大切な患者さんをバイパス手術のために
心臓外科医にお願いすることは、
決して循環器医の負けではないと思います.

地方の病院にとっては、命をかけて
何時間もかけて難しい慢性完全閉塞(CTO)の治療を
行っていく人的な余裕はありません.

何よりも通院している患者さんたち、入院している患者さんたちの
治療で手一杯です.
かかりつけの救急や急変に対応することが一番であり
その流れで急性心筋梗塞にも対応する体制を
地方病院といえでもとらざるを得ません.

ましては急性心筋梗塞は時間との勝負であって
ゆっくりと遠方のセンターまで送っている時間の余裕もないこともあります.

個人的には、慢性完全閉塞(CTO)のように
それほど緊急ではなく、待機の時間がある治療については
センター化した病院でゆっくりと時間をかけて行っていただくことに
賛成です.

地方の病院の医師としては、とりあえず緊急だけにはしっかりと対応できるように
腕と知識を磨いておきたいと考えます.

最近、64列CT、高性能CTによる心臓CTが広まっており
こうした心臓CTのできない病院は、将来淘汰されて
循環器診療ができなくなるのではと心配するほどです.

つまりは、地方の病院で循環器診療を、循環器救急をがんばろうと思っても
それができなくなるのではとう恐れです.

今回のスレンダークラブジャパンの講演の中で
一つの答えをお聞きしました.

東北厚生年金病院の片平先生の特別講演の中で

3Fr細径カテについての講演だったのですが
心臓カテーテルの代わりに
64列CTによる心臓CTが行われる現状について懸念を述べられていました.

スレンダークラブジャパン第5回ミーティングー2回目はちょっと真面目に考えるー_a0055913_0312142.gif


高性能CTによる心臓CTは、心臓カテーテルにまさるとも劣らない
画像を描出することが可能になりつつありますが
特に現在主流の64列CTでは、その被爆が無視できないということです.

3 Frカテを用いることで、被爆量も少なくすることができ
かつ造影剤の量も少なくすることができ
患者さんの負担は、それほどかわらないのではということでした.

なんといっても直接カテーテルを用いて
冠動脈造影検査を行うことのメリットとしては
不整脈があったり脈が早い人の検査は、現在の心臓CTでは不得意であるのに対して
カテーテル検査では、このような状況でもきちんと検査・診断ができます.

カテーテル不要論のようなものに、最近悩んでいた私にとって
細径カテならまだ生きる道があると感じた次第であります.

以前は、デバイス、治療器具の進歩が追いつかず
やむを得ずサイズの大きなカテを使っていた訳ですが
最近では、器具の進歩もあいまって、いろいろな治療が
細いカテを使って
安全に確実にできるようになってきたと
強く感じました.

地方の病院の循環器医師としては
64列CTやら高性能CTにびびることなく(いずれは導入したいですが)
あくまでカテーテルの本道を
細いカテ(スレンダー)を通じて
技術の進歩をはかることが大切だと
自分なりに学会に参加して得た結論です.

地方にこそスレンダー(細いカテ)だと思います.

とりあえず技術の進歩と普及のためには
このスレンダークラブジャパンの活動は
しばらく中央から地方へ拡散して広めていっていただきたいものです.

もちろんスレンダークラブジャパンのトップオペレーターの
先生方には、究極のスレンダーを作り上げていただきたいと思います.

スレンダークラブジャパンの会員の先生方が
口を揃えていわれる
患者さんのために最前を考える、という当たり前の
しかし実行することは難しい行動指針にそって
私もがんばらせていただきます.

最後にお世話になった先生による
ページを紹介します.

 1)細いカテはお嫌いですか?
  http://www.cardiologist.jp/ptca5fr/

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 会長のビデオライブは、本当に感嘆しました!

 2)僕たちのTRA日記
  http://kin-tra.air-nifty.com/diary/

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ミーティングのさなかに
Macを使い続けている姿が印象的でした.
スレンダークラブシールをさっそくMacに
張っていらっしゃいました.
by yangt3 | 2008-04-07 00:32 | 学会、勉強、研修など