もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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点滴と薬だけが治療じゃないでしょう.

昔、心不全で長期臥床中の患者さんを
研修医の先生と二人で見ていました.
1年以上入院生活を送っていて、車いすの異動がやっと
できる程度でした.

桜の季節ともなれば、動ける患者さんたちは、
デイルームや病院の外に出かけては、思い思いに
病院の近くの桜を見物していたものです.

春となり桜の季節ともなれば、長期入院中の患者さんの身も心も
少しは調子が良くなるようでした.

ただその患者さんだけは、桜を見に行くほどの元気もなく
春となった季節も、寂しそうに横になっていました.

そんな寂しそうな患者さんの表情になにかを感じたのか
わが研修医の先生が、ある朝、桜の枝を
その患者さんの枕もとに届けてくれたのです.

枝を持ってくるのは、あまり感心できる話ではありませんが
その研修医の先生は、きっと患者さんのことを考えて
一生懸命だったのだと思います.

点滴と薬だけが治療じゃないでしょう._a0055913_032982.gif






病院に行って、血圧をはかって
特に変わりなければ、ただいつもと変わりなく薬だけを
もらって帰る.それもいいかもしれません.

風邪をひいて体調が悪くなり、点滴を受けることもあるでしょう.

病院に通う患者さんにしても、病院の医師やスタッフにしても
何事もないのが一番ではあります.

長らく診ている患者さんの場合は、ちょっと話をして
顔色を見ただけで主治医としては、だいたいの体調はわかります.

いつも診ている患者さんであれば、体重や血圧のわずかな変化から
心不全の悪化や狭心症の悪化なども
早期に判断したりすることさえ可能です.

かかりつけ医の必要性が叫ばれて久しいですが
病院や主治医とうまくつきあうことで
もっといい関係になれると思います.

私自身も、随分と昔からおつきあいしている患者さんたちがいます.
長く診ている患者さんたちは、皆さん
家族ぐるみで診ていることが多いです.

そんな方たちは、私が病院を移っても
変わりなく、現在の勤務地まで診察にきてくれます.

ありがたいことです.

なかには、電話一本で本人の声を聞かせてもらうだけで
体調がわかるほどに、なじみになった方々もいます.

先日、長く診ている私の患者さんの一人が
調子が悪いと父親とともに来院されました.

ちょっといろいろあって、体調も悪くなり
気分的にも うつ状態となって、自宅で
死にたい、死にたいと言っては、なにも食べなかったとのこと.

なんとか病院に来て、話を聞いてあげると
ちょっと気分的に楽になった様子.

そこで もう気弱なことを考えないように
いつでも主治医のことを思い出して元気を出してもらえるように
お父さんと、その患者さんと私と3人で
写真をとりました.

3人で撮った写真をお薬代わりに処方したんです.

この人は、その後ちょっと落ち着かれて
変わらずに過ごされています.

またある時のことです.
同じように長らく診ている患者さん.
ちょっと食事の摂取にむらがあって、
すぐにおなかをこわしてしまう患者さん.

今回は1週間も前から、頭痛、嘔吐などがあって
両親に連れられて泣きながら外来に来られました.

じゃあ、点滴をしましょうということになったのですが.
ちゃんと家に帰っても、頑張って食事を食べるようにと
点滴に向かう途中でちょっと売店に寄り道しました.

先生がおかし買ってあげるから、なんか欲しいものない?
そう聞いてみると、
クラッカーとジャスミン茶を手に取ってくれました.
お菓子を食べてくれたらもう大丈夫でしょうね.

点滴をしたり薬を出すだけが医者の仕事ではありません.
あえて薬を出さないということもあります.

患者さんのとって一番よい方法がなにか
いつも主治医として考えています.

薬だけください!っていわれるだけじゃ
医師としてもなんとなく寂しい気がいます.

世の中には、いろいろな医師がいると思いますが
こんな医者でも、頼りにしてくれる患者さんがいる限りは
頑張ろうと思います.

皆さんが元気になってくれるのが、本当にうれしいです.
by yangt3 | 2008-04-15 00:04 | コーヒーブレイク(雑談)