もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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ブログが癒しとなる日

生きていけばいろいろな苦しみがあります.
病気の苦しみ、仕事の苦しみ、
予期せぬ突然の出来事による訣別の苦しみ.

交通事故や急性心筋梗塞、脳卒中などの
突然の事態で、大切なひとが
突然逝ってしまった場合.

残された家族には、どうしてという
理不尽な感情が残ります.

キュープラー・ロスが
「死ぬ瞬間」で死に至る人間の
心理的プロセスを分析しています.

否認、怒り、取引、抑うつ、受容の
5段階のプロセスです.

ガンを診断、告知され死を余儀なくされた
人たちの心理だけでなく
さまざまな苦しみに直面した場合の
心理も同じように考えていけます.

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「人間は2度死ぬ」
という言葉があります.

一度目は本人が亡くなった時.

二度目は、その人を知っている
全ての人がなくなった時といいます.

つまり、誰かが知っていてくれる限り
誰かがその人のことを忘れないで
いてくれる限り、亡くなった人は
知っていてくれる人の心の中で
ずっと生きているという考えです.

私の恩師である故 古高先生も
突然に旅立ってしまいました.
残された私は、古高先生の2度目の死を
迎えないように、一生懸命に忘れないように
してきました.
そのために、このブログで
古高先生の思い出を記事にしたりしているのです.

二人で一緒に仕事をしたカテーテル治療の実際を
ビデオで編集してDVDにして
家族の方にも手元に持ってもらいました.

古高先生の仕事をポッドキャストにして
配信もしてみました.

忘れないために
そしていろいろな思いや思い出を
書き出したり、表現したり、ビデオにしたり
さまざまに出力することで
キュープラー・ロスのいうところの
受容に繋がっていくのではないかと感じています.

がんの診断を受けた人が病気を受容するために
自分の考えや感情を書き出すことが心の癒しに
つながっていくというニュースがあります.

--------------------NIKKEI NET 2007.02.22
書き出すことが癌(がん)患者を癒す
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm

 癌(がん)の診断を受けた人の多くは、
 サポート団体、心理療法、抗うつ薬などに頼って
 疾患のもたらす恐怖や困難と闘っているが、
 紙とペンを用いて心の奥深く存在する思考や感情を
 書き出すことが、精神と身体の両面に多大な向上を
 もたらすという。
 この方法は「筆記表出」または「日記療法」と呼ばれ、
 徐々に広まりつつある治療法である。
 米ダナ・ファーバーDana Farber癌研究所(ボストン)の
 Susan Bauer-Wu氏によると、初めはこの治療に
 乗り気でなかった人も、やってみて
 その効果に驚くことが多いという。
 日記療法では、患者の望むことや恐れていることを
 思いつくまま何でも自由に書き出すように促す。
 主に悩みやストレスを中心に、句読点や単語などを
 気にせずに書き、すでに書いたことにも
 自由に書き足すよう勧める。
 その結果、一種のカタルシス(浄化)が生じ、
 内面に抑え込まれていた問題が表出して
 気持ちを整理することができるという。

 米エモリー大学(アトランタ)のRobin Fivush氏は、
 この治療では単に感情を表出するだけではなく、
 それを反すうするのだと説明している。
 この治療で最も効果のあった人では、
 「気付いた」「理解した」「今わかった」というような
 「認知過程」の言葉が多く使用されているという。
 このような自己洞察が、癌その他の疾患の対処に
 有用であることが、数々の研究により示されている。

 Bauer-Wu氏は、乳癌や他の癌の患者について
 日記療法の効果を追跡する3研究を実施した。
 従来のプログラムでは1日30分の筆記作業を4日行うが、
 癌患者ではもっと多くの時間が必要だとして、
 1カ月後、さらにその1カ月後に30分4日間の
 筆記作業を繰り返した。
 筆記には紙とペンまたはコンピューターを利用。
 意外にもコンピューターに熟達した若者でも
 約半数は手書きを選んだ。3研究に共通する結果の1つとして、
 患者の医療利用率が減少し、身体症状も軽減し
 対処も上手くできるようになった。

 この治療は、思春期前の小児にはあまり効果がなく、
 孤独好きで引っ込み思案な患者に最も効果的で、
 話し好きでない人にはサポート団体よりも
 適しているという。
 Fivush氏によると、この治療は
 特に読み手を想定しておらず、
 重要なのは書くという行為そのもので
 費用がかからないことも利点だという。
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私がこの東可児第13同盟のブログを始めたのも
実は、この記事で紹介されている趣旨でいえば
「ブログ療法」とでもいうべきもの
だと思います.

ブログに記事として様々な思いや感情や
思いつくことや思い出を書き残しすことで
記事にあるように、私自身が「受容」に
至ったのだと感じています.

私自身にも生きている限り、寿命があり
いずれは灰となるのですが
ブログでネットの上に書き記すことで
いつかどこかで誰かが
この記事をみてくれて
大切な人の思い出がいつまでも
人々の心に残ってくれるのではないかと思います.

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医学はアートであるといわれます.
これは医聖ヒポクラテスの言葉です.

つまり診断から治療に及ぶ行為の多くは
サイエンスかもしれない.
しかし病名告知や患者さんへの対応、
治療へ個別対応のほとんどは、
教養や完成に支えられた経験に基づくアートである.
ということです.
アートとは容易に到達できる領域ではなくて
もっと深遠で神聖で深遠なものです.

私にとって、恩師のアートを受け継ぐことが
できたかどうか.
技術だけでなく、哲学や思想を
受け継ぐことがかなったかどうか.

そしてさらに私が恩師から受け継いだアート
哲学、思想をさらに次の世代に
伝えていくことができるかどうか.

こうして連綿と思いをつないでいくことで
日常のあらゆることに意味を見いだして
過ごしていけるような気がしています.

最近読んだ本で
改めて職場や家庭での人間関係に
思いをはせました.

職場はなぜ壊れるのか
ー産業医が見た人間関係の病理

ちくま新書  荒井千穂

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by yangt3 | 2007-03-08 00:03 | 古高先生の想い出