もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3

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昔、受け持った患者さんの話です.
もともと慢性閉塞性肺疾患(COPD)による
呼吸不全で入院を繰り返していた方がおられました.
在宅酸素も行い、入院の度に
今度は、だめかも...と家族に説明していました.
体は小柄な人でしたが、いつもぎりぎりのところで
回復しては、また家に戻って行きました.
最期の入院は、最もひどく
気管拡張剤、ステロイド、抗生物質など
いろいろ手は尽くしましたが
次第に呼吸不全が悪化していきました.
奥さんに、ご主人の病状をよく説明し
これ以上の救命は困難であるとおつたえしたところ
挿管、人工呼吸などの延命処置は希望されませんでした.
「いままでやることはやって、手は尽くしたのだから
これも 主人の寿命だと思って諦めております」
といわれました.

普段気丈な奥さんでしたが、
ご主人の息が次第に不規則になり、あえぎ呼吸になるにし従って
奥さんも、いてもたってもいられないという風でした.
少しずつ、心電図が徐脈となり、補充収縮となり、
呼吸も微弱になっていきます.
最期には、幅広いQRSとなり、呼吸が停止し
心電図もフラットになってしまいました.
心電図をじっと凝視していた奥さんでしたが
心電図がゼロとなった途端
半狂乱の様相で
ご主人の耳元に口をつけ
「あんたー、まだ逝ったらいかんよ、戻ってこないかんよ」と
大声で叫んでいました.

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不思議なことに
その奥さんの一言でフラットだった心電図波形が
再び、動き出しました.呼吸もまた出てきました.
もちろん、その後数十分ほどして
今度は、完全に呼吸も心臓も停止したのですが.

2回目の心臓停止の時には
奥さんは、静かにご主人の手を握りしめて
黙って顔を見取っておられました.

改めて、夫婦のきずな、人間のきずなというものに
心打たれます.
まさしく、この時の奥さんの言葉が
一時的にせよ、ご主人を蘇生させたのです.
この時ばかりは、除細動でもなく、心臓マッサージでもなく
奥さんの心の底からの叫びが、ご主人の心臓を
再び動かしたのだと思います.

人間というのは、不思議で、
そして命はやっぱり尊いものです.
ここまで深い人と人との繋がりがあるということを
教えられた そんな経験でした.
by yangt3 | 2006-01-31 14:34 | 忘れ得ぬ患者さんたち
先日 CT 検査装置のメンテナンスがありました.
ちょうどよい機会でしたので
CT 内部の構造がどうなっているか
写真をとらせてもらいました.

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普段、当たり前のように
CTを使って診断を行っていますが
これまでの画像を撮れるようになるまでに
多くの技術者の方の苦労があったわけです.

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CT内部は、非常に複雑な構造になっております.

当院でも、今後 64 列のCTなど
最新の医療機器へのリニューアルにむけて
頑張って行きたいと思います.

それまで 今のCT
頑張ってもらいます

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by yangt3 | 2006-01-31 13:40 | 一般
コンスタント先生の講演会のダイジェストを数回にわけて
お送りします.
今回の講演会のテーマは、うっ血性心不全、心房細動についてでした.
うっ血性心不全の治療において利尿薬を中心とした投薬が行われます.
うっ血性心不全の状態を把握するために
利尿剤を投与するか、増やすか、減らすか
判断するために、コンスタント先生は
頚静脈圧を用いた方法を紹介されました.

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頚静脈圧は、次のようにして特別な器具も用いず
簡単に患者さんのベッドサイドで測定可能です.
図のように患者さんを45度の角度でベッドに寝かせます.
胸骨角から物差しを当てて
頚静脈拍動の最高点(最もよく拍動を検出できる点)を
測定します.
測定は、外頚静脈ではなく、内頚静脈を用います.
頚動脈と頚静脈を区別しなければなりません.
頚動脈は拍動を触れることができます.
頚静脈は、拍動を触れることはできません.
座位をとることで、拍動、圧が減少します.

4.5cmが正常値です.
(45°で4.5cmと覚える)
4.5cmより低い時には、心拍出量が低下している、
利尿薬が過剰などが考えられます.
4.5cmより高い場合には、うっ血性心不全、利尿薬の不足などが
考えられます.

