造影剤による腎障害に漢方治療を
2009年 02月 19日
行われるわけですが、どうしても造影剤を使う必要があります.
カテやCTで使用される造影剤は
アレルギーに気をつけるということはもちろんのこと
造影剤による腎臓への影響がやっかいな問題です.
腎機能に問題のない方々の場合は、用量・用法を守って使用すれば
造影剤も安全に使用できます.
しかしもともと腎臓の機能が低下していたり
腎障害としてBUN、Creaなどの数値が上昇している人の場合
造影剤の使用をかなり躊躇してしまいます.
実際の対応として、カテーテル検査やカテーテル治療を
どうしても行わなければならない場合には
十分な輸液を行い、血管内超音波を使用して
できるだけ造影剤使用量を少なくするように努力しています.
心臓のカテーテル治療がうまく成功した後も
治療後の腎臓機能が順調に改善するように、悪化しないようにと
いろいろと頑張って点滴やクスリの調整をするのも
循環器医師の大切な仕事です.
循環器医師は、心臓だけでなく腎臓も
守っていく使命があるんです.
ところで腎障害、腎不全が漢方薬で改善するという話を
聞いたことがありますか?
漢方薬を専門でやっている先生達の間では、ちょっとした
トリビアなのだそうです.
私のほうは、そんな漢方のトリビアは知らずに過ごしていました.
そんなある日、とある開業医の先生からのカテ紹介がありました.
紹介状の中に、この患者さんは、腎障害のために
「オウギ」という漢方薬を処方中であると
書かれていました.
「オウギ」?「オウギ」が腎障害に効くんですか??
という感じでした.
とりあえず狭心症のため心臓カテーテルを行わねばならず
腎障害の悪化が懸念されることをお話した上で
検査を行いました.
カテの結果、冠動脈に狭窄を認めたため
いわゆるミニコン(少量の造影剤ーMini Contrast)で
なんとかカテーテル治療を無事に終わりました.
心配されたカテーテル治療後の造影剤による腎障害の悪化は
軽度であったため、そのまま開業医の先生の元にお返ししました.
その1年後に経過観察のカテーテル検査のために
その患者さんが再度、病院にやってこられました.
紹介状を見てみると、腎障害のほうは、漢方薬である「オウギ」の
内服を続け、さらに改善していました.
漢方薬で腎障害が改善するという認識をもった瞬間でした.
(不勉強ですみません)
この「オウギ」をいう漢方薬を使って
腎障害を改善させた開業医の先生というのは、誰あろう
私が現在、週に1回、外来応援をしている
春日井市の灰本クリニックの灰本 元先生です.
1)灰本 クリニック
http://www.haimoto-clinic.com/
ーホームページには、私の名前も乗せてもらっています(^^)
さてそんなわけで、灰本先生の外来を毎週毎週
手伝うことになったわけですが、
漢方薬である「オウギ」による陣霜害、慢性腎不全の改善症例が
灰本先生のクリニックに沢山あったという次第です.
個人的な印象では、クレメジンなどを使用するよりも
「オウギ」という漢方薬のほうが効果があるように思いました.
さて「オウギ」です.
漢方薬としての情報は、こちらにあります.
3)オウギ 黄耆
http://www.naoru.com/ougi44.htm
さてオウギの東洋医学的な位置づけなどは
門外漢であるため割愛します.
西洋医学的な効能としては、次のような項目が挙げられています.
・人の血漿中のcAMP含量を高める.
・核酸の代謝に影響する.
・単核マクロファージの貪食作用を増強する.
・利尿作用(顕著な)がある.
・タンパク尿に有効である.
・血管を拡張して血圧降下する.
・インターフェロンの生成を促進する.
・冠状動脈と全身の末梢血管を拡張する.
・抗菌作用がある.
などなどです.
研究報告としては、ネットで閲覧可能なものとして
次の文献があります.
4)慢性腎不全患者における生薬「オウギ(黄耆)」の
腎機能改善効果の検討
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/iryo_hoken
/koen_hokoku/1819senmonnkenkyuu/files/19tomino.pdf
順天堂大学医学部腎臓内科での成績をまとめた報告です.
オウギ 10 g/日を3ヶ月続けたところ
クレアチニンの低下など腎機能の改善を認めたとされています.
さて私が直接「オウギ」のことを教わった 灰本元先生の報告は
「漢方の臨床」という雑誌に発表されたものだそうです.
(2005年6月号 漢方の臨床)
東洋医学や漢方の細かい理論は私は門外漢なのですが
実際に、カテ後の造影剤による腎障害が
「オウギ」処方により改善した事実には驚いています.
透析間近の重症の慢性腎不全はともかくとして
ある程度までの腎障害にオウギが有効であった臨床例を
沢山、灰本先生のクリニックで見せていただきました.
そこで当院循環器科でも
今回、この腎障害に有効である「オウギ」の処方が
できるようになりました.
循環器外来に通院されている方々の中で
腎機能が気になる方から少しずつ処方を
始めていこうと思います.
腎障害があってカテーテル検査や心臓CT検査を
先送りしている患者さんの方々にも
「オウギ」投与により腎障害が改善してくれればと思っています.
オウギによる腎障害の漢方治療が気になる方は
循環器外来でご相談くださいね.