もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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飲み忘れを防ぐ

最近、幼稚園や小学校から
ノーテレビデーというチラシが時々
配られてきます.

Wiiやら、ニンテンドーDSやら、気がつけば
家の中は、ゲームだらけで、子供たちも
暇さえあれば、ゲーム三昧.

たまにゲームをしていないと思うと、
テレビを見ていたり、ポケモンのビデオを
見ていたりします.

小さな子供たちに、勉強しなさい!とか
ゲームやりすぎはだめ!とか、何度も注意しても
何で??ってあまり効果がありません.

どこのお家でも、頭を悩ませていることと思います.

実は、病院でも似たような話がありまして
症状のあまりない患者さんの方々に
どうやってお薬を飲み忘れのないようにするか
いつも頭を悩ませています.

いわゆるお薬のコンプライアンスの話です.

飲み忘れを防ぐ_a0055913_18353726.jpg






再び、勉強の話に戻ると、私の場合
学生時代は、それほど机にかじりついて
勉強していた記憶はありません.

親からも、それほど勉強しなさい!と
言われた記憶もあまりありませんが
さすがに受験勉強の時期になると
人に言われなくても、ちゃんと人並みに勉強していました.

医学生時代も同様でありまして
医師国家試験を前にすると、ちゃんと勉強していました.

卒業して、現場に出て
お決まりの試験でなく
自分で何を勉強するかを考えなければならないこと、
自分で仕事をみつけなければならないこと、
その辺のことは、また次の記事とします.

話を元に戻しますと
いかに勉強に動機付けを行うかということです.

私が学生時代、勉強を頑張ったのは
1)担当の先生がすごく厳しく、いつも試験ばっかりとか
いつもがみがみしかっている場合

2)怒ったり叱る事はあまりなく
ちゃんと理由を説明してくれて、自分が納得できた場合

このふたつでした.
もちろん私は、がみがみ言われるのは大嫌いですし
厳しい、よく叱る先生は苦手な口でした.

一時、真剣に国語教師をめざそうと思ったくらい
中学の時の国語の先生は、私にとって理想的で
この時期から、本当に沢山の本を読む習慣ができました.

私の子供たちにも、よき先生との出会いを祈るだけです.

さて病気の治療という話になると
高血圧、糖尿病、高脂血症などなど
必要な薬を飲んでいただけなければ、飲み忘れなんてことがあれば
病気の悪化、健康状態の悪化に繋がります.

研修医の頃には、いろいろな患者さんを受け持っていましたが
例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の吐血
食道静脈瘤の出血などで緊急入院した患者さんも
何人か受け持ちとなりました.

上級医師の華麗な内視鏡治療によって
外科手術を受ける事もなく、皆、無事に退院されていきました.
ところが退院しばらくは、病院に通って
内福治療も続けるものの
症状がなくなってくると、いつしか病院のほうにも
来院されなくなります.

そしてしばらく顔をみないと思うと
また再吐血で入院ということがよくありました.

最近では、消化性潰瘍のほうは、ピロリ菌の除菌を
消化器内科のほうでしっかりと施行されるようになり
ピロリ菌の除菌さえ行えば、潰瘍の再発も少なくなり
胃ガンの予防もできることとなり
私が研修医の頃とは、大分変わってきました.

これも医療の進歩のおかげです.

さて私の専門である循環器の外来では
皆さん、かなり真面目であり、内服のドロップアウトは
あまりありません.

急性心筋梗塞、狭心症などで入院しカテーテル治療を
受けられた患者さんは、最初の発作の時に
本当につらく、苦しく、死の恐怖に似た胸痛を
体験しているため、治療への意欲や動機付けがしっかりしていて
主治医としても、苦労がありません.

問題は、それよりも沢山の数である
いまだ症状のない高血圧、糖尿病、高脂血症の
いわゆる予備軍の人たちです.

怖さも半分あるのかもしれませんが
検診で精密検査、治療を要すると言われても
なかなか病院にいけない人も多いようです.

心臓を専門に診ている医者としては
ひどい狭心症や急性心筋梗塞となって慌てるよりも
全く症状がない状態で予防したほうが
絶対お得だと思うのですが
なかなか治療への動機付けは難しいです.

前にもお話ししましたが、私が周一回お手伝いしている
先輩医師のクリニックでは、こうした無症状の高血圧の管理を
厳密に行う事によって
脳卒中の発症を有意に減少させています.

