もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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透析患者のカテーテル治療症例

透析治療を受けておられる患者さんでは、
冠動脈の病変もより高度でより石灰化の強い病変となります.
特に糖尿病を基礎として腎不全に進行した場合には
透析導入となった時点ですでに
高度の冠動脈病変を有することも多いです.
もちろん、透析導入後の年数が経過するにつれて
さらに冠動脈病変はより高度となり
石灰化も強度となります.

これは、透析年数が経過するにつれて
カテーテル治療も困難となり、またバイパス手術を行っても
しばしばバイパスの吻合が困難となることを意味します.

より早い時期にきちんと診断して
必要な治療を行う事が重要と思います.

今回60代の男性が腎不全の進行により
透析導入となりました.この方は糖尿病はなく
腎硬化症が原因と考えられました.透析導入直後に
胸痛があり心臓カテーテル検査を行ったところ
冠動脈の狭窄を認めました.

透析患者のカテーテル治療症例_a0055913_023549.gif





透析導入にて腎機能の改善をまち
予定でカテーテル治療を行いました.
左回旋枝#11に90%狭窄、右冠動脈#1 90%、#2 90%狭窄と
多枝病変を認めました.
先に左冠動脈の病変について治療を行いステント植え込みを
行いました.
その後透析治療を続け、さらに1ヶ月後に
残存狭窄である右冠動脈病変を治療行いました.

この方は、糖尿病がないため、狭窄を血管内超音波で
調べたところ、冠動脈の石灰化の進行はそれほど進行
していませんでした.
もちろん、透析を受けておられない同年代の方の病変に比べれば
石灰化は強めでした.
そのかわり、冠動脈の蛇行が強度でした.
この冠動脈の蛇行のために、カテーテル操作がけっこう困難で
ワイヤー挿入、バルーン挿入などが技術的には
難しい症例でした.
対処方法としては、Fielderと呼ばれるワイヤーを2本使用して
ダブルワイヤーで治療を行った事です.
型の通りバルーンで前拡張を行い
遠位部(#3)にはCypher 3.0 x 18 mmを植え込み

透析患者のカテーテル治療症例_a0055913_034662.gif


近位部(#1)にはCypher 3.0 x 23 mmをそれぞれ植え込みしました.

透析患者のカテーテル治療症例_a0055913_044397.gif


病変へのステント挿入は、冠動脈の蛇行のために
これもかなり困難でした.
その後も型通り、血管内超音波でステントの拡張の具合を確認し
さらに後拡張用のバルーンで十分にステント、病変を拡張.

最後は、良好な拡張を得て治療を終了しました.

透析患者のカテーテル治療症例_a0055913_05392.gif


治療はいずれも薬剤溶出ステントを使用しています.
残念ながら、プラビックスはまだ狭心症での使用が認められず
バイアスピリン、パナルジンによる後療法を行っています.

その後は、特に胸痛、狭心症増悪もなく
順調に外来透析を続けています.

一口に透析患者といっても、腎不全に至った原因、経過、病歴などにより
治療の難易度が異なります.
さらには透析用のシャントの問題があり
カテーテル穿刺のアクセスにも頭を悩ませます.
この方は、左前腕に作成したシャントが良好であり
右棟骨動脈より治療を行っています.

透析患者さんのステント治療は、腎不全を持たない方に比べれば
病変も複雑で冠動脈の石灰化も強く
またカテーテル穿刺部の選択が限られる等の問題から
技術的には、困難度が高くなります.

さらには、狭心症だけでなく、下肢の動脈硬化症や
脳梗塞などの合併も多く
トータルな血管のケアが必要になります.

東可児病院でも多くの方が透析治療を受けておられます.
循環器については、現在、精力的に心臓の評価を行い
必要な方にはカテーテル検査を行い診断、治療を行っています.
何人かの方は、すでにステント治療を済ませています.
透析患者さんの狭心症の管理は、透析を受けておられない方よりも
はるかに神経を使います.

さらに今後は、心臓のみでなく
下肢動脈閉塞症など末梢動脈疾患に対しても積極的に検査
治療を行っていく予定です.

それにしてもやるべきことが沢山あり
人手は、本当に足らないですね.

まあ、めげずに頑張って行きたいと思います.
by yangt3 | 2006-06-15 00:06 | カテーテルの話題