もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3

2006年 02月 12日 ( 1 )

麻酔科医や訓練された医師であっても、気管内挿管が困難な
状態を 挿管困難症と呼びます.
気管内への挿管が困難であっても
救急の場では、とにかくも気道確保ができて
低酸素血症、低酸素脳症を防ぐことが重要です.

そのためには、
・通常の挿管を試みる
・だめなら非外科的なエアウエイの使用
・だめなら外科的エアウエイの使用(緊急気管切開)
と順番に気道確保を勧めて行く必要があります.

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気道確保は、救急対応ABC の Aです.
どんなに経験を積んだつもりでも、時には冷や汗をかくことが
ままあります.
私のつたない経験を 述べてみます.

昔、まだ研修医の頃の経験です.
急性喉頭蓋炎は、通常小児の病気ですが
稀に成人にも発症します.経験したのは、60代の男性で
糖尿病の既往歴がありました.数日来の風邪症状のあと
呼吸困難が増強し救急コールとなりました.
来院時には、努力様、呻吟様呼吸で
顔色は真っ青でした.血液ガスを取るまでもなく
すぐに気道確保、人工呼吸が必要な状態と判断しました.
静脈ラインを取りながら、すぐに通常の気管内挿管を試みました.
喉頭展開をして、喉頭を見ようとしたところ
真っ白な大福餅のような塊が、気道を塞いでいました.
異物か?と判断し用手で除去しようとしましたが、除去できず.
どんどん呼吸状態は、悪化し、自発呼吸も弱まって行きます.
原因はわからないが上気道閉塞との一瞬の判断で、18Gのピンク針を
首の甲状軟骨、輪状軟骨の間から数本さしました.
スパッ!っと空気が もれる音がして
その後徐々に呼吸状態が落ち着いて行きました.
改めて気管支鏡を使って、喉頭を観察したところ
大福餅のように見えていたのは、実は腫大して晴れていた
喉頭蓋でした.急性の喉頭蓋炎による喉頭蓋の著明な浮腫により
一時的に上気道閉塞を来したものでした.
改めて、気管支鏡確認下に、一時的に気管内挿管を行いました.
気道確保の意味だけで人工呼吸は必要としませんでした.
数日で抜管が可能でした.

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その後、抗生剤の使用、ステロイドの併用など
集中的な内科的治療により特に合併症なく患者は軽快退院されました.
起炎菌として、インフルエンザ桿菌が検出されていました.
糖尿病による抵抗力の低下がその基礎にあったと考えられます.

この症例では、通常の気管内挿管にこだわっていたら
いたずらに低酸素脳症を招いて、死に至っていた可能性があります.

原因はわからないまでも急性の上気道閉塞と
迅速に判断したことが救命につながったものと考えます.

今回は、かなり特殊な例で、成人で臨床的に遭遇することは、かなり稀です.
(小児の急性喉頭蓋炎は、たまに見られますが)
マスク換気も、このような例では、不十分であったと思います.
ピンク針による一時的な頚部気管からの気道確保が
重要でありました.

またこのような特殊な気管内挿管困難例においては
気管支鏡が非常に有用です.

私も救急に携わるものとして
気管支鏡については、十分なトレーニングを受けております.

気道確保は、基本中の基本ですが
いろいろな挿管困難症があり、常にあらゆる不測の事態に対応できるよう
知識の共有化が重要だと思います.
by yangt3 | 2006-02-12 08:43 | カテーテルの話題