私の循環器の外来では、
とにかく治療を継続してもらうために
いつも智慧をしぼって、治療の継続の重要性について
詳しく説明するようにしています.

とにかくご本人がやる気になれば
それで治療は半分以上終わったも同然ですから.

かのアメリカでも、内服の飲み忘れは
重要な問題になっているようです.

----------------------NIKKEI NET
飲み忘れのない高血圧ワクチンに有望な結果
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20071115hj001hj

 高血圧の管理が注射1本でできるようになる可能性があるという.
 米フロリダ州オーランドで開催された米国心臓協会(AHA)年次集会で、
 毎日の服薬を不要にする高血圧ワクチンについて、
 初期研究で有望な結果が得られたことが報告された.
 研究を行ったのは、スイス、ヴォーVaud州大学病院教授の
 Juerg Nussberger博士で、このワクチンを製造する
 Cytos Biotechnology社の関係者でもある.
 
 AHA会長のDaniel Jones博士によると、
 米国では3人に1人が高血圧であるとされるが、
 患者のうち血圧を管理できている人は37%にとどまっているという.
 問題の一つは、複雑な投薬計画に従うことの難しさにあると思われる.
 同集会で報告された別の研究では、高血圧治療を簡素化すると、
 国のガイドライン通りに投薬するよりも血圧を管理できる患者が
 多くなることが示された.

 CYT006-AngQbと呼ばれるこの新しいワクチンは、
 血管を収縮させ血圧を上昇させる物質であるアンジオテンシンIIを
 阻害することにより作用する。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
 およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などの既存の薬剤も
 同じ物質を標的としている.

 今回の試験では、軽症ないし中等症の高血圧患者72人を対象に、
 試験開始から0、4、12週目にワクチン100μgまたは300μg、
 プラセボ(偽薬)のいずれかを注射した.
 被験者は男性65人、女性7人で、平均年齢は51.5歳.
 ワクチン投与群では、いずれの用量でも最初の注射後に
 抗アンジオテンシンII抗体の産生がみられ、
 高用量群では有意に反応が高く、持続期間も長かった.
 14週間後、高用量群では収縮期血圧が5.6mmHg、
 拡張期血圧が2.8mmHg降下した.

 さらに、午前5時から午前8時に生じる血圧の急激な上昇が軽減する
 という予想外の効果も認められ、
 収縮期血圧が25mmHg、拡張期血圧が13mmHg降下した.
 早朝は心臓発作や脳卒中のリスクが最も高い時間帯だという.
 また、ACE阻害薬やARBではレニンの大幅な上昇がみられるが、
 このワクチンによるレニンの増大は少なかった.
 レニンは炎症を引き起こす酵素で、腎不全の原因にもなると考えられている.

 今後さらに試験を重ねる必要があり、特に、
 必要な場合には血圧を上昇させる身体の「回避機構」が働くかどうかを
 確かめなくてはならないという.また、安全で有効なワクチンであっても
 患者がまず同意せねばならなく、
 服薬遵守(コンプライアンス)は100%にはならないとJones氏は指摘している.
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高血圧などの成人病がワクチン投与で
改善する治療が一般化すれば
治療へのコンプライアンスは、本当に改善しそうです.

病院に頻回に通院することの煩わしさからも
開放されます.
とはいうものの、まだ実用化には、時間がかかりそうですね.

循環器領域での内服の話で言えば、
これまでステント治療後には
パナルジンというお薬を一日2回内服しなければなりませんでしたが
プラビックスというお薬が使用できるようになり
一日一回の内服でよくなりました.

これも内服の飲み忘れの予防に役に立ちますね.

ステント治療も、薬剤溶出ステントを中心とした治療となり
以前に比べれば、再発が少なくなりました.

以前のように頻回にカテーテル検査を行わずに
済むようになりました.

またカテーテル検査もこれからは
高性能CTを中心とした検査に徐々に置き換わっていくと思います.

内服の進歩だけでなく、こうした診断や治療のさまざまな進歩が
合わさって
患者さんの治療へのコンプライアンス、治療継続への意欲を
高める事に繋がっていると思います.

そうだ、病院に行こう!です.

飲み忘れを防ぐ_a0055913_18362466.gif

by yangt3 | 2007-11-16 18:40 | ニュース