頚静脈圧、拍動と心臓との関係は次の図のようになっています.
収縮期には(図左)右心房と右室との間の三尖弁が閉鎖しており
頚静脈圧は右心房の圧を反映します.
拡張期には(図右)三尖弁が開放しており、頚静脈は
右室の圧を反映します.
つまり、頚静脈圧をみることにより
カテーテル検査を行わずに、右房、右室の圧を
測定することが可能となります.

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さらに専門的には、頚静脈圧は、頚静脈波として
詳細に検討することが可能です.
それぞれの細かい波の形の検討から
さらに細かい病気の鑑別診断が可能です.

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コンスタント先生は、聴診器 一本と
理学所見、診察、このような頚静脈圧などをしらべることにより
詳細に、精密に心臓病の診断ができる世界でも数少ない
名医の1人です.

頚静脈圧についての詳しい説明は
コンスタント先生の著書
Bedside Cardiology
(日本語訳 ベッドサイドの心臓病学)にあります.
上記の記事に ご著書から図をお借りしております.
by yangt3 | 2006-01-30 13:31 | コンスタント先生
1月28日に行われた
コンスタント先生の勉強会の模様です.

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コンスタント先生の
いくつになっても新しいことを学ぶ姿勢こそが
われわれが最も学ぶべきことであると
痛感しました.

新しいことを学ぶことに
年齢は、関係ないということですね.
学ぶことをやめた時
前に進むことをやめた時
人は歳をとるということですね.

いつまでも精神的には、若さを保つように
これから頑張るつもりです.

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by yangt3 | 2006-01-30 12:17 | コンスタント先生
平成18年1月28日(土曜日)
可児文化センターaLaにて 
循環器の世界的権威である Drコンスタント先生の
講演会が 盛会のなか 無事に終了しました.
近隣の開業医の先生方を始め、
救急隊、救急救命士のみなさん、看護師のみなさん
看護学生のみなさん、
そして循環器科、心臓外科の先生方にもご参加いただき
会場が満席となりました.
本当にありがとうございました.

当日は、桜井院長が開会の辞を英語を交えてお話され
そのあと、循環器科 進が 当院で経験した
心室細動にて来院した心筋梗塞の1例について症例報告を
行いました.
コンスタント先生の講演は、桜井院長が流ちょうな英語で
通訳を勤められ、私が ホワイトボードに
コンスタント先生の講演内容の要点を書きながら
進められました.
みなさん、熱心にメモをとったりされ
多いに勉強になったものと思います.

コンスタント先生は、今後も体の続く限り
今回のように日本に来られて また私たちに講演を行っていただける
とのことです.
ぜひ来年は、新病棟で、コンスタント先生のベッドサイドティーチングを
みなさんとともに受けたいと思っています.
診察と聴診器一本で、複雑な循環器疾患の疾患を
的確に診断していくスキルは、まるで神様のようです.

なお コンスタント先生のご著書については、
後日、ご購入のご案内をさせて頂く予定です.
(コンスタント先生のお世話をされている 鈴木さん
という方が 一括購入、日本で手に入りにくい
洋書などの購入の手間をとられるとのこと)

今後ともよろしくお願いします.

循環器科 進
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by yangt3 | 2006-01-29 00:09 | コンスタント先生

成人BLSの流れ その2

2005年版AHAガイドライン Part 4
成人BLSの流れ の抄訳です.

ECC2000年のガイドラインでは、種々の
一回換気量や呼吸回数や、換気の間隔が推奨されていました.
しかし、これは実際のマウストゥマウス換気、バックマスク換気で
吸気時間や、換気量をチェックするのは現実的ではありません.
従って、2005年ガイドラインでは、心肺停止の換気について
簡単な推奨となっています.
・一回の換気は1秒以上かけて行う(Class IIa)
・目で確認して胸郭が上昇するまで、十分な換気量で
換気する(マウストゥマウス換気、バックマスク換気、
酸素の有無は問わない).
・速い換気は避ける.力任せの換気はさける.
・ラリンゲアルマスク、気管内挿管などの高度な気道確保が施行され
2人でCPR行う場合には、換気は、1分館に8回から10回で行い
心臓マッサージに同期させなくてもよい.これは、胸部圧迫を
換気のために中断させることがないようにするためである.

