もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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気掛かりな事

ちょっと古い映画なのですが
「黄泉がえり」という映画があります.

気掛かりな事_a0055913_20102646.jpg


この映画は梶尾真治 氏の小説がもとになっています.

映画のタイトルは、死んだ人が黄泉から帰って来るという意味であり、
「蘇り」という言葉の語源だそうです.
ーある日、九州熊本県阿蘇で、死者が数千人規模で生き返る、
 黄泉がえり現象が起きた。最愛の家族や恋人が、突然、目の前に現れ、
 驚き、喜ぶ人々。

草彅 剛、竹内 結子の出演で心に残る映画でした.

4年前に大切な人を突然に失ってから
映画も小説も、こうしたテイストのものを
好んで観たり読んだりしています.

先週から重症管理していた患者さんもついに
抜管にこぎつけました.

重症の心原性ショックの状態で当院に搬送されて
この方にとっては、ずっと眠っていたようなものだったのでしょうか.




循環器の重症患者さんの診療に携わっていると
時々、臨死体験のようなものを
患者さんから見聞きすることがあります.

例えば急性心筋梗塞を発症して心室細動や重症不整脈で
もはや心臓が止まりそうな時には
もちろん患者さんの意識はすでになく
あとから振り返ればそれが臨死体験ということに
なるのでしょう.

ドーハの悲劇の年
急性心筋梗塞の患者さんが搬送されました.
家族の車に乗って当院に向かっていたのですが
あと数分で病院というところで
意識をなくしてけいれんを起こし始めたそうです.

病院の救急外来に到着した時には
心室細動の状態.
まだまだAEDが使用されるずっと以前のお話です.

すぐに救急外来で心肺蘇生が行われ
幸いにその方は一命をとりとめました.

急性心筋梗塞を発症した冠動脈病変も
カテーテル治療できっちりと治療し
やがて退院が近づいた時に
聞いてみた事があります.

心臓が止まった時のことを覚えていますか?

直前まで苦しかった事は覚えていたそうですが
残念ながら心臓が止まっている間のことは
ぼんやりとしていて記憶がなかったそうです.

最近ではAEDの普及と相まって
重症の患者さんも救命する例が増えてきています.

ここ最近の当院循環器科でも
心原性ショックとなり気管挿管、人工呼吸、
血液透析、IABPなどなど
さまざまな集中治療を必要としながら
なんとか救命、蘇生に成功することも増えてきています.

循環器救急、集中治療に携わって
こうして何人もの救命、蘇生例に立ち会っていますが
いわゆる「臨死体験」については
明確に言葉にできる方は少ないようです.

とにかく危機に瀕した命を救う事に
全力を挙げる仕事なのですが
治療が及ばず、救命出来なかった時にも
大切な方が、最後に辛い思いや苦しみを感じていないかどうか.
それだけが気掛かりです.

4年前に急逝された私の恩師の
最後の時が、苦しみに満ちたものではなかったことを
願わずにはいられません.

これから医学や医療の進歩で
ますます重症例でも救命されることが増えてくると思いますが
死に直面した方々が少しでも
安らかであるようにと思います.

とりあえずここしばらくの病院合宿の結果は
良い方向に進みつつあり
ちょっとだけほっとしています.
by yangt3 | 2008-03-16 20:13