もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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医学テキスト

先日、来日のおりに、
私たちの病院に医療講演をしていただいた
米国ファーゴ、VAメディカルセンター感染症部門
主任部長兼助教授のドクター羅先生のことを
皆さん覚えておいででしょうか.

「皆さん、ありがとうございました」
http://tomochans.exblog.jp/6353111/

本当にこの羅先生とは、長い付き合いであり、
私は、研修医の頃からお世話になっています.
羅先生には、アメリカに渡るという大目標があったため
寸暇を惜しんでは、本当によく勉強しておられました.

日本の医学生であれば、せいぜい「朝倉内科学」くらいを
学生時代に通読するのが精一杯なのですが
羅先生は、英語がぺらぺらですので(当たり前か)
世界的に有名な教科書、例えば内科ならハリソン内科学書、
外科ならシュワルツゲ外科学書を
原著で(英文)で、完璧に読破していました.

のんきな私は、アメリカに渡るには
これくらいの努力が必要なんだなあと、感心することしきりでした.

医学テキスト_a0055913_02647.gif






羅先生の場合は、有名な世界的な教科書だけでなく、
細かな文献も非常に良く調べては読破していました.

まさしく本の虫にふさわしい勤勉ぶりでした.

そういえば、昔、医学生の頃
教授、助教授、大学教官となった先生たちは
やっぱり学生時代に分厚い原書を読破していると豪語していたことを
思い出しました.

私の個人的な感想では、
日本語で書かれた医学書は、どちらかといえばハウツー物的な
内容のものが多く、悪く言えば辞書的な本が多く
呼んでいても、楽しい本は少なかったと思います.

よくいわれるのは、海外の有名な教科書や名著というものは
端なる知識の集積だけではなく
一冊の本を貫く確固とした哲学があるということです.

私も先人に倣って学生時代にセシル内科学書、ハリソン内科学書
(昔は、アジア版の廉価版があって、英語の本も安かった)を
鼻息荒く購入し、一ページ目から完全読破を
試みたことがあります.

残念なことに、書の底に流れる哲学を実感するほどの
英語力も体力も忍耐力も私にはなく
たいてい最初でつまずくこととなったのでした.

結局、現実的な対応で、メインは、日本語の教科書をしっかりと勉強し
良く調べたたい所を、辞書と首っ引きで
原書にあたるという感じでした.

さて研修医として現場にでてみると、学生時代にお世話になっていた
日本語の「朝倉内科学」では、現場の仕事に歯が立たず
結局、先輩方の仕事を徒弟制度のようにひたすら覚えていく
ことになります.

なんといっても一人前の医師になるまでには、
臨床的な技能がなければどうしようもないですから.

心不全や呼吸不全の人を前にして
気管挿管や人工呼吸ができなければ、現場では役に立たないですから.

とはいうものの、難しい症例を前にすると
さまざまな文献や教科書に当たる必要が生じるわけで
その度に発作的に、分厚い原著も購入することになります.

まあ医学生の頃のように一ページから完全読破を目指すなんてことは
もうしていませんが(笑)

医者となって一人前となると、自分の専門分野については
一応の自信がついてきます.
専門分野については、文献や学会などでも
最新の知識や技術を吸収するべく、常に努力しているためです.

けれども自分の専門分野ではない他の領域については
医学生の頃に学んだ知識に、現場にでて
その道のプロに教えてもらった知識が全てということになります.

医者出ある以上、専門ばかりというわけにはいかず
一般的な病気(いわゆるCommon Disease)にも
対応する必要が出てきます.

医学生の頃のように医師国家試験のため、というような目的ではなく
自分の知識の総合的なリニューアルのためとして
ハリソンなどの世界的に有名な教科書を
再度、開いてみると
現場の経験が増えた分、有名な教科書に書いてある文字の裏の部分が
だんだん分かってくるようになりました.

それでも仕事で忙しい自分にとっては、英語の教科書を読むというのは
やっぱり眠くなってしまう事ですが(笑)

循環器医師にとってバイブルと呼ばれる 循環器の教科書が何冊かあります.
ハースト心臓病学(Hurst the Heart)、
ブラウンワルト心臓病学(Braunwald's Heart Disease)
です.

どちらも既に持っているのですが
今回、ブラウンワルト心臓病学の原著の改訂版が出版されたのを機に
この分厚い教科書を、再度、買い替える事にしました.

Braunwald's Heart Disease 8th editionです.

さすがにこれだけ世界的に有名なバイブルと呼ばれる教科書となると
価格も高価であって
iPod touch 8GBモデルが購入できてしまうくらいです(笑)

実は、今回購入したのは、
e-Edithionと呼ばれるもので、活字のテキストだけでなく
オンライン教科書となっているのです.

出版社のウェブサイトで登録を行うと
教科書の全内容が、図表も画像も、テキストも含めて全部
ウェブ上で見る事ができます.

ウェブ情報は、コピーして、自分のパソコンに保存できるほか
Keynoteなどに画像を貼り付けてスライドとして使用することもできます.

一番便利に思った事は、
検索機能です.

ちょっと教科書で調べたい事が会った時に、実際の本の索引を
いちいち調べる必要がなく
調べたいキーワードで、内容を検索することができます.

実際に調べた実例を示します.
右冠動脈の起始部異常について検索しました.

医学テキスト_a0055913_024766.gif


最近はやりの64列MDCTによる冠動脈CT画像も添付されており
実にアップデートな内容となっています.

もちろん定期的に教科書の内容についてのアップデートも
ウェブ上で配信されます.

病院の中でMacを持ち歩けば
分厚いテキストを持ち歩く必要がなく
(今回の改訂場は、カラーもきれいとなり
 内容は2288ページもあり、非常に重量も重くなりました)
ネットに繋がる環境があれば、
ちょちょいと調べる事もできれば、専門外のフィールドの勉強もできるという
代物です.

こういうe-Editionのテキストであれば
今までの古典的な教科書より、もっと活用することができそうです.

アメリカでは、かのワシントンマニュアルも電子版、PDA版がでているそうで
アメリカの研修医の先生は、ワシントンマニュアルの全内容を入れた
PDAを持ち歩いて臨床研修を行っているのです.

残念ながらMac対応、iPod対応の製品はないようです.

来年出ると予想されている超スリムMacに
e-Editionの教科書を入れて
そして早く出て欲しいiPhoneには、ぜひPDA機能もアップしてもらい
ワシントンマニュアルなどのPDA版に対応してもらいたいものです.

辛い仕事も、MacとiPod、iPhoneがあれば
元気に乗り切れると確信しています(笑)

追記;今の職場では、Macの話を出来る人が少なく
 非常に寂しい思いをしています.
 1月5日の日に、久しぶりに昔の仲間とMac談義ができて
 ちょっと気が晴れました.

医学テキスト_a0055913_04689.gif

by yangt3 | 2008-01-07 00:04 | コーヒーブレイク(雑談)