麻酔下の成人(肺血流は正常)において、一回換気量
8から10 mL / kg(60キロで480mlから600ml)で
正常な酸素化、正常な二酸化炭素の排泄を維持できることが判明している.
CPR中の心拍出量は、正常の時の25%から30%の拍出量である.
従って肺での酸素の取り込み、二酸化炭素の排出も低下している.
結果として、CPR中には、正常よりも少ない一回換気量と
少ない呼吸回数による分時換気量で
十分な酸素化と換気を維持することができることになります.
成人のCPRにおいて一回換気量はおよそ500mlから600mlとなります.
(6〜7ml/kg).
ただし通常の蘇生においては、一回換気量を正確に把握することはできないので
移動式自動人工呼吸器での換気量設定、およびマネキンを使ったCPRトレーニングでの目安となります.
バックやマスクで換気を行っている時には、成人用の換気バックを使用します.
(1〜2リットルの容量).
十分に胸郭が上昇するのを目で確認しながら換気を行います.
ある研究によれば、十分に訓練されたBLS プロバイダーにおいては
約400 mlの一回換気量によって、麻酔下で気管内挿管された成人の
胸郭の上昇を確認することがわかっています.
しっかりとした気道確保により最小限の一回換気量で十分であると
いうことです.
しかし現場において、気管内挿管、ラリンゲアルマスクなどの確実な
気道確保が為されていない場合には、もっと大きな一回換気量が必要になるかも
しれません.
従ってガイドラインとしては500 mlから600 mlの一回換気量を推奨します.
重要なことは、胸郭の上昇を視認することです.
窒息や不整脈によって心肺停止に至った患者においても
同様の一回換気量を推奨します.
現在、トレーニングに使用されているマネキンは
700 mlから1000 mlの空気をいれないと視認できる
胸郭上昇が起こりません.現場での経験に
マネキンを改良する必要があります.

気管内挿管やラリンゲアルマスクなどの確実な気道確保を行っていない場合
胃内へのガス貯留が発生します.
胃内へのガス貯留は、胃内容物の逆流や、肺への誤飲を起こす可能性があります.
横隔膜の挙上を引き起こすことにより換気を障害します.
十分な気道確保がされておらず、近位部での気道抵抗が高い場合には
胃内ガス貯留の危険性が高まります.
人工呼吸で送り込まれた空気は、食道内の圧力が下部食道の括約筋の
開放圧よりも高ければ、容易に胃の中に入って行きます.
胃内ガス貯留の危険は、高い近位気道圧、下部食道括約筋の開放圧の低下などで
増加します.短い換気時間や、大きな一回換気量、高いピーク吸気圧、不十分な
気道確保、肺コンプライアンスの低下などが胃内ガス貯留の危険を増やします.
これを防ぐ為には、一回の換気を1秒以上かけて、十分に胸郭が上昇するまで
ゆっくりと換気します.(1秒以下の速い換気では、胃内へのガス貯留の危険がまします).
胸郭を上昇させる換気量より、必要以上の大量の換気を行わないことが重要です.
大きな一回換気量での換気や、必要以上に強い力で換気を行うことも
胃内ガス貯留の原因となります.
by yangt3 | 2006-01-28 08:49 | 2005年CPRガイドライン
以前経験した心肺停止の患者さんについて
お話します.

患者さんは60代の男性の方でした.
高血圧などで外来通院されていました.
自宅で胸痛を訴え、その後意識消失して倒れ
心肺停止状態で救急搬送されました.
来院時に心室細動を認めました.
救急外来でCRP施行.
病歴より、急性心筋梗塞が疑われ、救命の可能性ありと
判断し、救急外来でPCPS(経皮的人工心肺)装着しました.
PCPS 装着後、除細動を行ったところ
自己心拍出現しました.
すぐに緊急CAG行いました.
緊急冠動脈造影にて左主幹部の75%狭窄、
左前下行枝起始部 90%狭窄、左前下行枝#7で
100%完全閉塞を認めました.

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右冠動脈、左回旋枝にも病変を認め
左主幹部病変を含む重症3枝病変と診断しました.
PCPS に加えて、IABPも施行し
左主幹部病変に対して、救命のためにカテーテル治療を行いました.
左前下行枝は、通常のワイヤーで通過不可能で
Miracleワイヤーでやっと通過.

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その後は、バルーンで十分に前拡張を行い
左前下行枝末梢病変から順次
ステントを植え込み行っています.

