もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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造影剤による腎障害に漢方治療を

狭心症や心筋梗塞の診断に、心臓カテーテルや心臓CTが
行われるわけですが、どうしても造影剤を使う必要があります.

カテやCTで使用される造影剤は
アレルギーに気をつけるということはもちろんのこと
造影剤による腎臓への影響がやっかいな問題です.

腎機能に問題のない方々の場合は、用量・用法を守って使用すれば
造影剤も安全に使用できます.

しかしもともと腎臓の機能が低下していたり
腎障害としてBUN、Creaなどの数値が上昇している人の場合
造影剤の使用をかなり躊躇してしまいます.

実際の対応として、カテーテル検査やカテーテル治療を
どうしても行わなければならない場合には
十分な輸液を行い、血管内超音波を使用して
できるだけ造影剤使用量を少なくするように努力しています.

心臓のカテーテル治療がうまく成功した後も
治療後の腎臓機能が順調に改善するように、悪化しないようにと
いろいろと頑張って点滴やクスリの調整をするのも
循環器医師の大切な仕事です.

循環器医師は、心臓だけでなく腎臓も
守っていく使命があるんです.

ところで腎障害、腎不全が漢方薬で改善するという話を
聞いたことがありますか?

造影剤による腎障害に漢方治療を_a0055913_035223.gif






漢方薬を専門でやっている先生達の間では、ちょっとした
トリビアなのだそうです.

私のほうは、そんな漢方のトリビアは知らずに過ごしていました.

そんなある日、とある開業医の先生からのカテ紹介がありました.
紹介状の中に、この患者さんは、腎障害のために
「オウギ」という漢方薬を処方中であると
書かれていました.

造影剤による腎障害に漢方治療を_a0055913_05838.jpg


「オウギ」?「オウギ」が腎障害に効くんですか??
という感じでした.

とりあえず狭心症のため心臓カテーテルを行わねばならず
腎障害の悪化が懸念されることをお話した上で
検査を行いました.

カテの結果、冠動脈に狭窄を認めたため
いわゆるミニコン(少量の造影剤ーMini Contrast)で
なんとかカテーテル治療を無事に終わりました.

心配されたカテーテル治療後の造影剤による腎障害の悪化は
軽度であったため、そのまま開業医の先生の元にお返ししました.

その1年後に経過観察のカテーテル検査のために
その患者さんが再度、病院にやってこられました.
紹介状を見てみると、腎障害のほうは、漢方薬である「オウギ」の
内服を続け、さらに改善していました.

漢方薬で腎障害が改善するという認識をもった瞬間でした.
(不勉強ですみません)

この「オウギ」をいう漢方薬を使って
腎障害を改善させた開業医の先生というのは、誰あろう
私が現在、週に1回、外来応援をしている
春日井市の灰本クリニックの灰本 元先生です.

 1)灰本 クリニック
 http://www.haimoto-clinic.com/

造影剤による腎障害に漢方治療を_a0055913_044066.gif

 ーホームページには、私の名前も乗せてもらっています(^^)

さてそんなわけで、灰本先生の外来を毎週毎週
手伝うことになったわけですが、
漢方薬である「オウギ」による陣霜害、慢性腎不全の改善症例が
灰本先生のクリニックに沢山あったという次第です.

個人的な印象では、クレメジンなどを使用するよりも
「オウギ」という漢方薬のほうが効果があるように思いました.

さて「オウギ」です.
漢方薬としての情報は、こちらにあります.

 3)オウギ 黄耆
 http://www.naoru.com/ougi44.htm

さてオウギの東洋医学的な位置づけなどは
門外漢であるため割愛します.
西洋医学的な効能としては、次のような項目が挙げられています.

 ・人の血漿中のcAMP含量を高める.
 ・核酸の代謝に影響する.
 ・単核マクロファージの貪食作用を増強する.
 ・利尿作用(顕著な)がある.
 ・タンパク尿に有効である.
 ・血管を拡張して血圧降下する.
 ・インターフェロンの生成を促進する.
 ・冠状動脈と全身の末梢血管を拡張する.
 ・抗菌作用がある. 
などなどです.

研究報告としては、ネットで閲覧可能なものとして
次の文献があります.

 4)慢性腎不全患者における生薬「オウギ(黄耆)」の
  腎機能改善効果の検討
 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/iryo_hoken
/koen_hokoku/1819senmonnkenkyuu/files/19tomino.pdf

 順天堂大学医学部腎臓内科での成績をまとめた報告です.
 オウギ 10 g/日を3ヶ月続けたところ
 クレアチニンの低下など腎機能の改善を認めたとされています.

さて私が直接「オウギ」のことを教わった 灰本元先生の報告は
「漢方の臨床」という雑誌に発表されたものだそうです.
 (2005年6月号 漢方の臨床)

東洋医学や漢方の細かい理論は私は門外漢なのですが
実際に、カテ後の造影剤による腎障害が
「オウギ」処方により改善した事実には驚いています.

透析間近の重症の慢性腎不全はともかくとして
ある程度までの腎障害にオウギが有効であった臨床例を
沢山、灰本先生のクリニックで見せていただきました.

そこで当院循環器科でも
今回、この腎障害に有効である「オウギ」の処方が
できるようになりました.

循環器外来に通院されている方々の中で
腎機能が気になる方から少しずつ処方を
始めていこうと思います.

腎障害があってカテーテル検査や心臓CT検査を
先送りしている患者さんの方々にも
「オウギ」投与により腎障害が改善してくれればと思っています.

オウギによる腎障害の漢方治療が気になる方は
循環器外来でご相談くださいね.

造影剤による腎障害に漢方治療を_a0055913_054750.gif

by yangt3 | 2009-02-19 00:05 | 一般