冠動脈の動脈硬化について
2005年 12月 27日
正常の血管は、内膜、中膜、外膜からなる3層構造となっています.
冠動脈も同様です.血管の内側は、内皮細胞とよばれる細胞で
覆われています.内皮細胞は、血管を保護するだけでなく
いろいろな成分や、物質の調節を行っており
止血、血栓形成、血管の収縮、弛緩などに重要な働きをしています.
内皮細胞の研究は、現在かなり進んでいます.
冠動脈の動脈硬化においては、この三相構造のうち中膜に含まれる平滑筋細胞が
内膜がわに遊走し、増殖が始まります.
血液の中から単球が冠動脈内に浸潤し、マクロファージへと分化し
血管内に浸潤したマクロファージ内にコレステロールが蓄積されていきます.
この平滑筋細胞の増殖に引き続く線維組織の増加と、コレステロールの増加が
粥状動脈硬化と呼ばれるものです.
この動脈硬化による内膜の粥状肥厚病変はプラークと呼ばれています.
大動脈、脳血管などその他の部位でも認めます.
冠動脈は、内腔が狭いため、病変の進行により、血管が細くなったり閉塞し
狭心症、心筋梗塞を引き起こして行きます.
実際の狭心症、心筋梗塞の発症の際には、以前にも書いたように
大きくなったプラーク構造が不安定となり、プラーク破裂が起こり
一気に血栓が形成、冠動脈の閉塞に進行すると考えられています.
不安定プラークとなる条件として脂質コア(IVUSでいうところのNecrotic core)の大きさ、プラークの大きさ、プラークの固さ、高血圧、高脂血症などによる
冠動脈血管への慢性的物理的ストレス、病変部で起こる炎症反応などが
上げられます.
最近の高脂血症の薬の研究により、血液中コレステロールを治療で積極的に
さげることにより、これらの破裂の危険性の高いプラークを
安定化させる機序が考えられています.
不安定プラークは、常に生体において、治癒機転が働いています.
コレステロールを下げ、その他の冠動脈リスクファクターを減らして行けば
不安定プラークは、縮小、安定化がみられ、ひいてはプラーク破裂の
危険を減らすことができます.
実際の症例において、冠動脈のプラークを詳細に検討すると
これらの破裂(悪化)の機転と、プラーク安定化(治癒)機転が
混合した像がしばしばみられます.
このように、高血圧、高脂血症の治療、禁煙などの日常的な治療が
冠動脈のプラークの改善に直接結びついているということです.
循環器科 進