上肢からの下肢動脈治療
2009年 04月 28日
セント・ジュード・メディカルの新しいバルーンである
Jackal OTWです.
名前がジャッカルとは、なんか格好いいですね.
ちなみにこちらが動物のジャッカルです.
この新しいバルーンは、5Fr対応であって
長さが150センチ(1.5メートル)あります.
つまりは、上腕からのアプローチで、下肢動脈の治療が可能となります.
さっそく左浅大腿動脈の狭窄症例に対して
左上腕動脈アプローチで、このバルーンを使用してみました.
シースは、5Frで、ガイドワイヤーは、Treasure 0..018を使用して
多少のコツがいりましたが、ある意味冠動脈治療と同じ感覚で
末梢動脈の治療ができました.
なかなかよいデバイスで、よい体験でした.
通常は、下肢動脈のカテーテル治療を行う場合は
同側または対側の大腿動脈(太腿の付け根の動脈)を穿刺して
行う必要があります.
症例によっては、大腿動脈が穿刺できないこともあり
さらには、大腿動脈からの穿刺治療の場合、治療後の安静も
時として負担になることもあります.
あくまで症例を選んでの話ではありますが
この Jackal OTWバルーンを使えば、上腕動脈から穿刺して
浅大腿動脈末梢までのバルーン拡張が可能です.
ちなみにOTWとは、over the wire(オーバーザワイヤー)の略で
現在の主流であるモノレールタイプのバルーンと異なり
デバイスの全長が、治療用ワイヤーに沿わせて操作するものです.
現在、冠動脈のカテーテル治療は90%近くの症例に
5Frシステムで橈骨動脈から90%近くの症例に行っています.
ところが下肢動脈、末梢動脈の治療については
デバイスもなかなかスレンダー対応のものが少なく
ステントも太いガイドやシースが必要だったりして
スレンダーつまりは低侵襲な、末梢動脈治療が難しかったのです.
150センチもの長いバルーンによって
上腕動脈からの治療が可能となり
またひとつ治療の幅が広がった気がします.
問題は、末梢動脈のカテーテル治療の場合は、
冠動脈治療のように気軽に使えるガイドカテがないため
長い血管シースを使ったり、場合によっては冠動脈治療用のDioを
流用して、ちょっと一工夫して治療を行うこともあります.
場合によっては、裸の王様の手技のように
ガイドワイヤーだけをたよりに、長い距離を病変まで
バルーンやステントを進めることになります.
心臓では、なかなか会長のような手技を行う勇気がありませんが
末梢動脈では、なんとか頑張って治療毎に工夫して頑張っています.
弘法筆を選ばずとはいいますが
私たちのような常識的なレベルの医師にとっては
やはり良き道具、良きツール、良きデバイス、そして良きメーカーさんと
良きカテ室スタッフが
カテーテル治療をうまく行うための大切な大切なカギです.
またよい道具があれば教えて下さい.
できれば上腕動脈から下肢動脈にステントを植え込めるような
道具があるといいんですけど.