もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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究極の選択

金曜日に学会から帰ってきた途端に
土曜日に緊急症例が来院されました.

いわゆる急性冠症候群であり
即時のステント植え込み治療を行いました.

治療する循環器科医にとっても患者にとっても
急性心筋梗塞、急性冠症候群は
非常に大きな問題です.

予防の面では、いわゆるメタボリック症候群と呼ばれる
糖尿病、脂質異常、高血圧、喫煙など
生活習慣の改善が、ありふれたことだけど
一番大切なことです.

この5月、6月は、予定のステント治療よりも
急性心筋梗塞などの緊急症例のほうが
数が多く、現場においても
緊急対応の体制等で、日夜奮闘努力している現状です.

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私が医学生だったころには
急性心筋梗塞の治療は、現在のような積極的な
治療はまだ行われていませんでした.

ウロキナーゼ(UK)などの血栓溶解療法が
やっと行われ始めた頃でした.
急性心筋梗塞の急性期に、冠動脈造影を行うということさえ
危険だということで、まだ一般的ではなかったのです.

昔は、急性心筋梗塞が来院すると、こうした血栓溶解療法を行い
ひたすら、安静、酸素投与、二トロール点滴、ヘパリン点滴などの
内科的治療を行い、病状の安定するのを待っていました.

病状が安定したところで、慢性期に
やっと冠動脈造影を行い、その結果で治療を考えていました.

かくいう私も研修医時代に、急性心筋梗塞の受け持ちとなりました.
今から思えば、左前下行枝領域の急性心筋梗塞であったと
思います.

急性期は、ショックに至る事も無く
保存的な内科治療でなんとか乗り切り
落ち着いたところで、冠動脈造影の可能な施設に搬送しました.

カテーテル治療もバルーンによる
経皮的冠動脈形成術がようやく行われていた頃です.

冠動脈造影の結果、冠動脈に狭窄が見つかり
バルーン拡張を施行してもらい、その後元気に帰ってこられました.

いまから思えば、本当に今昔の感があります.

現在では急性心筋梗塞、急性冠症候群の症例においては
すぐに冠動脈造影を行い
狭窄や閉塞があれば、薬剤溶出ステントを植えこみ治療します.

急性期の薬剤溶出ステントについては、いまだ議論があり
施設によっては、急性心筋梗塞においては
従来の薬剤を使用していないステントを植え込みするところも
あります.

また多枝病変、びまん性病変を伴う急性心筋梗塞症例において
どのような戦略で治療を行っていくかは
まだまだ議論のあるところです.

当院では、一環して急性心筋梗塞に対しても
可能な限り、薬剤溶出ステントを用いた治療を行っています.

びまん性病変、多枝病変に対しても
一期的に治療を行うように心がけています.

以前から、薬剤を使用しない通常ステントで治療した場合には、
慢性期の再狭窄に悩まされてきました.

薬剤溶出ステントを用いれば、ちょっと大変ではありますが
急性期にできるだけ治療を行う事によって
慢性期の予後が多いに改善されるばかりか
急性期の合併症も、かなり軽減されているのではと
考えています.

ただしあくまで原則なので、治療については
個々の状況できめ細やかな対応を行っています.

これまでは、Cypher(シロリムス)と呼ばれる
薬剤溶出ステントだけでしたが
最近になってTAXUS(パクリタクセル)と呼ばれる
2つ目の薬剤溶出ステントも利用可能になりました.

治療を受けられる患者さんにとっては、
よりきめ細やかな治療の選択があるということで
多いに歓迎すべきことであると思います.

急性期に治療を行う私たちとしては、
緊急のストレスの中で
どのステントを使用するか、いつも究極の選択を
迫られているわけです.

先日に治療を行った、急性心筋梗塞の患者さんにおいても
多枝病変を伴っており、治療はかなり大変でしたが
一期的に薬剤溶出ステントを用いて
ほぼ完全な冠動脈血腔再建を行う事ができ
その後の経過も順調です.

よりよい方法、より安全な方法があれば
躊躇なく、これまでの古い方法は捨て去る勇気が必要なようです.

私たち現場スタッフの
奮闘努力を理解していただければ幸いです.
現場の治療を支える様々な方々にも
この場をかりて感謝の気持ちをお伝えしたいです.

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by yangt3 | 2007-06-24 20:22 | カテーテルの話題