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最期に左主幹部入口部にステントを植え込み行いました.
左主幹部起始部の病変のためステントの近位ストラットは
少し大動脈内に出す形で植え込みを行いました.

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この症例のころには薬剤溶出ステントが使用出来なかった時代ですので
通常のステント(BMS)を使用して治療を行いました.
最終の確認造影です.

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治療後、PCPS、IABPのサポートを続け
集中治療を続けましたが、
心不全、多臓器不全進行し救命を断念しました.

このように重症3枝病変や左主幹部病変で
ひとたび心原性ショックや、心室細動、心停止を来すと
その救命は、非常に困難です.

願わくば、もっとこれらの致死的な症状を来す前に
早めに心臓カテーテル検査で診断をつけることができれば
比較的安全にバイパス手術や症例を選んでカテーテル治療が
行うことができます.

これらの致死的な重症狭心症を
いかに早い時期に診断し適切な治療を受けていただくかが
われわれ循環器医の使命だと考えています.
by yangt3 | 2006-01-27 08:56 | カテーテルの話題
循環器医として修行時代の話です.
まだ20歳になるかならないかの若い女性が
風邪症状で来院されました.
血圧は80程度しかなく、心音を聴取すると
心音が非常に小さく、ひどい不整もありました.
胸部レントゲンで、著明な心拡大、胸水貯留、肺うっ血があり
心不全で緊急入院となりました.

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心エコー検査では、左室壁運動がびまん性に低下し
左室が拡大していました.
病歴、検査所見から心筋炎と診断されました.
心臓外科の先生が中心となり治療を行っていました.
まだそのころは、やっとIABPが使えた頃であり、
今の様な経皮的人工心肺 PCPS装置がまだなかった頃の
話です.人工心肺といえば、心臓外科手術でオペ室で使われる
巨大な大掛かりな人工心肺装置があっただけでした.
その方は、劇症型心筋炎と考えられ
日に日に心不全症状が増悪、考えられるあらゆる薬物治療を
試みましたがその病魔の進行を食い止めることはできませんでした.
心臓外科医の先生の判断でIABPが挿入され
心臓補助が開始されました.
しかし、IABPを開始しても さらに病状が悪化しました.
入院して1週間目についに心室粗動から心室細動を
起こしてしまいました.抗不整脈剤を投与しながら
皆で懸命に心臓マッサージを行いました.
あらゆる薬剤、除細動にもかかわらず、心室細動は持続しました.
ただひたすら皆で懸命に心臓マッサージを続けました.
心臓マッサージで血流が確保されている間は
患者さんは、目をあけ、呼びかけにもうなずくのでした.
まだ20歳の若い女性を
こんなところで失ってはならない.
医局のほとんどの医者が、その患者さんの病室に集まって
交代で必死に心臓マッサージを続けました.
結局5時間以上、心臓マッサージを続けました.
どの医師も必死でした.

....けれども懸命の治療にもかかわらず
最期には、心臓マッサージでも患者さんは目をあけず反応もなくなり
心電図もフラットになってしまいました.
2日でも3日でも、いつまででも心臓マッサージを続けても
その患者さんを救いたかったのに.

普段冷静な心臓外科の先生も号泣されていました.
本当に残念でした.
いまでもあの時の心臓マッサージの感触を思い出します.

現在では、小型化した経皮的人工心肺装置 PCPSが広く
使用されるようになり
このような劇症型心筋炎においても PCPSを装着することにより
救命が可能になってきています.
たぶん、今の時代であれば、あの人を助けることができたかもしれません.
医師個人の技量の限界だけでなく
その時代時代の医療の限界というものが たしかにあります.

たぶん、医師としての仕事をやめるまで
心筋炎で失ったあの人のことを忘れることはできないと思います.
元気であれば、今ごろは幸せな結婚をし、子供にも恵まれていたかもしれない
その人の人生のことを.


皆さんの力を借りて
これからもやっていこうと思っています.

循環器科 進

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by yangt3 | 2006-01-26 09:52 | 一般
いよいよ コンスタント先生の講演会が
近づいてきました.
あらためて 講演のご案内を
ここに掲示いたします.

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コンスタント先生には、今回 日本全国を
講演会で回られるハードスケジュールの中
無理をいってこの可児の地においでいただくことになりました.

