もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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慢性閉塞性動脈硬化症の検査

安静時および運動後の足首/上腕血圧指数(Ankle-Brachial Index)が、
死亡率の独立した予測因子である可能性あり

ABIという検査があります.
この比較的簡単な検査で末梢血管障害や
慢性閉塞性動脈硬化症(いわゆるASO)の
予後や死亡率を予測することができるそうです.



近年、日本でも食生活の欧米化に伴い、虚血性心疾患と共に
下肢の血管の動脈硬化による閉塞性動脈硬化症(ASO)が
増加しています.
心臓と同様に、糖尿病、高血圧、煙草などが
危険因子となります.
この下肢の動脈硬化を比較的簡単に調べるのが
ABIという検査です.
これは心電図、心音図、四肢の脈波、四肢の血圧など
四肢の血圧を図る程度の簡単な検査で
動脈硬化の状態を調べる検査です.
ABIとは下肢の足首の血圧と上腕の血圧の比率のことです.
(ABI= Ankle- Brachial Index)

慢性閉塞性動脈硬化症の検査_a0055913_8463221.gif


ABIによる動脈硬化の検査の結果を総合的に判断し
必要であれば、さらに、血管エコー検査や
カテーテルによる血管造影検査が行われます.
これらの精密検査の結果で治療方針が立てられます.

今回、このABIについての
研究報告がありました
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タイトル;安静時および運動後の
足首/上腕血圧指数(Ankle-Brachial Index)が、
死亡率の独立した予測因子である可能性あり

Arch Intern Med. 2006;166:529-535(アメリカ内科学会雑誌)
Laurie Barclay, MD

安静時および運動後の足首/上腕血圧指数
(ankle-brachial index;ABI)が、
死亡率の独立した予測因子であることを示すプロスペクティブ(前向き)
コホート研究の結果です.
安静時のABIが正常な患者であっても、
運動後のABIがベースラインより低下した場合はリスクが予測されます.

足首の収縮期血圧と上腕の収縮期血圧の比であるABIは、
下肢動脈閉塞の評価およびPAD疑いの患者のスクリーニングに使用される
簡単で効果的な非侵襲的検査です.

ABIは一般に安静時に測定するが、
運動負荷試験と組み合わせてABIを測定することにより、
検査の感度が向上し、安静時ABI値が正常であっても
末梢の動脈硬化を有する患者を同定できる可能性があります.

Laurie Barclayらは安静時および運動後のABI値を測定し、
3209例の患者において、
運動後ABIの
安静時ベースライン測定値からの低下率を計算しました.
経過観察期間中の死亡率は41.2%(1321例)であした.
死亡率の有意な予測因子は、
・安静時のABI値が低いこと
・運動後のABI値が低いこと
・ABI値のベースライン測定値からの低下率が大きいこと
でした.

安静時ABIが正常であった789例の患者において、
運動後ABIの
6-24%の低下、25-55%の低下、および55%を超える低下は、
各々、死亡リスクの1.6倍、3.5倍、および4.8倍の増加が
運動後に低下しない群に比べてみられたそうです.

安静時および運動後のABI値は、
死亡率の、強力な独立した予測因子であり
運動後にこのABIの検査を行うことにより
安静時ABI値が正常な患者のなかでリスクの高い
末梢動脈の動脈硬化の人を同定することができると考えられます.

運動や歩行中に足のしびれがでる、痛みがある
痛みやしびれのために休み休みでなければ歩けない
足に潰瘍ができて直りにくいなどの
症状がある方は
病院での診察をお勧めします.
by yangt3 | 2006-03-28 08:46