もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ガイドワイヤー

心臓カテーテル治療の基本は
閉塞したり狭窄した冠動脈の血管の病変部分を
バルーンなどで拡張し、最終的にはステントを植え込みして
冠動脈の良好な血流を保つ事です.

バルーンカテーテルや、最新の薬剤溶出ステントを
冠動脈病変に進めるにあたっては
冠動脈用のガイドワイヤーをまず病変に進める必要があります.

通常の狭心症や急性心筋梗塞などの症例においては
ガイドワイヤーが通らないということはめったにありません.

冠動脈の屈曲が強い病変であるとか
慢性完全閉塞病変のように、非常に石灰化の強い固い病変などでは
ガイドワイヤーの通過に難渋することがあります.

すべての心臓カテーテルの治療において
このガイドワイヤーの通過こそが全てのポイントになります.
ガイドワイヤーが通過しなければ、その後の治療も手技も
行う事ができません.

ガイドワイヤー_a0055913_8552763.gif





ガイドワイヤーとは、冠動脈の中を通す細いワイヤーです。
太さは0.014 インチという非常に細いものを使用します.

ガイドワイヤー_a0055913_85692.gif


このガイドワイヤー操作が
カテーテル治療の要であります.

世にいう名人と呼ばれる人たちは
一様にこのガイドワイヤー操作も素晴らしい技術を
持っています.

ちょうど登山でいえば命綱のようなものであり
建築でいえば足場のようなものであり
ガイドワイヤーがなければ
その後の治療のバルーンやステントさえも
病変に持ち込むことができず
治療が失敗に終わってしまいます.

急性心筋梗塞などの時、患者がショック状態となり
もしくは、強い胸痛を訴えて居る時に
いかに速やかに閉塞した冠動脈の病変に
この細いガイドワイヤーを通していくか.

もしくは石灰化して固い病変部のすき間を縫って
ガイドワイヤーを通していく技術.

様々なデバイスが出現しても
昔から今も、ガイドワイヤー技術が重要なことは
変わりありません.

恩師 古高先生もガイドワイヤーの名手でした.
私も最初の数年は、ガイドワイヤーを
触らせてもらう事はできませんでした.

指先の繊細な感覚のみで
病変をすーっと進めていく様は、本当に
クラシックの名曲を聴くような
そんな流れるような感じです.

ガイドワイヤー_a0055913_8563382.gif


ガイドワイヤー操作が、治療の要である以上
ガイドワイヤー操作を任されるということは
患者さんの治療の主要な部分を任されるという
ことであります.

古高先生の指導を受けて数年たってやっと
私もガイドワイヤーを使用する許可をもらいました.
それからずっと現在にいたるまで
ガイドワイヤーをいかに使うか
いつも頭を悩ませながら
日々、技術の更新を心がけています.

あの頃、主で使ったガイドワイヤーは
BMWという、どこか外国の車のような名前のものでした.
ちょうど車と同様に、きちんと使いこなすには
しっかりとした技術が必要なワイヤーでした.

現在では、親水性コーティングを施した
ガイドワイヤーが使用できるようになり
いわゆるプラスティックコートガイドワイヤーと呼ばれるものですが
Fielder、Pilot 50 などを主に使用しています.

通常の狭心症も、急性心筋梗塞の治療においても
ほぼこの2本のガイドワイヤーで済んでしまいます.
もちろんガイドワイヤー技術の要となるものは
古高先生から教わったものです.

ガイドワイヤーを取り出して
冠動脈病変を進めていく時、いつも頭には
古高先生の、あの華麗な技を思い出しています.

教わった技術をしっかりと受け止め
もっと上を目指して昇華させることが
私の目標です.

ガイドワイヤー_a0055913_8573216.gif

by yangt3 | 2007-07-23 08:57 | カテーテルの話題