日時;平成18年1月28日(土曜日)  午後2時半より
場所;可児市文化創造センター(アーラ aLa) 内
        映像シアターにて

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演者;Dr Jules Constant

演題;心不全、心房細動の最新の治療について
座長;東可児病院循環器科部長 進 智康

対象は、医療関係者、医師会の先生がた、看護師、パラメディカルです.
みなさん 奮ってご参加ください.

コンスタント先生の講演の前座としまして
私こと 循環器科 進が
当院での心室細動症例、急性心筋梗塞症例など
簡単にプレゼンさせて頂く予定です.

ぜひお楽しみに!
by yangt3 | 2006-01-25 15:01 | コンスタント先生
3日に1回の当直でハードな毎日を送っておりました.
まだまだやっと挿管、中心静脈がとれる程度の
技能しかなく、当直は試練の連続でした.
上級医が必ず一緒に当直しており、自分で手に負えない時は
上級医にヘルプを頼んで、なんとか乗り切っていました.

その日の夜は、急性腹症の緊急手術のために
上級医は、手が離せない状態でした.
そこに交通外傷で心肺停止の救急要請.
大変なことになりました.

緊急手術中の上級医に連絡しましたが
手が離せないから、頑張れと励ましの言葉だけ.

途方にくれながら、挿管の準備をし、ボスミンなどの
薬剤を用意し、人工呼吸器の準備をしてCPAの到着を待ちました.

CPAで搬入されてきたのは、オートバイの単独事故でした.
みるとまだ若い男性で、フルフェイスのヘルメットをかぶっていました.
山道の急カーブでスピードを出しすぎて曲がりきれず
転倒しガードレールに激突したとのことです.

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内心 どうしようかと焦りながらも
瞳孔確認、と、ああ〜散大している.
看護婦さんに心臓マッサージをまかせ
手早く挿管、バックマスクにつないで
もう1人の看護婦さんにマスク換気を続けてもらう.
心臓マッサージを看護士さんと交代し
自分で数分の間、心臓マッサージを続ける.
気管内からボスミンを投与.
自己心拍は全然戻らず.
再び心マを、看護婦さんにまかせ
鼠径部より中心静脈を確保.
その後は、ひたすら上級医が来るまでの間
看護士さんに換気してもらいつつ
心臓マッサージを1人で続けていました.

しかし、全然反応なく自己心拍も戻らず
心臓マッサージ、換気を続け、ボスミン投与も続けます.

四肢には、ほとんど外傷なく、フルフェースのヘルメットをしていたためか
頭部にも目立った外傷はありませんでした.

1時間ほどしたところで上級医が、救急室に駆けつけてきました.
状況を聞いてもらって、患者さんを見てもらい
結局蘇生せず、CPRを中止しました.

どうやらガードレールに激突した際に
頚部を後ろから強打したと推定され
後からとったレントゲンで頚椎の複雑骨折が認められました.

おそらく即死状態で、誰がやっても救命は無理だったよと
上級医に慰められても、
自分の力が足らなかったような思いがあり
しばらくは落ちこんでしまいました.

昔、医学部で勉強していた頃、渡辺淳一氏の 小説を読んでいました.
渡辺氏の自伝的な小説で、研修医のころ、なにもできないまま
僻地に派遣されたとのことです.あるひ外傷で、血胸となった人が
救急で来院.結局、なにもできずに死なせてしまったという話がありました.
その後、何年かして同じように血胸の患者が来たが、
さっと、胸腔ドレナージをして、輸血して、
適切な処置を行うことができて救命したというのがその話の続きです.

救急の場で、技量が未熟なばかりに患者の命を危険にさらしてはならないと
その頃思ったものです.
あれから何年も経って、治療法が確立している疾患、救急に関しては
自分で処置をしたり、しかるべき高次医療機関に搬送するなどして
未熟なために救えないということは少なくなってきたように思います.

それでも、研修医のころに出会ったCPAの人のように
どんなに手をつくしても、多くの優秀な人たちが
懸命に力を尽くしても
いまなお 乗り越えることのできない病魔があるということが
そういう現代医学の限界というようなものが
最近、感じていることです.

医療現場の激務に、気持ちが押しつぶされるような時もありますが
そんな日々を支えてくれているのは、
いままで私が最期まで見取った何人もの患者さんたちの思いでです.

忘れられない人たちの事について
またおいおい お話していきます.

循環器科 進
by yangt3 | 2006-01-25 08:47 | 一般