もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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冠動脈の動脈硬化について

冠動脈の動脈硬化
正常の血管は、内膜、中膜、外膜からなる3層構造となっています.
冠動脈も同様です.血管の内側は、内皮細胞とよばれる細胞で
覆われています.内皮細胞は、血管を保護するだけでなく
いろいろな成分や、物質の調節を行っており
止血、血栓形成、血管の収縮、弛緩などに重要な働きをしています.
内皮細胞の研究は、現在かなり進んでいます.
冠動脈の動脈硬化においては、この三相構造のうち中膜に含まれる平滑筋細胞が
内膜がわに遊走し、増殖が始まります.
血液の中から単球が冠動脈内に浸潤し、マクロファージへと分化し
血管内に浸潤したマクロファージ内にコレステロールが蓄積されていきます.
この平滑筋細胞の増殖に引き続く線維組織の増加と、コレステロールの増加が
粥状動脈硬化と呼ばれるものです.
冠動脈の動脈硬化について_a0055913_29196.jpg

この動脈硬化による内膜の粥状肥厚病変はプラークと呼ばれています.
大動脈、脳血管などその他の部位でも認めます.
冠動脈の動脈硬化について_a0055913_275341.jpg

冠動脈は、内腔が狭いため、病変の進行により、血管が細くなったり閉塞し
狭心症、心筋梗塞を引き起こして行きます.
実際の狭心症、心筋梗塞の発症の際には、以前にも書いたように
大きくなったプラーク構造が不安定となり、プラーク破裂が起こり
一気に血栓が形成、冠動脈の閉塞に進行すると考えられています.
冠動脈の動脈硬化について_a0055913_2702.jpg

不安定プラークとなる条件として脂質コア(IVUSでいうところのNecrotic core)の大きさ、プラークの大きさ、プラークの固さ、高血圧、高脂血症などによる
冠動脈血管への慢性的物理的ストレス、病変部で起こる炎症反応などが
上げられます.
最近の高脂血症の薬の研究により、血液中コレステロールを治療で積極的に
さげることにより、これらの破裂の危険性の高いプラークを
安定化させる機序が考えられています.
不安定プラークは、常に生体において、治癒機転が働いています.
コレステロールを下げ、その他の冠動脈リスクファクターを減らして行けば
不安定プラークは、縮小、安定化がみられ、ひいてはプラーク破裂の
危険を減らすことができます.
実際の症例において、冠動脈のプラークを詳細に検討すると
これらの破裂(悪化)の機転と、プラーク安定化(治癒)機転が
混合した像がしばしばみられます.
このように、高血圧、高脂血症の治療、禁煙などの日常的な治療が
冠動脈のプラークの改善に直接結びついているということです.

循環器科 進
by yangt3 | 2005-12-27 02:09