もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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アナムネ、問診、予診など

最近、日頃の勉強会の成果と個人の努力もあってか
緊急症例の心電図について
看護師さんたちも、かなり読めるようになりました.

日々カテ室では、緊急症例の心電図を前にして
責任病変を当てる競争が行われています.

曰く;II、III、aVfでSTが上昇しているから右冠動脈だ、とか
曰く;前胸部誘導のV2 〜 V6 まで ST 上昇があるから
   左前下行枝だとか.

急性心筋梗塞などの緊急の場合は
すぐにカテ室で答えがわかってしまうのでごまかしが
ききません.
おのずと心電図読解力が身に付く事になります.

今、病棟スタッフとともに取り組んでいるのは、
心電図やレントゲンなどの
基本的な検査の理解だけでなく
診断学の基本である患者さんの経過から
病状を把握しようということです.

つまりアナムネ、問診、予診と呼ばれるもので
患者さんの話をよーく聞く事から、全てを始めようという
当たり前といえば当たり前の取り組みです.

アナムネ、問診、予診など_a0055913_10155063.gif






私が医学生のころ、専門の6年生となると
いわゆるポリクリ(臨床実習)と称して
偉い先生方の外来の見学についたり
病棟の患者さんを一緒に診させてもらっていました.

とはいえ、医師免許もない、単なる医学生の身分では
医療行為もできないわけで
そこは、患者さんの話を聞いたり
先輩に教えられながら検査結果をみたり、レントゲンをみたりと
白衣をきても
できることは簡単なことだけです.

臨床実習では、患者さんの話を聞いて
いわゆる問診を取って
どんな病気かを判断するという
診断学が主となります.

誰でもそうだと思いますが
若い頃は、とりわけ未熟な医学生の頃は
少しでも早く実技を覚えたいとか
華麗な手術の技は、カテの技に目を奪われがちです.
問診や予診などの、いわば地味な診断学は
試験のために、勉強していましたが
いまひとつ、その重要性を理解していませんでした.

時がすぎて
日々、外来や病棟、救急の診療に明け暮れる毎日となると
改めて、患者さんの話を良く聞くということが
大切なことだと痛感しています.

前にも紹介したと思いますが
こんな経験があります.
外科研修の頃、胆石症の予定手術の患者さんの
受け持ちとなりました.

術前カンファレンスのために、カルテを1ページから
丹念に目を通していました.

すると何年か前に、大腸ポリープをファイバーで切除していて
(いわゆるポリペクトミー)
ポリープの一部に Group V、つまりガンが発生しているという
記録を見つけたのです.

カルテを順にみていくと、その後の経過観察の検査が
行われていないようでした.

研修医として、術前検査は完璧にと教え込まれていたので
さっそく大腸のレントゲン検査(注腸)を行いました.

幸いなことに、術前の大腸検査で、大腸ガンが見つかりました.

手術予定は大幅に変更となり
胆石症ではなく、その後大腸ガンの手術が無事に行われ
治癒切除とあいなりました.

もしカルテを丹念に見ていなかったら
大腸ガンを見落として、胆石の手術のあとに
もっとガンが進行して大変なことになったかもしれません.

私が今までの医師生活の中での
数少ない善行のうちの最初のヒットだったと思います.

この症例を経験してからは
カルテの記録を丹念に読む事の大切さを痛感しました.
診断学の奥深さを、ちょっと知る事のできた瞬間でもあります.


現在、当院の循環器外来では
診察の前に、看護師さんたちによって予診、問診が
行われています.

一つは、忙しい外来の中で、十分に患者さんが
話をできる時間をつくるのが目的です.

さらにはトリアージという目的もあります.
胸痛や喘息発作や、辛い症状を抱えて
何時間も待合室で、じっと待っている事がないように
緊急の対応や検査、処置が必要な患者さんを
この看護師さんの問診の段階で対応できるようにという
思いもあります.

例えば心房細動、心不全などで通院されている
高齢者のおばあちゃんがいたとしましょう.

看護師さんが問診で対応して、
血圧、脈拍、体重そして経過を見るだけで
心不全の増悪も見つける事が可能になります.

元気な時よりも体重が増えている.
普段より脈拍が多い.
下肢の浮腫も出現している、などなど.

看護師さんたちも、日頃の看護診断学の勉強の成果を活かす事で
循環器外来でのトリアージに役に立ち
ひいては、患者さんへの外来ケアがより
充実したものになると思います.

当院では、また看護学生さんたちも
多く看護補助としてともに働いています.

彼女、彼たちにも
同じように問診、予診のお手伝いをしてもらっています.

看護学生として、たとえ今は、実技ができなくても、
きちんと患者さんの話を聞く事で
病気への早い対応が可能になり
立派に患者さんの役に立つ仕事ができるということを
日々、教えています.

同じ事は、ベテランの看護師さんたちもいえると思います.

医師のようにカテや手術ができないとしても
患者さんの一番に身近にいることで
医師が気付かないような、ささいな変化や、小さなことを
いち早くとらえる事ができるからです.

私も含めて
今一度、患者さんの話をよく聞くという事の
重要性を再認識して、また仕事に頑張りたいと思います.

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by yangt3 | 2007-11-28 10:16 | がんばれ新人さん